1998年のスマートウォッチ

 先日紹介したアメリカで勃興したスマートウォッチに引き続き、創成期の日本のスマートウォッチも使っていたことがある。今回はそれについても紹介したいと思う。

 昨今の日本企業のスマートウォッチでは、SONYがリリースしているその名の通りSmartWatchが代表的だろうか。当該シリーズの3世代目に当たる現行SWR50は2014年発売で、初代のMN2以来順当に進化を重ねている。なお、MN2の発売が僅か3年ほど前の2012年であり、SONYにおいては製品化されてからの歴史はまだ浅い。

 

 ここで、今から17年前の1998年に遡ろう。

 突如、Ruputerという腕時計型携帯情報端末がリリースされた。SIIことセイコーインスツルメンツ*1の製品である。社名からも解るように時計のSEIKOのグループ企業である。なお、プリンタや複合機などで有名なEPSONも正式名称はセイコーエプソンであり、同グループ企業である。余談であるがEPSONと言えば、過去にはNEC PC98シリーズの互換PCメーカとして有名であった。グループ内で腕時計もPCも設計・製造しているという恵まれた土壌があってこそ、SII事業化・製品化できたのかもしれない。

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 少し大振りな腕時計サイズに、大画面液晶を搭載。通常の腕時計にもあるようなボタンだけではなく、上下左右のカーソル移動に対応するジョイスティック状の入力装置も搭載。通信はドッキングステーションを介してシリアル(RS-232C)接続、または本体に搭載された赤外線ポートが利用可能。1.8MHz駆動の16bit CPUを搭載し、任意アプリの追加も可能*2

 開発メーカーが異なるものの、Ruputerの僅か4年前にリリースされたTimex DATA LINK watch model 50からドラスティックなまでに進化し過ぎている。ちなみにこの4年間、1994~1998年の出来事を抜粋してみると、世の中的にもなかなか面白い。

 現代のスマートウォッチと比較すれば、モノクロ液晶であること、タッチパネル入力に対応しないこと、オーディオ機能がないこと、各種センサ類を積んでいないこと、搭載メモリが少ないこと、CPUが貧弱なことなど、数多くの見劣る点がある。

 とはいえ、Ruputerでは事前に転送しておいた各種テキストファイルの閲覧はもちろん、動画再生だってできた。時刻表データを転送しておけば次の電車が何分後に来るか教えてくれるアプリだって動く。要は時代相応のハードウェアというだけで、現代のスマートウォッチ単体で実現できることは(各種センサ類によって実現される機能を除けば)あまり差がないかも知れない。

 そういった意味で、今後のスマートウォッチの進化を妄想してみると、スマートフォンと繋がることで実現可能になる新たな用途に新たな成長の種が隠れているのではないかと思う。

 

*1:2004年にセイコーインスツルに社名変更。

*2:所謂ストレージに該当するEEPROMの容量は512KB~4MBとモデルにより異なる。