Xiaomi YI Action Cameraのスペックを読み解く

Xiaomi YI Action Cameraについて、これまでに解ったことをメモしておく。

 

始めに

メーカーがXiaomiで、製品名がYiだと思っていたのだけれど、英文オフィシャルサイト(YI | See Everything)を見る限り、Xiaomiの文字は無い。
念のためwhoisでxiaoyi.comを調べてもXiaomiの名は出てこない。
これらから察するに、メーカー名としてはXiaoYiで、製品名としてはYI Action Cameraが正式表記になるのかもしれない。
であるが、英語版Wikipedia(Xiaomi - Wikipedia)を見ると、Xiaomiの製品としてYi Action Cameraがリストされていたり、多くのサイトで"Xiaomi Yi"といった表記がされている。
といった事から、正式なメーカー名、製品名が良く解らないのだが、本投稿では"Xiaomi Yi"的に表記する。
(追記: XiaomiとYIは別企業でした。詳細は⇒YIとXiaomiの関係 - 記憶は人なり)

オフィシャルなスペックはYI Action Camera Specificiations | YI Action Cameraに掲載されている。
が、ファームウェアアップデートにより掲載されているスペック以上の解像度で記録できたりする一方、後述の通りどうやら正しくなさそうにも思える項目も一部あるので注意が必要である。*1

また、国内で正規流通していない製品であるため、基本的には自己責任での使用となる点にも注意が必要である。*2
(追記: Amazon.co.jpYI Official Store JPで正規流通が開始されています。)
 

基本情報

オフィシャルサイトから主要コンポーネントの情報を抜粋する。

Image Processor: Ambarella A7LS high-performance processor
Image Sensor: 16MP Sony EXMOR R CMOS BSI image sensor
Lens: 155ᵒ ultra wide angle glass lens / F2.8 Aperture

コンポーネントについて掘り下げてみる。

ImageProcessor A7LSについて

詳細は米Ambarella社のオフィシャルサイト(Sports Cameras | Ambarella)参照。
要約すると、FullHD 60fpsでワイヤレスで低消費電力なアクションカムを作れます。FullHDで記録しながら、低解像度版映像をWiFiで飛ばせます。的なことが書いてある。
貼られているPDFによると、主要な特徴は以下のような感じ。

  • 32メガピクセルまでの静止画撮影
  • 1080p 60fpsで撮影しながら最大WQVGA解像度でストリーミング可能
  • モーションブラーを低減するノイズリダクションの3D MCTF*3
  • 先進的な空間ノイズリダクションフィルタを多数
  • 小型化のための広角レンズの歪み除去機能
  • 32nmプロセスで超低消費電力
  • 700MHz ARM11プロセッサで高性能
  • WiFi接続と動画ストリーミングに対応
  • 小型の11x11と標準の14x14のパッケージ

同PDFからスペックとして表記されている項目を一部抜粋すると、

  • 高速RAW撮影(16MPで30fps)
  • HDR対応
  • 電子式ブレ補正
  • ローリングシャッター補正

だそうだ。今風のアクションカムを手軽に作れそうなチップであることが解る。

ImageSensorについて

16MP Sony EXMOR R CMOS BSI image sensorということで、型番不明ながらSONYの裏面照射型Exmorの16メガピクセル版搭載。
海外サイトを漁ってみると、スペック的にIMX206ではないかと言われているようだ。
IMX206の詳細はSONYのオフィシャルサイト(http://www.sony.net/Products/SC-HP/new_pro/december_2013/imx206_e.html)参照。
要約すると小型・薄型・低消費電力が特徴。

  • 1/2.3型16メガピクセルの従来品と比較して体積比53%の小型薄型化
  • 1080p出力時で従来品比33%低消費電力

駆動モードは以下の10種類で、それぞれの解像度、フレームレート、色深度が決まっている。

全画素読出し 4608 (H) × 3456 (V) 10fps 12bit
全画素読出し 4608 (H) × 3456 (V) 12fps 10bit
Mode 1 2304 (H) × 1296 (V) 60fps 10bit
Mode 2 2304 (H) × 1728 (V) 30fps 10bit
Mode 3 1536 (H) × 1152 (V) 60fps 10bit
Mode 4 1536 (H) × 384 (V) 240fps 10bit
Mode 5 1536 (H) × 384 (V) 30fps 10bit
Mode 6 1536 (H) × 180 (V) 420fps 10bit
Mode 7 2304 (H) × 1296 (V) 60fps 10bit
Mode 8 1536 (H) × 576 (V) 120fps 10bit
Lensについて

Fisheyeとは書いていないものの、155度という時点で魚眼レンズと想定される。
(実際に歪み補正無しで記録した画像は、魚眼特有の歪みが激しい。)

補足

ざっと見た感じ、A7LSの各種NRとレンズひずみ除去、撮影しながらストリーミング辺りの機能と、IMX206の全画素読出しモードが静止画撮影に利用され、Mode1,2,7辺りが動画撮影に利用されていそうな感じがする。
一方、A7LSやIMX206の機能として存在しても、Xiaomi Yiでは利用されてない機能が多数存在する。*4
安価なうえに秘められた機能が豊富となれば、ハックしようとする人間が世界中に多数居るのも不思議ではない。そして、実際にそのような報告が多数あるが、私自身が試していないので本記事では触れない。




ここからは実機で撮影したデータから得られた情報を記載する。

静止画のExif情報を眺めてみる

Yiで撮影した静止画から抽出したExif情報を以下に掲載する(但し、撮影時刻やISO感度など撮影状況依存の項目は除外)。

Make XIAOYI
Camera Model Name YDXJ 1
Orientation Horizontal (normal)
X Resolution 72
Y Resolution 72
Resolution Unit inches
Software Ver.1.0.000
Y Cb Cr Positioning Centered
PrintIM Version 0300
F Number 2.8
Exposure Program Program AE
Sensitivity Type ISO Speed
Exif Version 0230
Components Configuration Y, Cb, Cr, -
Aperture Value 2.6
Exposure Compensation 0
Max Aperture Value 2.6
Subject Distance undef
Light Source Unknown
Flash No flash function
Focal Length 2.7 mm
Flashpix Version 0100
Color Space sRGB
Exif Image Width 4608
Exif Image Height 3456
Interoperability Index R98 - DCF basic file (sRGB)
Interoperability Version 0100
Exposure Index undef
Sensing Method One-chip color area
File Source Digital Camera
Scene Type Directly photographed
Custom Rendered Normal
Exposure Mode Auto
White Balance Auto
Digital Zoom Ratio 1
Focal Length In 35mm Format 24 mm
Scene Capture Type Standard
Gain Control None
Contrast Normal
Saturation Normal
Sharpness Normal
Subject Distance Range Unknown
Compression JPEG (old-style)
Thumbnail Offset 2048
Thumbnail Length 3080
Image Width 4608
Image Height 3456
Encoding Process Baseline DCT, Huffman coding
Bits Per Sample 8
Color Components 3
Y Cb Cr Sub Sampling YCbCr4:2:2 (2 1)
Aperture 2.8
Image Size 4608x3456
Megapixels 15.9
Scale Factor To 35 mm Equivalent 8.8
Circle Of Confusion 0.003 mm
Field Of View 73.7 deg
Focal Length 2.7 mm (35 mm equivalent: 24.0 mm)
Hyperfocal Distance 0.78 m

Exifより以下のことが読み取れる。

  • メーカー名はXiaomiではなくXIAOYIらしい。
  • 型番/モデルナンバーはYDXJ 1らしい。
  • オフィシャルサイト及びExifのF Numberは2.8だと言っているが、(Max)Aperture Valueは2.6と不思議なことを言っている。所謂アクションカムなので絞り機構は無いのだが。
  • オフィシャルサイトには明示されていないが、Exifによると35mm換算で24mm相当の画角らしい。
  • オフィシャルサイトには155°ultra-wide angle lensと書かれているのだが、ExifによるとFOVは73.7deg。24mm相当ならExif通り水平画角で73.7度が正しいと思われるが、155度ってのは何なんだろうか(広角補正前の魚眼状態だと155度の画角がある?が、Exifに反映されない?)。
  • ExifによるとHyperfocal Distanceが0.78mだと言っているが、無限遠にピントが合ってる感じはしない。海外サイトで自撮りに適したフォーカス位置に固定されているという趣旨の記述を見かけた事があるが、その通りだと思われる。

動画のメタデータ等を眺めてみる

Exiftoolで拾えるメタデータ(撮影データ依存では無さそうな項目を中心に抜粋)
Major Brand MP4 Base w/ AVC ext [ISO 14496-12:2005]
Minor Version 0.0.0
Compatible Brands avc1, isom
Image Width 1920(ファームウェア最新化で2304まで対応)
Image Height 1080(ファームウェア最新化で1296まで対応)
Graphics Mode srcCopy
Compressor ID avc1
X Resolution 72
Y Resolution 72
Compressor Name XiaoYi AVC encoder
Bit Depth 24
Handler Type Audio Track
Handler Description XiaoYi AAC
Audio Format mp4a
Audio Channels 2
Audio Bits Per Sample 16
Audio Sample Rate 48000
Image Size 1920x1080(ファームウェア最新化で2304x1296まで対応)
ffprobeで拾える情報
  • FullHD 30fps
Input #0, mov,mp4,m4a,3gp,3g2,mj2, from 'YDXJ0001.mp4':
  Metadata:
    major_brand     : avc1
    minor_version   : 0
    compatible_brands: avc1isom
  Duration: 00:00:15.98, start: 0.000000, bitrate: 12372 kb/s
    Stream #0:0(eng): Video: h264 (Main) (avc1 / 0x31637661), yuvj420p(pc), 1920x1080 [SAR 1:1 DAR 16:9], 12111 kb/s, 29.97 fps, 29.97 tbr, 240k tbn, 59.94 tbc (default)
    Metadata:
      handler_name    :
                      : XiaoYi AVC
      encoder         : XiaoYi AVC encoder
    Stream #0:1(eng): Audio: aac (LC) (mp4a / 0x6134706D), 48000 Hz, stereo, fltp, 128 kb/s (default)
    Metadata:
      handler_name    :
                      : XiaoYi AAC
  • FullHD 60fps
Input #0, mov,mp4,m4a,3gp,3g2,mj2, from 'YDXJ0002.mp4':
  Metadata:
    major_brand     : avc1
    minor_version   : 0
    compatible_brands: avc1isom
  Duration: 00:00:12.56, start: 0.000000, bitrate: 25520 kb/s
    Stream #0:0(eng): Video: h264 (Main) (avc1 / 0x31637661), yuvj420p(pc), 1920x1080 [SAR 1:1 DAR 16:9], 25223 kb/s, 59.94 fps, 59.94 tbr, 240k tbn, 119.88 tbc (default)
    Metadata:
      handler_name    :
                      : XiaoYi AVC
      encoder         : XiaoYi AVC encoder
    Stream #0:1(eng): Audio: aac (LC) (mp4a / 0x6134706D), 48000 Hz, stereo, fltp, 128 kb/s (default)
    Metadata:
      handler_name    :
                      : XiaoYi AAC
  • 2K 30fps
Input #0, mov,mp4,m4a,3gp,3g2,mj2, from 'YDXJ0003.mp4':
  Metadata:
    major_brand     : avc1
    minor_version   : 0
    compatible_brands: avc1isom
  Duration: 00:00:08.51, start: 0.000000, bitrate: 15523 kb/s
    Stream #0:0(eng): Video: h264 (Main) (avc1 / 0x31637661), yuvj420p(pc), 2304x1296 [SAR 1:1 DAR 16:9], 15147 kb/s, 29.97 fps, 29.97 tbr, 240k tbn, 59.94 tbc (default)
    Metadata:
      handler_name    :
                      : XiaoYi AVC
      encoder         : XiaoYi AVC encoder
    Stream #0:1(eng): Audio: aac (LC) (mp4a / 0x6134706D), 48000 Hz, stereo, fltp, 128 kb/s (default)
    Metadata:
      handler_name    :
                      : XiaoYi AAC

これらより以下の事が読み取れる。

  • ビットレートは高くない(上記3パターン共に走行中の車内からテスト撮影したため、映像の動きは比較的大きい状態)。
  • 音声は16bitステレオ48KHzでAACで記録される。オフィシャルサイトのDual-channel, 96KHz samplingという表記は何なんだろうか(普通はそんな表現しないが、もしかして48KHz * 2Channel = 96KHz?)。


なお、全ての記載内容は無改造状態での話である。

以上。


※本機は非公式ながらスクリプトで機能拡張が可能であることが各所で報告されている。
その際は基本情報として記した辺りの情報が参考になるのではないかと思いつつ、とりあえず情報を集めてみた。が、まだ試していない。

*1:使い始めたばかりのため、私の設定に問題がある可能性もある。

*2:本記事は技術基準適合証明を受けていない機器の利用を推奨するものではありません。

*3:motion-compensated temporal filtering

*4:RAW撮影、HDR撮影、電子式ブレ補正やハイスピード撮影などがそれに該当する。