Apple Loops(CAF)をWAVに変換する

はじめに

ACIDとは

 Windows用のACIDというオーディオループシーケンサがある。AppleGaragebandみたいなソフトであるが、パクリや紛い物ではなく、ACIDの方が先発である。
 元々はSonic Foundry社のソフトであったが、いつの間にかSony Creative Softwareのソフトになっていた。また、国内代理店もフックアップからソースネクストに変わっていた。

 確かWindowsXPの頃に使っていたのだけど、社会人になってからはこの類のソフトは殆どご無沙汰であった。が、先日ソースネクストで「ソニー製品取扱1周年記念キャンペーン」として破格値だったMovie Studio 13 Suiteを購入したため、新しいバージョンのACID*1を手に入れることができた。

 ちなみにMovie Studio 13 Suiteには、過去に愛用していたオーディオエディタのSound Forge*2も同梱されており、物凄くお買い得感がある。
 ループベースの作曲がしたいとか、音声編集がしたいだけで、動画編集なんて興味ないという人にもオススメできるコストパフォーマンス。※普段は特別安いわけではないので、急ぎでなければたまに安売りしている時を狙うといいと思う。

 なお、Movie Studio 13 Suiteの上位版のVegas Pro 13 Suiteを買ってしまうと、Sound ForgeはPro版になるのだが、ACIDはバンドルされなくなるので、ACID目当ての場合は注意が必要。ACIDのPro版が欲しい場合には、単品で購入する必要があり、割安感は特にない。動画編集ソフトはMovie StudioではなくVegas Proが使いたいのだけど、ACIDもSound Forgeも使いたいという場合には、Vegas Pro 13 EditとMovie Studio 13 Suiteを買うのが経済的なので、私はそうした。結果的にVegasとMovie Studioの2つのライセンスが手に入ることになるので、サブマシンでもMovie Studioを使って動画編集できるので、そんなに悪い話でもないと思う。
 

Apple LoopsをACIDで使いたい

 話が逸れたが、この類のソフトはご無沙汰と言いつつも、Garagebandは多少触っていた時期がある。その際にApple Loopsを購入していたので、ACIDでも使えないかなと思った。
 (全てがそうなのかは知らないが、)私の手元にあるApple Loopsは拡張子cafのファイルで、ACIDに放り込んでみたところ、読めない事が判った。

 ACIDはwav, mp3, aiff辺りなら読めるので、cafを変換することにした。
 

コンバート

Sound Forge

 まずは、Sound Forgeで試みるも、caf読めない。(Mac版は読めそうだが、持っていない)。
 

SoX

 次はオーディオ版ImageMagickとも言える万能ツールSoXで試みるも、読めなかった。
 コンテナとしてCAFに対応しているものの、コーデックにより対応可否が異なるという情報や、リファレンスにはcafがoptionalと書かれていたりして実際の対応状況はよく解らない。
 

ffmpeg

 オーディオストリームだけ扱うようなものだと考えれば、ffmpegが使えるのではないかと閃いたので、試してみたら読めた!
 もちろんwavにもmp3にもaiffにも変換できる。
 但し、wavやaiffに変換しても、どうやら元のcafは44.1kHz StereoながらもAACで圧縮されているようで、非可逆圧縮が展開された無駄にファイルサイズが大きいだけで、高音質でもないファイルが出来てしまう。
 かといって、MP3にしてしまうと再エンコードされて、さらに音質が劣化してしまう。ということで、ファイルサイズには目を瞑って、wavに変換することにした。

 ところで、本家ACIDにもLoops for ACIDというループ集がリリースされている。このループは単なるwavファイルではなく、ACIDizedされているのが特長である。
 ACIDizedされているとは、ファイル中にbpm、小節数、キー情報が記録されていることを指し、ACID側で曲のテンポやキーを変更しても整合性が保てるメリットがある。
 Garagebandも同様の振る舞いをするから、同様のメタデータが記録されているはずで、これも一緒に変換してACIDizedされたwavファイルにしたいと思ったのだけど、ffmepgでは無理だった。
 ffmpegで変換時に、

skipping CAF chunk

 という警告が1ファイルにつき3or4回出るので、そのチャンクにACIDized相当の情報が格納されているのだと想像される。
 なお、著作権情報やコメントなどの一般的なメタデータは複製できる。コマンド例は以下の通り。

ffmpeg -i INPUT.caf -map_metadata 0 OUTPUT.wav

 とりあえずこれで、cafファイルをACIDで読めるwav(not acidized)に変換可能である。

 以下の1行をcaf2wav.batといった感じのファイル名で保存しておけば、実行したディレクトリ内のcafを根こそぎwavに変換できるので便利だと思う。

for %%V in (*.caf) do ffmpeg -i "%%V" -map_metadata 0 "%%~nV".wav

 

QuickTime

 Windows版はAppleによるサポートが打ち切られ、脆弱性も明らかになっているため即刻アンインストールすべき危険な状態のため、試行するに値しない。
wave.hatenablog.com
 

参考

そもそもCAFって?

 何故か日本語版Wikipediaでは見当たらなかったものの、"Core Audio Format"で"CAF"らしい。Core AudioといえばAppleですよねって察しが付く通り、Appleが2005年に開発したオーディオコンテナだそうです。
Core Audio Format - Wikipedia, the free encyclopedia

The Core Audio Format is a container for storing audio, developed by Apple Inc.. It is compatible with Mac OS X 10.4 and higher; Mac OS X 10.3 needs QuickTime 7 to be installed.

Core Audio Format is designed to overcome limitations of older digital audio formats, including AIFF and WAV. Just like the QuickTime .mov container, a .caf container can contain many different audio formats, metadata tracks, and much more data. Not limited to a 4 GB file size like older digital audio formats, a single .caf file can theoretically save hundreds of years of recorded audio due to its use of 64-bit file offsets.

Soundtrack Pro and Logic Studio use the .caf format extensively for their loop and sound effects library, particularly for surround-sound audio compressed with the Apple Lossless (ALAC) codec.

 ということで、適当に訳してみると、

Core Audio Format(CAF)はAppleが開発したオーディオ(音声)を格納するコンテナである。MacOSX 10.4以上に互換性があり、10.3ではQuickTime7をインストールする必要がある。
CAFは既存のデジタルオーディオフォーマット(AIFFやWAVを含む)の制限を解消するために設計された。QuickTimeのmovコンテナと同様に、cafコンテナには多様なオーディオフォーマットやメタデータなどの情報を格納することができる。
既存のオーディオフォーマットのように4GBのファイルサイズ制限もなく、64bitのファイルオフセットを使用していることから、理論的には単一のcafファイルに数百年分の音声記録を保存できる。
Soundtrack ProとLogic Studioはcafフォーマットを拡張(extensively)してループや効果音ライブラリとして使用しており、特にサラウンドオーディオではApple Lossless(ALAC)で圧縮している。

 大昔にAppleに買収された旧emagicのLogicの話が出てますが、同様にGaragebandApple Loopsも恐らくCAFの拡張領域にACIDized情報が格納されており、ffmpegでは該当情報が読み出せないのだと想像されます。
 

有料でもACIDizedなファイルに変換したい

 私が実際に試したわけではないが、CHICKENS SYSTEMSのTRANSLATORという市販ツール($149.95)ならACIDizedな情報を維持したまま、変換可能という記述が海外掲示板にあったので、参考までに紹介しておく。
Apple Loops to WAV | KVR Audio Forum

if what you are actually saying is you want to convert them to ACID files (which use WAVE but add the slice info), you can use Translatorwww.chickensys.com to do this. If converts AppleLoop AIFF files to ACIDized WAVE files.

Support : Translator 6
 



以上。

*1:ACID Music Studio 10.0

*2:Sound Forge Audio Studio Version 10.0