キャノンが今期2度目の業績予想下方修正を発表した

f:id:kachine:20160727022127j:plain
本投稿は金融商品等の投資勧誘を目的とするものではありませんし、投資判断の根拠として依拠すべき情報でもありません。
 

 ロイターより以下の記事が報じられています。
jp.reuters.com

 ドル円及びユーロ円の双方の為替前提を昨今の円高傾向を加味して修正したことと、カメラやプリンタの販売減の2つが主因であるという趣旨の内容のようです。
 

 為替レートは本質的に一企業がどうにかできる類のものではないため、為替予約を活用するなどしてレート変動リスク低減を図る以外にはできることはないでしょうから、円安を期待して為替差益を狙うような収益予測になっていなければ経営姿勢としては問題無いのではないでしょうか。

 カメラやプリンタの販売減、こちらについては気になります。

  • ここで言うプリンタはレーザープリンタなどの事務機を指しており、記事によれば前年比-10.9%
  • カメラなどのイメージングシステムは-11.8%

 この原因は記事より引用すると以下の通りだそうです。

レーザープリンター新興国の景気低迷の影響で販売減が続く見通し。カメラは、レンズ交換式は前年並みの550万台の年間販売予想だが、市場縮小が続くコンパクトは熊本地震の影響もあり「大幅な販売減を見込んでいる」(田中副社長)という。

 

 ちょっと漠然とし過ぎているので、キャノンが発表したIR資料も見たいと思います。以下のサイトの「2016年12月期 第2四半期 決算発表」として掲載されている3つのPDFが今回の発表になります。
キヤノン株式会社:投資家向け情報|決算発表

 個人的に興味のあるカメラ周りの情報を説明会資料 (PDF:0.60MB)から拾ってみたいと思います。
 

イメージングシステム2016年2Q実績(説明会資料P12)

 この第2四半期実績を、台数ベースで前年同四半期と比較すると以下の通り。

レンズ交換式デジタルカメラ -1%
コンパクトデジタルカメラ -30%
デジタルカメラ合計 -16%

 個人的にはコンパクトの実績低下が酷く見えます。これをスマートフォンの台頭(と、カメラ機能の進化)によるものと捉えるか、副社長談の熊本地震による影響、すなわちソニーのイメージセンサ工場の被災による供給不足による影響と捉えるか、或いはそれ以外に理由を求めるかは、判断が割れそうです。
 それでも、デジタルカメラ合計では-16%に留まっているため、一眼系の比率が高いことが察せられます(次の表で明らかなります)。
 

 この第2四半期のレンズ交換式デジタルカメラの比率*1は以下の通り。

台数ベース 56%
金額ベース*2 85%

 レンズ交換式が台数ベースで56%ということで、キャノンで売れてるデジタルカメラの過半数は一眼・ミラーレスということになります。そして、交換レンズも含めると金額ベースでは85%にも達するということなので手堅く稼いでると言えそうです。

 が、資料中のグラフによれば売上高・利益率共に落ち込んでいます。
 前年同期比でカメラの円建て換算売上高は-17.0%に達しますが、為替の影響を受けない現地通貨ベースでは-7.6%に留まっています。
 カメラを含むイメージングシステムの営業利益は430億円で、前年同期比-14.4%となっています。
 

イメージングシステム2016年年間見通し(説明会資料P13)

 台数ベースで前年と比較すると以下の通り*3

レンズ交換式デジタルカメラ -1%
コンパクトデジタルカメラ -39%
デジタルカメラ合計 -22%

 第2四半期実績単独よりコンパクトの見通しが悪化し、デジタルカメラ合計も悪化しています。それでもレンズ交換式は第2四半期と同等を維持しています。以下の投稿で、熊本地震による台数低下を穴埋めすべく、一眼カメラの増産に踏み切るという報道を紹介しましたが、それなりに整合性のある見通しとなっているようです。
wave.hatenablog.com
 あくまでも見通しなので、コンパクトの代わりとして一眼買わない人が多ければ、さらに下振れする可能性もあるのではないでしょうか。
 

 2016年の年間のレンズ交換式デジタルカメラの比率*4見通しは以下の通り。

台数ベース 58%
金額ベース*5 86%

 第2四半期実績よりレンズ交換式の比率が増えているのは、前述の通り熊本地震によるコンパクト機の台数低下の穴埋めで一眼カメラの増産に踏み切ったことを反映しているのでしょう。
 それでも金額ベースでは微増にとどまっているのは、コンパクト機の代替として売り込むためローエンド~ミッドレンジを主体と想定しているからではないでしょうか。すなわち熊本地震の影響が直撃しているのは、ソニーから供給を受けていると思われる1インチセンサ搭載のPowershotG系と想定されるため、同等の価格帯で販売可能な一眼カメラ(M/Kissシリーズ?)が伸びると想定しているのではないでしょうか。また、増産した以上は売れなければ値下げしてでも処分せざるを得なくなるため、その辺も織り込んでの控えめの見通しなのかもしれません。

 資料中のグラフによれば、年間のカメラの円建て換算売上高は-14.1%、ただし現地通貨ベースでは-4.1%となっています。ここでも海外市場で稼いだ額が為替レートの影響によって大きく目減りするのがよく解ります。とは言え、2016年の年間見通しの方が、第2四半期実績より好転すると見込んでいるのはどんな目論見があるのでしょうか。
 カメラを含むイメージングシステムの年間の営業利益は1400億円の見通しで、対前年*6で-23.7%と、大きく落ち込んでいます。
 年間で430億円も利益が減る見通しとなっていますが、ユーザーとしては研究開発費は削らないでほしいですね。
 
 
※数値等は誤記の無いよう注意していますが、読み違え等の可能性も鑑みて、興味のある方は一次資料をご参照いただくことを推奨します。
 



以上。

*1:デジタルカメラ全体に占める構成比

*2:交換レンズ含む

*3:資料には「対前年同期台数伸び率」と書いてあるのだけれど、「年間見通し」で「前年同期」とか何言ってんだ感。本投稿では「対前年台数伸び率」だと解釈して書いています。

*4:デジタルカメラ全体に占める構成比

*5:交換レンズ含む

*6:ここでも「対前年同期伸び率」と書いてあるけれど、「年間」見通しで「前年同期」とか何言ってんだ感。本投稿では「対前年伸び率」というか単に「前年比」の意味だと解釈しています。