Canonがイメージセンサを外販する模様

 Canonが2年以内を目途にイメージセンサの外販に乗り出すようで、日刊工業新聞に以下の記事が出ています。
キヤノン、基幹部品のイメージセンサーを外販へ。ただし産業用に限ります

 タイトルにもあるように産業用に限られるようで、SONYPANASONICSAMSUNG、OmniVisionなどのイメージセンサ供給元とは異なり、映像機器としてのカメラ・カムコーダやスマートフォン等はターゲットでは無いようです。具体的には車載用途を狙っているようで、SONY等の他社も強化している領域に参入しようとしているようです。
 

特徴

 キャノンの外販センサはグローバルシャッター搭載しつつも、映像制作にも使える品質が特徴のようです。
 グローバルシャッター実現のためにメモリセルをイメージセンサと同一素子に形成する必要があり、普通に作ると受光部のフォトダイオード(PD)面積が小さくなってしまう。それに対し、CanonはPDとメモリの配置の最適化や、半分の大きさのPDでも従来と同じ電荷を蓄積できるようにした。という趣旨の説明が記述されています。

 PDとメモリ配置の最適化については、SONYExmor RSのような積層型構造なのか全く違うアプローチなのかは判りませんが、狙いは両社とも同様なのでしょう。
 一方で半分の大きさのPDということは、感度低下がどの程度に抑えられているのかも興味深いところです。それでいて、従来と同じ電荷蓄積が可能ということなので、ダイナミックレンジは従来同等を実現していると期待されます。感度低下に対するソリューションとしては増幅率を上げるということになると思いますので、基本感度以外でのS/N比は多少なりとも悪化することが予想されます。とは言え、従来は外販していないので、従来同等だろうと、従来より悪化しようと納入先には解りようが無いわけですが。

 なお、このセンサを搭載した自社の映像制作機器を来年1月に発売するそうです。
 

外販参入理由

 カメラの販売台数低迷が原因の自社のイメージセンサ工場の稼働率低下に対するソリューションとして、産業向け外販市場に参入するようです。
 すなわちカメラ市場の低迷は継続するという読みの下、余剰生産設備を有効利用したいという意図のようですが、SONY等のイメージセンサ生産規模と比較すれば微々たるもの。Canonの余剰設備だけで十分な供給ができるのかは疑問です。かと言って製造設備に投資して規模を追うと、かつての半導体や液晶で起きた悪夢がイメージセンサでも繰り返されるのではないかという嫌な予感もします。
 

雑感

 昨年Canonは監視カメラ世界トップのAXISをTOBで買収しましたが、そっちを伸ばす方に注力すべきではないかと個人的には思います。産業向けイメージセンサの外販ではなく、自社の産業向け機器に組み込んで捌く方が、利益率も高いでしょうし、先に書いたような半導体や液晶の二の舞に陥らずに済みそうだと思われるためです。
 例えば(テレビに4Kや8Kは必須ではないでしょうが、)防犯カメラが4K/8Kになったら犯人はバッチリ識別できます。という売り方をすれば、新設だけではなく既存からのリプレースも含めて数を追うこともできるでしょう。既にSONYが手掛けているようですが、そのマーケットに自社製品を大量投入し、運用保守周りの契約も取り付ければ息の長い手堅い商売に成長しそうなものです。
 



以上。