日本語の「トランプ」は英語の"Trump"ではない!?

 次期アメリカ大統領としてトランプ氏が当選し、関連報道などで連日メディアを賑わせています。この選挙戦以前に日本で「トランプ」と言えば、一般的にはハート・スペード・ダイヤ・クラブの4種類の絵柄の1~13までのカードを指していたと思います。ところで、「トランプ」の綴りは"trump"であり、次期大統領と同じですが、「トランプ」は必ずしも"trump"では無いようです。何を言っているのか解りにくいですが、日・米のWikipediaを見ると以下の通り。
 

日本で言う「トランプ」とは

 Wikipedia日本語版による「トランプ」は、冒頭に記したのと同様に4種類の1~13までのカードを説明しています。
トランプ - Wikipedia
 当該ページの英語版は以下になります。
Playing card - Wikipedia
 ということで、日本語の「トランプ」は英語の"Playing card"に相当するようです。
 

英語で言う"Trump"とは

 Wikipedia英語版による"Trump"は、以下のページで説明されています。
Trump - Wikipedia
 当該ページの日本語版は、以下。
切り札 - Wikipedia
 ということで、英語の"Trump"とは日本語の「切り札」に相当するようです。トランプに限定した切り札ではなく、もっと幅広い意味の切り札として使えるようです。

 英語版を掻い摘んで読んでみると、英語の"trump"は15世紀のイタリアのカードゲームの"trionfi"に由来し、それはラテン語のtriumphus(英語のtriumph, victory procession)に由来するそうです。すなわち日本語で言うところの大勝利や凱旋行列的なものが由来になるようです。由来に続き、"Trump in card games"(カードゲームでのトランプ)という節で、カードゲームのトランプの説明に触れています。その後に、"Metaphorical uses"(メタファーとしての使用例)という説で、暗喩や比喩的な使用例が説明されています。具体的には、以下のようなもののメタファーとして使用されると記述されています。

  • person(人)
  • weapon(武器)
  • the starting of a chain of events(一連のイベントの始まり)

 このメタファーを見る限り、日本語で「カードを切る」「切り札を出す」的な比喩表現と類似する使用例になっているようです。
 故に、"trump" ≒ 「カード」 ≒ 「切り札」ということになるのでしょう。
 

辞書で調べると"trump"とは

 Longman英英辞典より引用すると、
Source: trump | meaning of trump in Longman Dictionary of Contemporary English | LDOCE

 名詞としては以下の通りで、3番目の用法が日本語で一般に指す「トランプ」に相当するようです。

  1. → trumps
  2. [countable] (also trump card) a card from the suit that has been chosen to have a higher value than the other suits in a particular game
  3. → trump card
  4. → come/turn up trumps

 動詞としての用法もあり、

  1. to play a trump that beats someone else’s card in a game
  2. to do better than someone else in a situation when people are competing with each other

 1はトランプゲームをすることを指し、2は競合する誰かよりうまくやる的なことを指すようです。

 最近、日本テレビレディ・ガガが掲げた"Love trumps hate."と書かれたボードを「トランプは嫌い」と誤訳したとして話題になっていました。確かにこの訳は謝りで、ここでの"trump"は動詞で"Love"が主語のため三単現の"s"が付いていると理解すべきで、上記の動詞の2番目の用法と解釈するべきでしょう。「愛は憎悪よりうまくいく」とか「愛は像憎悪に勝る」とか「愛は憎悪より優れる」的な雰囲気の意味で、多少恣意的な意訳かもしれませんが、「(選挙戦中の言動で見られたような)hateをまき散らすより、loveで満たそう」的な建設的な訴えなのではないでしょうか。
 



以上。