RQ-4 Global Hawkを見てきた

RQ-4 at Yokota AB friendship festival

 少し前の話になりますが、先月の2017年横田基地友好祭で一般に初公開された*1米空軍のRQ-4 Global Hawkを見てきました。
Yokota AB shrine's gate
 

 冒頭に掲載した画像のように、RQ-4の機体周辺は多くの人で非常に混雑していました。多くの人の注目を集めていたRQ-4ですが、ご存知ない方向けに一言で説明するならばガチなドローンです。国内メディアの多くがクアッドコプターなら玩具から空撮用や軍事用までひっくるめて何でもドローンと呼称しているため違和感があるかもしれませんが、RQ-4はクアッドコプターでこそありませんがドローンです。意味は同じですが無人航空機やUAV(Unmanned aerial vehicle)と言った方が伝わりやすいかもしれませんし、用途も含めて表現するなら無人偵察機と言った方が伝わりやすいかもしれません。
 

機体前方から

RQ-4 front view
↑解説パネルのすぐ後ろの機首下部に丸いものが付いていますが、これが偵察に使うカメラのようです。後述の図によれば、ビデオカメラと記載がありますので映像記録が可能なようです。
 

解説パネル

RQ-4 spec panel

RQ-4 GLOBAL HAWK

  • 翼幅: 39.8m (130ft 6in)
  • 長さ: 14.5m (47ft 6in)
  • 高さ: 4.7m (15ft 4in)
  • 重さ: 6,781kg (14,950lbs)
  • スピード: 603km/h (マッハ0.49 / 375mph)
  • 航続距離: 22,779km (14,154 miles)
  • 最高高度: 18,288m (60,000ft)
  • 単価: $60,900,000

アンダーセン空軍基地(グアム)/第69偵察群第1分遣隊 RQ-4 グローバルホーク
高高度、長滞空、24時間・全天候対応可能な無人監視・偵察機
The RQ-4 Global Hawk is a high-altitude, long-endurance, remotely piloted aircraft with a sensor suite that provides global all-weather, day or night intelligence, surveillance and reconnaissance capability.

↑スペックと概要が簡潔に記載されています。
グアムのアンダーセン空軍基地*2所属機がわざわざ友好祭のためだけに東京の横田基地まで飛来してきたわけではありません。夏季のグアムの台風の影響を避けて運用するため10月辺りまで一時的に横田基地に配備されているそうです。
 

左翼側前方から

RQ-4 front-left view
↑解説パネルに翼幅39.8mと具体的な数字があるように、小型の機体な割に横にかなり長いため、他の来場者が映り込まないように間近まで近寄ると超広角でも収まりません。ということで、うまい具合に映り込まない場所を探して結構な望遠で撮っています。こうして見ると、それ程翼が長いようには見えないのですけどね。
 

左翼側主脚付近

RQ-4 left main landing gear
↑左側に見える蓋の空いたハコのようなものは飛行中に主脚を収めるフェアリング(aerodynamic fairing)だと思われます。その真ん中辺りにに小さなアンテナが飛び出ているように見えますが、これが敵味方識別装置(IFF; identification friend or foe)のアンテナだと思われます。
 

機首付近

RQ-4 head
↑独特の流線型に近い形をしています。おでこに相当する部分の中にはKUバンドの広帯域衛星通信パラボラアンテナとUHF帯のLOSトランシーバのアンテナが格納されていると思われます。なお、側面の黒い部分のパーツには赤字で以下の記載がありました。

HEAVY RADOME-USE APPROPRIATE GROUND SUPPORT
EQUIPMENT FOR UPLOADING AND DOWNLOADING

「重量級のレドームだからちゃんと支えろよ。」的な意味と、「アップロード・ダウンロードする機材」的な意味の記載だと思わます。この黒い部分の内側には、自衛のためレーダー波を捉えるESM/RWRアジマスアンテナと、IFFアンテナアレイが格納されていると思われます。
 

エアインテイク付近

RQ-4 air intake
↑赤いカバーで覆われていますが、ここがエンジンの給気口になります。内部にはロールスロイスのAE3007Hターボファンエンジンが収まっています。グローバルホークは単発ですが、同じエンジンを双発にしてセスナやエンブラエルビジネスジェット(Honda Hondajetのような小人数向けの小型機)やリージョナルジェット(Mitsubishi MRJのような比較的小型の旅客機)にも採用されています。
なお、エンジン上に位置する白いアンテナはUHF帯の衛星通信アンテナだと思われ、米空軍の国籍マークの上に位置する白いアンテナがDGPS(Differential GPS; 一般の単独測位のGPSより高精度な相対測位のGPS)アンテナだと思われます。
 

機体後方

RQ-4 rear
↑エアインテイクの下あたりですが、興味深いペイントがいくつか見つかります。"U.S. AIR FORCE"のAIRとFORCEの間に電気回路の接地(GND)記号が見当たりますし、右側の"REMOVE BEFORE FLIGHT"タグが取り付けられたワイヤーが刺さっている箇所にも同様の接地記号が見当たります。この画像には写っていませんが、ワイヤーを辿ると地面の端子箱(?)に接続されており、文字通り接地されているようです。家庭の洗濯機のアース接続と同じで、ドローンの電化製品らしさが垣間見えます*3
黄色い三角形の中にWiFiマークのような電波を表していそうなハザードマークも見えます。このマークの下には電波を放射するから19メートル以上の安全距離をとれという趣旨と思われる以下の文言が表示されていました。

RF RADIATION HAZARD
OPERATIONAL SAFE DISTANCE
62FT / 19M

その上には赤字で"BATTERY ACCESS"と表示がありますので、このパネルを取り外すとバッテリが収められているのだと思われます。
FORCEの下には黄色字で"EMERGENCY ACCESS"と表示されているパネルも確認できます。このパネルを取り外すとバッテリの接続を絶てるようで、以下の文字が小さめに黒字で表示されています。

BATTERY DISCONNECT INSIDE

この辺りには電力系統がまるっと収まっているのかもしれません。
 

尾翼付近

RQ-4 tail wing
↑尾翼に"BB"と表示されています。この2桁の記号はテールコードと呼ばれ、所属を示しています。個人的には横田基地所属なら"YJ"、三沢基地所属なら"WW"、嘉手納基地所属なら"ZZ"といった具合に理解していたのですが、所属基地を表すものではなく、所属部隊を表すコードのようです*4。考えてみれば専守防衛自衛隊ならともかく、世界各地に部隊を展開し得る米軍であることを考えると、所属基地を表示する意味なんてあまりないのであろうということも薄ら察せられます。
前述の通り本機は通常はグアムのアンダーセン空軍基地に配備されている機体です。検索してみると"BB"の意味するところはアンダーセン空軍基地所属ではなく、1st Reconnaissance Squadron(米第一偵察隊)を表すようです。が、前掲の解説パネルによれば、第69偵察群第1分遣隊とのことですので、そちらが正しいのでしょう*5
蛇足ながら、北朝鮮を睨んで爆撃機B-1B Lancerがアンダーセン空軍基地から飛行したと頻繁に報じられていますが、その機体のテールコードは"EL"や"DY"だったりするようで、それぞれ28th BW(米第28爆撃航空団, サウスダコタ州エルスワース空軍基地)、7th BW(米第7爆撃航空団, テキサス州ダイエス空軍基地)といった部隊の機体が飛来しているようです。なので、ほとんどYJばかりの横田基地とは異なり、アンダーセン空軍基地には複数のテールコードの機体が混在して展開しているようです。閑話休題
 

 現地で撮影した画像は以上ですが、(英語ですが)米軍ではなくNATO仕様のRQ-4を詳しく図解した画像が公開されています。機体各部について知りたければ以下の画像を眺めてみると興味深いと思います。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/7e/Northrop_Grumman_RQ-4_Global_Hawk.jpg
 



以上。

*1:先立って三沢基地では公開されているものの、横田基地というか関東での一般公開は今回が初。

*2:Andersen AFB; アンダーセン空軍基地。日本語では"andersen"を「アンデルセン」と表記することもあるが、この空軍基地の場合「アンダーセン」表記。アンデルセン空軍基地だと童話のせいでメルヘンチックだからだろうか。

*3:一般の航空機でも、給油時は静電気による発火を防ぐためアース接続するようです。

*4:ただ、"YJ"は374th AW(米第374空輸航空団)を表し、374th AWは横田基地に配備されており、他の部隊は通常横田基地には配備されていないため"YJ"が横田基地所属と混同しても事実上同義だった感じです。

*5:若干カオス気味ですが、テールコードの定義とその値の意味について米空軍が公式に公開している情報は少なくともネット上には無いようなので、、ネット上の非公式情報はアップデートされていなかったりするのでしょう。