トランプ米大統領が韓国国会でI want peace through strengthと発言した

 アジア各国を訪問中で先日まで日本を訪れていたトランプ米大統領が韓国に渡っています。

 メディアによれば韓国国会で「強さ通じて平和を構築」といった趣旨の発言をしていることが報じられています。
トランプ氏、韓国国会で演説 「強さ通じて平和を構築」:朝日新聞デジタル

 "Peace through strength"的なことを発言したのかなと思いましたが、この言葉だったら某所で目にしたことがあります。

 実際のところ大統領は原語(英語)で何と発言しているか気になったため調べてみたところ、Bloombergが映像付きで配信していました。
Trump: I Want Peace Through Strength – Bloomberg
 その他海外メディアでも報じられています。
'I want peace through strength,' Trump says in South Korea - World - CBC News
 

具体的に何と発言したのか

 映像を確認すると"I want peace through strength"と発言していることが判ります。主観ですが朝日新聞の「強さ通じて平和を構築」という訳も普通に適切だと思います。
 

どんな文脈だったのか

 この発言に至るまでを聴いていると、以下のような事が発言されているのが聞き取れます。

  • 「世界最大の3隻の空母がジェット戦闘機F-35とF-18を満載して展開している」*1
  • 原子力潜水艦も適切な位置に配備している」
  • 「数千億ドルを費やして最新で最良の武器を製造している」

 という文脈も鑑みれば、一歩踏み込んで「軍事力を通じて平和を構築」位の意訳をしても適切かもしれません。
 

ロナルド・レーガンの"Peace through strength"

 蛇足になりますが、私が以前目にした"Peace through strength"は以下の画像に写っています。
CVN-76 motto, Peace through strength
 原子力空母ロナルド・レーガン(CVN-76)が横須賀に配備された直後の2015年10月に一般公開された際に撮影したものですが、ロナルド・レーガン(CVN-76)のモットーが"Peace through strength"なのです。
 ちなみに北を睨んで展開中の他の2隻の空母は、ニミッツ(CVN-68)が"Teamwork, a Tradition"、セオドア・ルーズベルト(CVN-71)がラテン語で"Qui Plantavit Curabit"、英語にして"He who has planted will preserve."をモットーとするそうです。

 個人的にはロナルド・レーガン(CVN-76)のモットーが他の2隻よりも軍事的というか力強い感じを受けます。英語版Wikipediaによれば、このフレーズは艦名の由来である第40代米大統領のRonald Reagan氏が選挙戦中に使用していたフレーズであり、大統領となった後の対外政策の柱の一つとされたものだそうです。
Peace through strength - Wikipedia
 

閑話休題

 現大統領が北を睨んで展開中の日本の横須賀を事実上の母港とする原子力空母のモットーと同じフレーズを、北の隣国(北と停戦中の交戦国)で発言したと捉えると、何らかのメッセージ性が有るのではないかとも勘ぐってしまいます。
 一方では、上記Wikipediaによれば2017年1月にトランプ米大統領がアメリカファーストを掲げる対外政策の中心として、"peace through strength"の考え方を引用したとも記載されています。すなわち今回の韓国国会での"peace through strength"発言は実は特に目新しいものでは無く、(少なくとも)今年初頭から継続している考え方を再度表明したに過ぎないと捉えることもできるわけです。

 いずれにせよ"peace through strength"を具現化するため、脅威の除去/最小化を行うため最大の軍事力を行使し、被害を最小化する方向で進むのでしょうか。結果として平和が訪れるならメッセージ通りの振る舞いですし。
 各国首脳間での話は進んでいるのかもしれませんが、報道を見るだけでは事態が今後どのように進展するのか、相変わらず不透明ですね。
 



以上。

*1:世界最大の3隻の空母はニミッツ級原子力空母の「ニミッツ」、「セオドア・ルーズベルト」、「ロナルド・レーガン」の事を指していると思われ、F-18はF/A-18戦闘攻撃機の事を指していると思われる。