FRONTIER PHONE FR7101AKは直販サイトにおいて、「ダブルカメラで一眼レフのような写真を」「ダブルレンズを生かした一眼レフ並みの″ボケ味″や″撮ったあとからピント変更″などカメラ機能充実」「RAWでの保存 ○」といったカメラ機能を訴求する文言が目立ちます。
ノートPC/タブレット・スマートフォン/FR7101AK - BTOパソコン通販のFRONTIER
ところが、具体的な詳細機能やスペックについての情報がどこにも見当たらないため、以下に掲載します。
モード
FR7101AKの標準カメラアプリには以下の4つのモードがあります。
通常モード
ごく普通のカメラです。
デュアルカメラモード
直販サイトで訴求しているデュアルカメラを使うモードです。
スクリーンショット内にも表示が出ていますが、"The best photo distance is less than 2 meters"とのことで、被写界深度の浅い一眼レフっぽい画像を撮りたければ被写体までの距離は2メートル以内にするのが望ましいようです。また、"低照度がデュアルカメラ効果に影響することがあります。"というメッセージが表示されることもあるため、暗いシーンでは正しく機能しない可能性が有るようです。
PIPモード
スクリーンショットでは判りにくいですが、単にフレームを付けた画像を記録できるモードではなく、PIP(Picture in picture)の名称が示唆するように、リアカメラの画像とフロントカメラの画像を同時に1枚の画像として記録するモードです。背景全体がリアカメラの画像となり、フロントカメラの画像はフレーム内に記録されます。
パノラマモード
カメラを動かしながら広い範囲を記録できるパノラマモードです。
カメラ設定項目
歯車アイコンからカメラの設定画面に遷移でき、設定画面には以下の各項目が存在します。
※モードによっては非活性となる設定項目もあります(スクリーンショットは通常モードで取得)。
各項目の設定可能値は以下の通りです。
位置情報を記録する
- ON/OFF
美容
- マルチフェイスモード
- 無効
露出 (※正しくは露出補正)
- -3, -2, -1, 0, +1, +2, +3
撮影モード
ホワイトバランス
- オート
- 白熱灯
- 昼光
- 蛍光灯
- 曇り
- たそがれ
- 日陰
- 温かな蛍光色
静止画設定項目
静止画固有の設定可能値は以下の通りです。
ZSD (Zero Shutter Delay)
- ON/OFF
手ブレ補正
- ON/OFF
顔検出
- ON/OFF
自動シーン検出
- ON/OFF
RAW(.DNG)
- ON/OFF
セルフタイマー
- OFF
- 2秒
- 10秒
キャプチャ数 (※英語UIにしてもCapture numberとしか表示されず何のことか判らない。最大連写可能枚数か?)
- 40枚
- 99枚
ISO
- 自動
- 100
- 200
- 400
- 800
- 1600
Dual camera auto saved (※用途不明)
- ON/OFF
動画設定項目
動画固有の設定可能値は以下の通りです。
EIS (Electronic Image Stabilization; 電子式手ぶれ補正)
- ON/OFF
マイク
- ON/OFF
音声モード
- 会議
- 標準
動画の画質
- 低
- 中
- 高
- 微細 (※英語UIにするとFineと表示される。
High(高)とFineとどちらが高画質なのか判断つかないので実ファイルで確認予定。)
(追記ここから)
撮影条件を合わせて各画質設定時に記録された映像ファイルを確認したところ、以下のスペックとなっていました。
画質 | 解像度 | 映像ビットレート | オーディオチャネル | サンプリング周波数 | 音声ビットレート |
---|---|---|---|---|---|
低 | 176x144 | 240kb/s | 2(stereo) | 48KHz | 64kb/s |
中 | 640x480 | 1007kb/s | 2(stereo) | 48KHz | 127kb/s |
高 | 1280x720 | 3022kb/s | 2(stereo) | 48KHz | 127kb/s |
微細 | 1920x1080 | 5727kb/s | 2(stereo) | 48KHz | 128kb/s |
また、画質設定に依らず共通して以下の仕様となっているようです。
- コンテナ形式
- 3gp
- ビデオコーデック
- H264(High profile)
- オーディオコーデック
- AAC(LC)
※いずれの画質設定時も約10fpsと異様な低フレームレートで記録されていましたが、撮影モード=夜景を選択して撮影していたため、シャッタースピードを稼ぐためにフレームレートが低下していた可能性が有ります。ビットレートが低いのもそのためではないかと考えられます(昼間に再検証予定)。
(追記ここまで)
(追記2ここから)
その他
- シャッタースピード関連
- 記録画素数関連
- DNG関連
- RAW記録時にはJPEGも同時記録される(ファイル名: IMG_YYYYMMDD_HHMMSS_RAW.dng, IMG_YYYYMMDD_HHMMSS_RAW.jpg)
- 16bit/pixel, 非圧縮のDNGとして記録される
- 4200x3120x2/1024/1024≒約25MBのファイルサイズとなる(非圧縮のため常にファイルサイズはほぼ一定)
- デュアルカメラモード時にもRAW記録は可能だが、DNGにはメインカメラのRAWイメージのみ記録されるため後からデュアルカメラを活かした加工することはできない
- EXIF分析
- F値は2.0
- 実焦点距離3.5mm (35mm換算値は不明)
- Adobe Camera RAWでUprightで補正したところ、UprightFocalLength35mmキーに25.829993981と記録されたため、35mm換算で25mm前後と思われる
- Softwareタグには"MediaTek Camera Application"と記録されており、MediaTekのリファレンスアプリをそのまま或いは多少手を加えたのがプリインストールのカメラアプリの素性なのかもしれない
- SceneCaptureTypeタグは夜景モード時には"Night"が設定されたものの、試してみた撮影モード(オート, パーティー, 劇場, 花火)の全てが何故か"Standard"として記録された
(追記2ここまで)
雑感
カメラ機能を強く訴求している割には、アプリのローカライズはかなり怪しい感じがします。機能性についても、いわゆるマニュアルモードが無く、任意のシャッタースピードを設定するようなことはできなかったりと、(スマートフォンのカメラとしては標準的かもしれませんが)カメラとして評価すると限定的な機能しか実装されていません。
それならば別途カメラアプリを入れればいいだけと思ったのですが、大きな罠がありました。
RAW記録に対応したアプリをインストールしてみたものの、Lightroom mobile, Camera FV-5, Open CameraのいずれもFR7101AKではRAW記録ができません。要するにFR7101AKはAndroidのCamera2APIに対応しておらず、プリインストールのカメラアプリのみ独自機能でRAW記録を実現していると考えられます。これでは直販サイトの「RAWでの保存 ○」は嘘ではないものの誇大広告気味に感じます。
すなわち、FR7101AKで撮影画像をRAWで記録したければプリインストールのカメラアプリを使用することが強制されます。任意のシャッタースピードでスローシャッターで長時間露光することもできなければ、インターバル撮影することもできません。そういった撮影機能が必要であればサードパーティのアプリをインストールする必要がありますが、RAWでは記録できません。それならば、RAW記録非対応のAndroid端末を利用するのと何ら変わりありません。
明るい昼間に気軽にパシャパシャ撮るようなライトな使い方であれば特に困らないのかもしれませんが、私が使いたい用途には適していないことが判りました。残念。
(追記3ここから)
補足
DNGの圧縮(要PCとAdobe Lightroom Classic)
前述の通りFR7101AKで記録可能なRAWは非圧縮DNGのため、常に1画像辺り約25MB(メタデータ等により若干変動)ものストレージスペースを消費します。(microSDとSIM2は排他利用のためDSDS運用時は特に)スマートフォン内部にDNGファイルを長期間溜め込むメリットは無いため、長期保管したいDNGファイルはPC或いはNASや物理媒体等の外部ストレージに移動して保存することになると思います。
ところで、各社の一眼レフ/ミラーレスを使っているユーザーなら、画像毎にRAWファイルの容量が結構違うことがあることに気付いているかもしれませんが、それは圧縮されているからです。圧縮と言ってもJPEGのような非可逆圧縮ではなく、RAW記録時には元の情報を完全に復元できる可逆圧縮方式が多くのデジタルカメラ内部では使用されています。
FR7101AKが記録したDNGファイル形式はAdobeが開発したものですが、その仕様として圧縮も可能です。FR7101AKが非圧縮で記録するのは撮影時のレスポンス改善のためか、単に何も考えずに実装したかは定かではありませんが、外部ストレージに保存する前に圧縮しておけば記憶容量を節約できます。
DNGを可逆圧縮するためには、AndroidアプリではなくPC版のAdobe Lightroom ClassicにFR7101AKのDNGファイルをインポート後、以下のような設定でDNG形式で書き出すだけで圧縮されたDNGが得られます。一手間かかるため単に面倒ではありますが、何も難しいことはありません。
撮影画像にもよりますが、以下の例では圧縮率42.63%と6割近くも削減することができました。参考までに、単にZIPや7ZIPで圧縮した場合の圧縮率も併記しましたが、それらよりも高圧縮率を実現できています。なお、Lightroomで圧縮されたDNGをさらにZIPや7ZIPで圧縮した場合の圧縮率も併記しましたが、当然の如く殆ど変わりません。いちいち圧縮展開するのがめんどうなだけですので、圧縮済みファイルの再圧縮はしない方が良いでしょう。
Condition | FileSize [bytes] | CompressionRatio |
---|---|---|
元DNGファイル | 26,247,420 | 100.00% |
LightroomでDNGを可逆圧縮 | 11,189,798 | 42.63% |
【参考】元DNGファイルと同時記録のJPEG | 4,254,285 | 16.21% |
【参考】元DNGファイル圧縮(zip) | 14,591,253 | 55.59% |
【参考】元DNGファイル圧縮(7zip) | 11,751,258 | 44.77% |
【参考】Lightroomで可逆圧縮後のDNGファイルを圧縮(zip) | 11,101,862 | 42.30% |
【参考】Lightroomで可逆圧縮後のDNGファイルを圧縮(7zip) | 11,085,923 | 42.24% |
※なお、無償提供されているAdobe DNG Converterではデジタルカメラメーカー各社固有のRAWファイルをDNGに変換する際に圧縮オプションを指定することができますが、DNGファイルを処理することはできないようです。DNGの圧縮が可能なフリーソフトの類も無さそうですので、現状では上記のようにAdobe Lightroom Classic一択となるかと思います。
(追記3ここまで)
以上。