docomo端末とMVNO契約SIMの組み合わせでプラスメッセージが使えるか試してみた

 docomo, au, softbankが共同でLINEに対抗してプラスメッセージ(+メッセージ)を始めたという報道が最近ありました。

 「キャリアが今更LINEに対抗とか(w」みたいな感じの反応を少なからず目にしましたが、LINEに対抗とかそういう報じ方がアレいまいちなだけで、実態はRCS(Rich Communication Services)と呼ばれるグローバルで標準化されたメッセージングサービスを使ったものです。
 

RCSとは

 RCSGSM Assosication(GSMA)が標準化を行い、世界各国の通信事業者で相互運用が可能になるよう作業されてきた規格です。
 以下が、GSMAのRCSの公式サイトです。
RCS - Future Networks
 トップページのバナーには、以下のようなキャッチ―な説明や数値が次々と表示されます。

  • "RCS is replacing SMS, GLOBALLY"
  • "Revolutionising Messaging with rich, interactive content"
  • ">159M ACTIVE USERS OF RCS SERVICES"
  • "GSMA FORECAST FOR MESSAGING AS A PLATFORM $74BN BY 2021"
  • "RCS the future of messaging"

 すなわち、「RCSはグローバルでSMSを置き換えつつある」、「リッチでインタラクティブな革新的なメッセージング」、「RCSは1億5千9百万人のアクティブユーザー」、「GSMAの予測では2021年までにメッセージングは74億ドル規模のプラットフォームになる」、「RCSこそが未来のメッセージング」的な内容です。

 日本のキャリアがLINEに対抗なんてしょーもない目線で見るのではなく、世界中で導入が進んでいる新たなメッセージングの標準規格に日本の大手キャリアも対応すると理解するのが素直ではないでしょうか。
 LINEは一民間企業が独占的に提供する仕様非公開のメッセージングアプリにすぎませんが、RCSはグローバルの標準になりつつあるメッセージング規格で、良くも悪くもガラパゴスが好きな(?)日本の通信キャリアがグローバル標準に沿ってRCSを展開することは歓迎すべきことであっても、否定的にとらえる必要性は全く無いと思います。
 個人的には「プラスメッセージ」というネーミングを被せたりせず、そのままRCSとして展開すればいいのに*1とは思わなくもないですが、マーケティング上そうしているのかもしれません。
 

RCSが利用可能な国・地域

 GSMAのサイトに拠れば、既に34の国や地域で、35のキャリアがRCSサービスを提供しています。
Global Launches - Future Networks

 具体的には、アイルランド、アメリカ、アルバニア、イギリス、イタリア、インド、オーストラリア、オランダ、カナダ、ギリシャスウェーデン、スペイン、スロバキアチェコチュニジアデンマーク、ドイツ、トルコ、ニュージーランドノルウェーハンガリー、フィリピン、フランス、ポルトガル、マルタ、マレーシア、メキシコ、モロッコ、ヨルダン、ルーマニア、ロシア、中国、南アフリカ、日本でサービスインしているようです。

 キャリアはAT&T、Bell、Celcom (Axiata)、China Mobile、Cosmote (OTE)、Globe Telecom、KDDI、MTS (Sistema)、NTT DOCOMO、Orange、Orange (Jordan Telecom)、Reliance Jio (Reliance Industries)、Rogers、SFR (Altice)、Slovak Telekom (Deutsche Telekom)、SoftBank、Sprint (SoftBank)、T-Mobile (Deutsche Telekom)、Telcel (América Móvil)、Telekom (Deutsche Telekom)、Telekom Albania (OTE)、Telekom Romania (OTE)、Telenor、Telia、Telstra、Telus、Vodacom、Vodafoneとなっています。

 前述のGSMAのサイトには2018年中にサービスイン予定の国や地域も世界地図に色分けされて掲載されており、南米の各国や韓国などのアジア圏の国々もサービス開始が近いことが解ります。
 すでにサービスインしている国や地域と合わせれば、世界地図の軽く半分以上はRCSが使えるようになることが解ります。
 

 RCSの説明で前置きが長くなりましたが、以降はタイトルに記載した本題に移ります。
 

 現状ではMVNOではRCSは使えないという記事をどこかで目にしましたが、それは回線の話なのか端末の話なのかよく判りませんでした。
 私はdocomoAQUOS sense SH-01Kに楽天モバイルのデータSIM(SMS無し)を挿して利用していますので、プラスメッセージの導入を試してみます。

インストール

 GooglePlayではなく、(他のキャリアアプリと同様に)+メッセージアプリはdocomo Application Managerからインストールすることになります。
 楽天モバイルのデータSIMを挿した状態かつWiFiに接続した状態ですが、以下のスクリーンショットの通り普通にインストールボタンが押せる状態です。
 そして、実際にインストールできましたのでインストール自体は使用回線による制限は無いようです。

+メッセージの説明

 グループメッセージや写真や動画が送れて既読確認機能もあるといった辺りは、SMSには出来ないことですが、LINEと同じような感じでしょうか。
 一方で、電話番号でやり取りするため会員登録不要というのはLINEにはないメリットですが、SMSと同じとも言えます。
 こういった特徴がGSMAの表現するところの「RCSはグローバルでSMSを置き換えつつある」、「リッチでインタラクティブな革新的なメッセージング」なのでしょうね。


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+メッセージの使用権限

 主観ですが、特に違和感のある権限を要求されるようには見えません。アプリの機能から察するに必要な権限を必要なだけ要求しているように見えます。


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初回アプリ起動後

 以下のような画面遷移で初期設定を行います。

  1. [次へ]をタップ
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  2. [次へ]をタップ
    f:id:kachine:20180518070957p:plain
  3. 少し待つ
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  4. 以下の表示が現れるので、WiFiを切断する
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  5. 以下の画面に自動で変わる
    f:id:kachine:20180518071042p:plain

 このような感じで特にエラーメッセージが表示されたりはせず、通常のアプリ画面が表示されました。
 というわけで、MVNO契約でもdocomo端末なら+メッセージ使えるじゃん!と、ぬか喜びしたのですが…
 

アプリを触ってみる

 連絡先アイコンを押してみると、(連絡先の読み取り権限を与えているので当然ですが)電話帳に登録されている人々が列挙されます。
 が、誰一人として+メッセージが利用可能な事を示すアイコンが表示されません。

 おかしいなと思ってメニュー内をいろいろ触っていたところ、[利用条件等]をタップすると以下の画面が表示されました。
+メッセージ利用条件等

+メッセージは現在無効のため表示できません。
設定>その他から「+メッセージサービスを利用」をオンにしてください。

 何故か無効だと表示されています。
 とりあえず画面の指示に従って、設定>その他を確認すると、「+メッセージサービスを利用」はオンになっています。
+メッセージ設定・その他
 

結論

 初期設定時から何もエラーメッセージは表示されませんでしたが、どうやらやはりMVNOのSIMでは、たとえdocomo端末を使っていても現状ではプラスメッセージは利用できないようです。
 (但し、先述の通り私の契約している楽天モバイルはデータSIMかつSMS無しの契約であるため、それ以外のパターンではどうなのかは解りません。)
 

考察

 GSMAのRCSの認証と認定について説明されたページには、以下の記述があります。
Accreditation and Certification - Future Networks

Operators: providing RCS services to users;
RCS client providers: producing independent software for end-user devices or embedded solutions from Original Equipment Manufacturer (OEM) supporting provisioning of RCS services in the operator’s network, or as downloadable clients for use on smartphones;
Hosted solutions: an RCS service offering based on infrastructure components, typically an IMS core and RCS service nodes, independent of any access network; and
Network API-based Products Providers (N-APIs): companies delivering products such as RCS Web thin client, RCS Network API Gateway, RCS Network APIs Application Servers and other RCS Web Solutions (gateway+client).
Test Tool Providers, companies supplying solutions to Operators for automated RCS end-to-end testing by emulation of RCS clients.

 "IMS core and RCS service nodes"という言葉が出てきたり、"RCS Network API Gateway, RCS Network APIs Application Servers"といった言葉が出てきます。
 すなわち、SMSと同様にRCSもそういう設備が必要(あるいは既存の設備に機能追加が必要)だということを意味しているのだと推測されます。

 ということは、SMS同様にRCSMVNOがキャリア(MNO)から設備を借りれる形になると使えるようになったりするのかもしれません。
 とすると、SMS有り無しと同様に、RCS有り無しで料金が異なる契約パターンも今後は登場するのかもしれません。
 今後の動向に注目したいと思います。
 

蛇足

 以下の二つのアイコン似てませんか?
Similar icons

 左側に掲載したのがカシオ計算機の「Lesson Pod+」、右側が「+メッセージ」のアイコンです。
 ホーム画面ではアイコン下のアプリ名の文字を見ないと識別できず、もはやアイコンとしての機能性が…
Casio Lesson Pod+ Icon
+Message Icon
 
 ちなみにカシオの「Lesson Pod+」は2017/2/22に公開されており、「+メッセージ」の方が後発(2018/5/9サービスイン)です。
 どちらも吹き出しとプラス記号を組み合わせたシンプルなデザインなので、構成要素を増やすなどしない限りはどうしても似通ってしまうとは思うのですが、もう少しどうにかならなかったんでしょうかね?
 



以上。

*1:だって、SMSはSMSじゃないですか。