35mm判換算28mm相当の短焦点レンズとAPS-Cサイズセンサ搭載のコンパクトカメラFUJIFILM X70が発表されました。
fujifilm.jp
28mm相当の単焦点レンズ搭載のコンパクトデジタルカメラと言えば、RICOH GR digitalシリーズが圧倒的な人気だったように思います。近年ではデジタル一眼にも使われるAPS-Cサイズの大型センサを搭載した複数社のモデルが流通していますが、この市場にFUJIFILMも参入したことになります。FUJIFILMにも単焦点レンズとAPS-Cサイズセンサを搭載したモデルとしてX100シリーズがありましたが、搭載しているレンズは35mm相当のレンズでした。35mmも28mmも大別すると「広角」に分類されますが、X70ではより広角側にシフトしたことになりますね。
2016年1月時点で各社の28mm相当の単焦点レンズとAPS-Cサイズセンサを搭載した、コンパクトカメラの主要スペックをまとめると以下の通り(同一シリーズの旧モデルは割愛)。
メーカー | Nikon | SIGMA | RICOH | FUJIFILM |
---|---|---|---|---|
モデル | Coolpix A | DP1 Quattro | GR II | X70 |
発売日 | 2013/03/21 | 2014/10/24 | 2015/07/17 | 2016/02/18(予定) |
撮像素子 | CMOS | Foveon X3 (CMOS) | CMOS | X-Trans CMOS II |
LPF | 無 | 無 | 無 | 無 |
撮像素子サイズ (単位mm) | 23.6×15.6 | 23.5×15.7 | 23.7×15.7 | 23.6×15.6 |
有効画素数 | 1616万 | 約29M | 約1620万 | 1630万 |
最大記録画素数 | 4928×3264 | 7,680×5,120 | 4928×3264 | 4896×3264 |
RAWフォーマット | NEF | X3F | DNG | RAF |
Adobe Camera Raw対応(*1) | Yes | No | Yes | - |
Lightroom Lens Profile対応(*2) | Yes | Yes (JPEGのみ) | No | - |
レンズブランド | NIKKOR | SIGMA LENS | GR LENS | FUJINON |
開放F値 | F2.8 | F2.8 | F2.8 | F2.8 |
バッテリ寿命 (CIPA基準) | 約230枚 | 約200枚 | 約320枚 | 約330枚 |
寸法 (単位mm) | 約111.0×64.3×40.3(突起部除く) | 161.4×67×87.1 | 約117.0×62.8×34.7(操作部材、突起部を除く) | 112.5×64.4×44.4(奥行き最薄部25.9mm) |
質量 | 約299g(バッテリー、SDメモリーカード含む) | 425g(電池、カード除く) | 約251g(電池、SDメモリーカード含む) | 約340g(付属バッテリー、メモリーカード含む) |
(*1)X70は製品発表直後でもあり、本記事の記載時点ではAdobeの対応リストには含まれていないが、これまでのXシリーズの傾向からすると遠くない将来にサポートされることが期待できそう。一方、dp1 Quattroは初期型FOVEONセンサ搭載モデルは対応しているのだが、残念ながらMerrillシリーズすら対応される気配がなく、Quattroの対応もあまり期待できないと想定される。
Cameras supported by Adobe Camera Raw
なお、完全に主観となるがLightroomは通常のベイヤーセンサの画像を現像する分には優秀なのだが、X-Trans CMOSの現像はあまり得意ではないように思う。私の力量ではX-Trans CMOS機はカメラ内JPEGより優れた発色を得ることが難しいことが多い。
(*2)X70は製品発表直後でもあり、本記事の記載時点ではAdobeの対応リストには含まれていない。過去X100シリーズは対応されたが、X10/20/30シリーズは対応されておらず、X70がどうなるかは不透明。
一方、GR IIはGR(初代)も対応されておらず、対応する気がなさそうに見える(PENTAXブランドを除くRICOHレンズはGXRシリーズ含め一切対応されていない)。
Work with lens profiles in Adobe Photoshop, Lightroom, and Camera Raw
補足
本記事を読んでくださる方には周知の事実かもしれないが、詳しくない方は多少混乱するかもしれないため、念のため以下補足。
表記揺れではなく、XシリーズコンパクトではX100のみFinePixブランド。X100S、X100T、X10、X20、X30、XF1、XQ1、XQ2も単にFUJIFILM X*という名称。普及型コンパクトデジタルカメラのFinePixとXシリーズとでブランディング上の差別化を図ったと思われる。
- GRとGR digitalは別物。
こちらも表記揺れではない。過去に登場したGR digital、GR digital II、GR digital III、GR digital IVはそれぞれ1/1.8、1/1.75、1/1.7、1/1.7型のCCDセンサー搭載モデル。モデル名に"digital"の付かないGR、GR IIがAPS-CサイズCMOSセンサー搭載。"digital"はモデル名から外れたが、もちろんデジタルカメラである(GR digitalシリーズ以前のGR1、GR1s、GR1v、GR21はフィルムカメラである)。
- 世間一般的な感覚ではいずれもコンパクトではない。
上表にまとめたモデルはいずれもマーケット的にはコンパクトカメラと分類され、高級コンパクトやハイエンドコンパクトなどとも呼ばれる。が、特に写真やカメラに拘りのない人々の一般的な感覚ではデカイと思われる可能性が高い。一眼カメラに匹敵あるいは凌駕するような画質なのに、一眼カメラよりコンパクトという感じのネーミングであるため、レンズ固定式高画質カメラとでも呼んだ方が万人に対し誤解は少ない気がする。
駄文
私はCoolpixAとGR(初代)を使用しているのですが、主観では以下のような特徴があるように感じます(RAW撮影後、Lightroomで現像する使い方しかしてないため、カメラ内JPEGについては不明)。
- 両機ともほぼ同一のSONY製センサを搭載していると考えられている故に、似たような画像が得られそうですがそうでもないです。
- (完全に主観ですが)CoolpixAの方が好みの発色をすることが多い。特に夕空などのグラデーションが素晴らしいと感じます。
- GRの方が周辺光量落ちが少なく優秀。というか、絞り開放側でのCoolpixAが激しすぎると感じます(とは言えLens Profileで素直に補正可能)。
- CoolpixAはCoolpixブランドでこそあるが、同時期のDシリーズ一眼レフに近い操作メニュー。動作レスポンスも同時期のハイエンド寄りのCoolpix P330とは良い意味で全然違う。
- CoolpixAはオプションのGPSユニットでジオタグ書き込みが可能だがGRには類似オプションはない(GR IIでWIFIが搭載されたが、CanonやPanasonicのようにスマートフォンで取得したGPS情報をWIFI経由でカメラ側に転送する機能は無い)。
- GRはGR digitalシリーズからバッテリの流用が可能。CoolpixAはNikon1 J1、J2、J3とバッテリの共有が可能。
- フォーマットが違うので当然といえば当然であるが、Nikon1シリーズで28mm相当となる単焦点レンズ1Nikkor 10mm F2.8をNikon1 J1、J2、J3装着した場合より、CoolpixA及びGRの方が優れた描写をするように感じる。
GR digitalシリーズ時代からのGR愛用者なのですが、CoolpixAの方が私の好みにフィットしてGRの出番の方が少なくなっています。いずれかのモデルが顕著に劣る訳でもないため、気に入った製品を使うのがいいと思います。
以上。