SONYの2015Q3業績を読む

本投稿は金融商品等の投資勧誘を目的とするものではありませんし、投資判断の根拠として依拠すべき情報でもありません。


 1月末にSONYの2015年度第3四半期(2015/10~2015/12)の業績発表文が公開されました。私は経済アナリストではないので、興味のある個所だけ読んでみようと思います。なお、本投稿中の引用箇所は、下記の「連結業績のお知らせ」PDFより引用しています。
Sony Japan | 業績発表文
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/library/fr/15q3_sony.pdf



為替

 「連結業績のお知らせ」によると、当該四半期は1ドル120円前後、1ユーロ129円前後の想定だったようです。が、実際にはマーケットでドル円は118.059~123.719の範囲で変動し、ユーロ円は129.667~136.958で変動しました。

業績

 「連結業績のお知らせ」よりハード系分野の業績を引用する。

分野 売上高 営業利益 売上高増減率(2015Q2比) 営業利益増減率(2015Q2比)
モバイル・コミュニケーション 3,845億円 241億円 -14.7% +133.2%
ゲーム&ネットワークサービス 5,871億円 402億円 +10.5% +45.5%
イメージング・プロダクツ&ソリューション 1,919億円 237億円 -5.0% +20.5%
ホームエンタテインメント&サウンド 4,020億円 312億円 -4.3% +19.8%
デバイス 2,499億円 -117億円 -12.6% -

ハード系以外の分野は個人的に関心が無いので割愛。もちろん、引用元には全分野掲載されています。

駄文

 上記数値はSONYの公式発表及び、マーケットレートであり単なるファクトでありますが、ここから先は著者主観が多分に含まれますのでご注意ください。なお業績を引用したハード系の各分野は、モバイル・コミュニケーションがXperia、ゲーム&ネットワークサービスがPlayStation、イメージング・プロダクツ&ソリューションがα・CyberShot・Handycam、ホームエンタテインメント&サウンドがWalkmanBRAVIA辺りが代表的な製品で、デバイス分野はイメージセンサやバッテリを想像すると解りやすいと思います。

 まず、為替を正確に予測することは不可能ですが、ユーロ相場の読み違えは大きかったのではないでしょうか。結果論ではありますがユーロ建て取引が多ければ、期首予想にはない利益計上が期待できそうに見えます。ですが、為替の悪影響としてモバイル・コミュニケーション分野188億円、ゲーム&ネットワークサービス分野192億円、イメージング・プロダクツ&ソリューション分野23億円、ホームエンタテインメント&サウンド分野149億円と記されており、デバイス分野のみ為替の好影響として31億円と記されています。デバイス分野だけユーロ建て決済が多く、最終製品はドル建てないしは円建て決済が多かったのでしょうかね?

 次に、PS4が好調という趣旨の記事をニュースサイトで最近見かけましたが、他分野と異なり売上高・営業利益共に増加したというファクトに基づいているのでしょう(私個人はゲーマーではないのでよく解りませんが)。なお、ゲーム以外のモバイル・コミュニケーション、イメージング・プロダクツ&ソリューション、ホームエンタテイメント&サウンドの各分野では売上高が落ち込んでいるものの、利益は増えています。ここから察するに、普通に考えれば製品原価を抑え込むとか販管費を減らすといった活動があったと想像されます。或いはモデルチェンジのサイクルを長くするなどして、製品辺りの研究開発費を抑えつつ利益回収サイクルを長くしようと試みた結果、相対的に商品力が低下し売上高は落ち込んでいるのではないかとか、穿った見方もできるかもしれません。最近のSONY製品を見る限りではそんなことも無さそうですけど。とは言え、APS-Cのαはモデルチェンジが遅くなってるような気もするし、旧モデルとなったα5000がNEX-5シリーズの時より値崩れが緩やかな気もします。単にα4桁シリーズよりもα7系に注力しているということなのかもしれませんが(それはそれで、ハイエンド寄りにシフトすることで製品単価の向上を狙っているとも考えられそうです)。

 また、意外なのがイメージセンサの好調ぶりが頻繁に伝えられていたはずのデバイス分野で、営業利益が大きくマイナスに落ち込んでいることです。「連結業績のお知らせ」から引用すると、

当四半期において、モバイル機器向けの需要減少の影響を受けたイメージセンサーの大幅な減収や、電池事業の大幅な減収などにより、分野全体で減収となりました。一方で、当初の想定を下回るもののカメラモジュールの拡大があったことや、為替の影響といった売上高増加の要因もありました。なお、外部顧客に対する売上高は、前年同期比 7.5%減少しました。

 ということで、どうやらスマートフォンの需要減が直撃しているようです。先進国ではみんな持ってるし、新興国でもかなりの台数普及しているようですからね。また、新興メーカーでもSONYセンサー搭載を明言しているモデルは、ハイエンド寄りがほとんどであり、数量を追うには厳しい状況かもしれませんね。

大幅な損益悪化は、306億円の長期性資産の減損を含む電池事業の悪化や、イメージセンサーやカメラモジュールの減価償却費及び研究開発費の増加、ならびにイメージセンサーの減収の影響などによるものです。電池事業においては、競合他社との競争激化といった要因を踏まえ当四半期において減損判定を行った結果、長期性資産の計上金額の全額を回収する十分な将来キャッシュ・フローが得られないと判断したため、減損を計上しました。

 とも記されており、電池事業の-306億円が無ければデバイス分野は営業利益を計上できた計算になるため、イメージセンサそのものは相変わらず稼ぎ頭として貢献できているようですね。とは言え、イメージセンサも減収と書かれており、世界的なデジタルカメラの販売台数減に伴う需要減なども影響しているのでしょう。その埋め合わせとして中長期的に数量を稼ぐには、自動ブレーキ・自動運転などに使われる自動車組み込み向けを本格的に狙っていくことになるのでしょう。2013年実績で世界で8500万台以上の自動車(四輪)が販売されていますし、2014年にはトヨタ自動車単独の世界販売台数が1000万台越えなどとも報じられています。現時点では組み込み向けカメラを搭載した車両比率は低くとも、将来的にはその比率が上昇することは期待できるはずです。それまでの繋ぎとして、グループ内でドライブレコーダーでも作ってみたらいいんじゃないですかね。損保会社もグループ内にあるのだし、割安な保険料と引き換えに自社製ドライブレコーダー搭載を強制するなどで、数量は捌けそうな気がしますけど。




以上。