カメラのレンズ仕様を表す項目の一つに焦点距離がありますが、「35mm判換算焦点距離」というのもよく見かけると思います。同じ(実)焦点距離のレンズでも、組み合わせるイメージセンサの大きさが異なれば写る範囲も異なるため、イメージセンサの大きさによらず統一的な尺度で比較できるように換算した焦点距離を35mm判換算焦点距離と呼んでいます。
フォーサーズ・マイクロフォーサーズ機なら実焦点距離の2倍、(Canonの)APS-C機なら1.6倍、(SONY/Nikon/Pentaxの)APS-C機なら1.5倍、フルフレーム(フルサイズ)機なら当然1倍という係数は有名ですが、これらの係数が何を根拠に出てきた数値であるかご存知でしょうか。
具体的に算出しつつ、整理してみたいと思います。
イメージセンサの大きさ
前提として、各フォーマットのイメージセンサのサイズは概ね以下の通り。
Format | Width [mm] | Height [mm] |
---|---|---|
FullFrame | 36 | 24 |
APS-C | 23.5 | 15.6 |
APS-C (Canon) | 22.3 | 14.9 |
M4/3 | 17.3 | 13 |
1inch (Nikon CX) | 13.2 | 8.8 |
35mm判換算焦点距離の算出
以下に、35mmフルフレームセンサと、マイクロフォーサーズセンサを例にその幾何的関係性を示した図を示します。下部はセンサ面を真上(垂直軸)からみた図とご理解ください。
f: 実焦点距離
fequiv: 35mm判換算焦点距離
θh: フルフレーム本来の水平画角
θh': 各フォーマットで使用時の有効水平画角
width: フルフレームセンサ横幅
width': 各フォーマットのセンサ横幅
図より、
であることが判ります。また、
であることも判ります。これらは共にwidthと等しいことから、
…①
となります。
すなわち35mm版換算焦点距離を算出するための係数は、
であることが判ります。
また、
かつ、
であることから、
…②
の関係性があります。
①、②より、単純にフルフレームと各フォーマット幅の比率が係数になることが判ります。
具体的に、前掲の数値を当てはめると、
Format | Coeff(horizontal) |
---|---|
APS-C | |
APS-C (Canon) | |
M4/3 | |
1inch (Nikon CX) |
となります。良く見慣れた係数はこのように算出されています。
が、これは水平方向についての係数としては正しいですが、垂直方向についても適用できるのでしょうか?幾何的な関係性は垂直方向についても水平方向と同様ですから、をに、をに読み変えることができます。
すなわち係数は、
…②
として算出可能です。こちらも前掲の数値を当てはめると、
Format | Coeff(vertical) |
---|---|
APS-C | |
APS-C (Canon) | |
M4/3 | |
1inch (Nikon CX) |
となります。
結果的に、APS-CやNikonCXフォーマットでは水平・垂直方向どちらでも係数は変わりません。考えてみれば、フルフレームもこれらのフォーマットも同じ3:2のアスペクト比であるため幾何的に条件が変わるわけではありません。一方、アスペクト比4:3のフォーサーズ・マイクロフォーサーズでは事情が異なるわけです。
マイクロフォーサーズは換算2倍というのは水平方向については正しく実態を表せていますが、垂直方向については1.85倍というのが正しい係数になります。
以上。