WAVESと言えば主にマスタリング系のエフェクトで有名ですが、インストルメントプラグインのGrand Rhapsody Pianoが今回リリースされました。
WAVESからのプロモーションメールで知ったのですが、リリース記念価格のようで今なら29USDで購入可能なようです(2017/5/12時点)。
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WAVESの既存インストルメント
これまでにもWAVESからはインストルメントでは、いわゆるソフトウェアシンセサイザーのCodex Wavetable Synth、Element 2.0 Virtual Analog SynthやボコーダーのMorphoderに加え、各種エレピをサンプリングしたElectric 200 Piano、Electric 88 Piano、Electric Grand 80 Pianoと言ったプラグインがリリースされていました。
なお、Electric 200 PianoはWurlitzer 200を、Electric 88 PianoはFender Rhodesを、Electric Grand 80 PianoはYamaha CP-80をサンプリングしたと見られています*1。
Grand Rhapsody Pianoのサンプリング元
今回のGrand Rhapsody Pianoは電気ピアノではなく純然たるアコースティックなグランドピアノをサンプリングしているそうです。また、これまでとは異なりサンプリング元の楽器も明らかにされており、ロンドンのMetropolis Studiosに設置されたFazioli F228だそうです。
Fazioli F228
ピアノメーカーと言えば日本のYAMAHA(やKAWAI)、アメリカのSteinwayなどが有名ですが、不勉強ながら個人的にはFazioliというメーカーは知りませんでした。
調べてみるとイタリアのメーカーで1981年創業と、この類の製造業にしては若い会社のようです。
日本代理店によるF228の製品ページでは「グランドピアノ スタンダードモデル」と表記され、以下のように紹介されています。
音色も構造的特徴も、コンサートグランドであるF278と非常によく似ている。
中規模のコンサートホールにすばらしく適した、深く力強い低音域を持っている。
豊かで柔らかな音色で、室内楽に用いられるのにも理想的な楽器である。
FAZIOLI PIANOFORTI | Standard Model | F228
WAVESの紹介文によれば、Metropolis StudiosのFazioli F228はグラミー賞を受賞したAdeleの楽曲Helloなどのヒット曲でも使用された個体のようです。
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Grand Rhapsody Pianoの特徴
8組のマイク*2(B&K 4007, Shure SM57, Neumann U87, Royer R121, SE RN17, Neumann KM84, Coles 4038, AKG C451)で収録したサンプルから任意の3つをミックスして出音を調整できるようです。8機種のマイクをそれぞれ2本使用したステレオペアで収録したサンプルを最大3つ混ぜ、左右2chのステレオ音声として得られるという意味で理解すれば良さそうです。
なお、サンプリングレートは96kHzと明示されていますが、量子化ビット数については明記されていないようです。サンプルライブラリはHD(High Definition)とSD(Standard Definition)の2種類*3が提供されており、HDが14.1GB、SDが6.2GBと約2.3倍の差異があります。HDが24bitでSDが16bitなだけであれば1.5倍の差異にしかなりませんので、SDはサンプリングレートも控えめになっているのではないかと想像されます。
また、UserGuideによれば当然の如くマルチサンプルされていることが明示されていますが、何音毎にサンプリングしているのかは不明です。
Waves Grand Rhapsody Piano is powered by the Waves Sampler Engine (WSE), a state-of-the-art multi-sample engine designed to deliver solid, high-quality performance.
Grand Rhapsody Piano User Guide(PDF)
そのほか、ビルトインエフェクトとしてはEQ、コンプ、リミッタ、ディレイ、リバーブが利用可能なようです。
デモ音源
下記ページからGrand Rhapsody Pianoのオーディオデモが聴けるようになっています。
Grand Rhapsody Piano – Virtual Instrument | Waves
以下は主観になりますがデモを聞いた限りでは、
- 元々F228を知らないのでこの音がどれだけ原音に忠実なのかは判断できない
- きちんとピアノらしい音がする
- 主に高音域は素晴らしくピアノらしい音
- (適当にPCの内蔵スピーカーで聴いたのが悪いのかもしれませんが)低音部などでグランドピアノとしては少し嘘くさいというかM1ピアノ*4のようなテイストを感じることも
といった感じを受けました。
個人的にはピアノ音源にそれほど飢えていないことと、ライブラリの巨大さ故にPCのSSDが枯渇するのが目に見えているのでまだ購入していないのですが、数万円するような高価なピアノ音源でもないですし、気に入ったアコースティックピアノの音源が無いなら現在の価格であればとりあえず入手しておいて損することは無いのではないでしょうか。
(2017/06/08追記ここから)
WAVES製品の日本代理店のMedia Integrationでも既に取り扱いが始まっているようです。一般に国内代理店を挟むと結構な割高な価格設定となることが多いですが、現時点では「特価¥3,180 (通常価格¥8,964)」と良心的な価格設定となっています。
Grand Rhapsody Piano | Media Integration, Inc.
当初この投稿を記載した5/13頃の為替レートは1ドル113円台でしたが、6/8時点では109~110円前後と円高方向に推移しています。日本代理店を通さずWAVESのサイトでも29USDでまだ購入可能ですが、クレジットカードやPayPalの外貨建て決済時のレートを考慮すると、国内代理店Media Integrationの3180円より微妙に高くなる可能性が大きいでしょう。
今後の為替レート次第ではありますが、更なる円高方向に振れない限りは国内代理店経由で購入しておくのが良さそうだと思います。
(2017/06/08追記ここまで)
以上。