ZOZOTOWNの送料自由とデータの見せ方とか。

 アパレル系通販のZOZOTOWNで実施されている「送料自由」の施策の利用状況が公開されました。
 一般的な通販では送料は事業者側が決定しますが、この「送料自由」では購入者が自由に送料を設定できる点が斬新です。ZOZOTOWNの顧客はどのような送料を自主的に支払ったのでしょうか。
ZOZOTOWN、「送料自由」の利用状況を公開 平均送料は96円、送料0円が設定された注文の割合は43% - 株式会社スタートトゥデイ
 

 上記リリースのタイトルにもありますが、平均で96円、43%の注文は送料0円が設定されたそうです。

 都道府県別平均も公開されており、それを基に一部サイトでは関西人はセコイといったニュアンスで伝えているように感じられます。
ZOZOTOWNの送料、「自由化」でどうなった? “ケチった”のはあの県のユーザー - ITmedia NEWS
 

本当にセコイのは誰なのか?

 このデータで本当に関西人はセコイと判断できるのでしょうか?

 同データをグラフにプロットすると以下のようになります。
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 やっぱり関西5件(奈良、大阪、兵庫、滋賀、京都)がセコイと思われるかもしれませんし、それよりも、福島、岩手、青森、長野、島根辺りが突出して多く送料を支払っている方が目立つかもしれません。

 では、以下のグラフではどうでしょうか。
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 こちらのグラフでは、各都道府県で大差ないようにも見えませんか。

 単なる相加平均だけではデータ特性が適切に表現されているのか判りません。送料1万円の注文が1回、送料0円の注文が99回なら平均送料は100円ですし、送料500円の注文が100回、送料0円の注文が400回でも平均送料は100円です。公開されたのは全国平均と都道府県別平均だけで、全国の中央値も都道府県別の中央値も公開されていません。また、母数となる注文数も全く判りませんし、ユーザー別注文回数も判りませんし、購入金額も判りません。

 そもそも、送料0円を許容したシステムである以上、既に実質的な送料は商品価格に転嫁されていると考えることもできます。そう考える顧客はケチな訳ではなく、二重に送料を支払う必要が無いと合理的に考え0円を設定するかもしれません。
 或いは、一般的な宅配便でも高額な送料となる沖縄県(平均103.22円)や各都道府県の離島の顧客が100円程度しか送料を支払わない方が、ケチだと見ることもできるかもしれません。離島でなくても、物流センターから遠い地域の送料は相対的に高くなるはずですので、潜在的にケチな県があるのかもしれません。

 ですが、前述の通り単なる相加平均だけでは何とも言えないというのが正しいはずです。

 ところで、ZOZOTOWNの送料のデフォルト値は400円となっているようです。そう考えると、どの県も400円を大きく下回っているわけで、日本人の国民性としてケチなのだと見ることもできるわけです。
 

雑感

 宅配便業界が厳しい状況にあることは問題ですが、その解決には適正な料金を宅配便事業者に支払うことが必要です。それを消費者に送料として見える形で負担させるのか、商品価格に転嫁して消費者に負担させるのかは各事業者が決めることです。
 ZOZOの取り組みは面白いですが、面白い以上のものではなく現状の打開につながるものでは無さそうです。前掲のITmediaの記事に以下の記述がありますので、たとえユーザがいつも荷物を運んでくれる宅配便の人を気遣って多く送料を支払っても、ZOZOの懐に入るようですので宅配便業界の状況改善には役立たなさそうです。

送料の実質額を上回った分は「今後の物流サービス拡充のための軍資金として有効利用する」としている。

 



以上。