LUMIX CM10を比較してみる
先月Android搭載LUMIX CM10が発表されました。限定2000台生産された同シリーズのCM1と外観デザインやカメラ性能は事実上同一で、テストマーケティングを経て量産化したような感じに見えます。プレスリリースによるとCM10は月産500台とのことで、4カ月以上生産し続けないとCM1より希少なモデルになりそうですね。
news.panasonic.com
特徴
CM1同様に目立つ特徴は以下のような感じです。
コンパクトデジタルカメラとしては意欲的な大型1インチセンサと大口径広角単焦点レンズを搭載し、性能重視のモデルと言えそうです。が、Android搭載でSIMが刺さることから、スマートフォンに近いデバイスとして評価されていることも多いように見受けられます。ハイエンド寄りのカメラ機能を訴求するスマートフォンでは、イメージセンサこそ小さいものの単焦点でF2.0付近のモデルも多く、カメラに詳しくない人々から見ると何がすごいのか解りにくいのかもしれません。カメラ機能を訴求しているのにズームレンズではないといった指摘も、同じような層から上がっているのかもしれません。
パナソニック ルミックス コミュニケーションカメラ F2.8 LEICA DC ELMARITレンズ AndroidTM5.0搭載 DMC-CM10-S
- 出版社/メーカー: パナソニック
- 発売日: 2016/02/25
- メディア: Camera
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vs CM1
WEBサイトを見比べて見つかる先代CM1とCM10の差異は、(見落としてなければ)これだけ。
項目 | CM1 | CM10 |
---|---|---|
出荷時OS | Android 4.4 (KitKat)※ | (Lollipop) |
通話機能 | 有 | 無 |
※Android 5.0へのUpdateが提供されているため、Update後は同等
DMC-CM1ソフトウェアアップデートプログラム | ソフトウェアダウンロード一覧 | デジタルカメラ LUMIX(ルミックス) | お客様サポート | Panasonic
"コミュニケーションデジタルカメラ"を名乗っているにもかかわらず、音声通話機能がCM10では削除されています。これに関してプレスリリースには以下の記載があります。
近年、生活者のコミュニケーションスタイルが大きく変化しており、これまでの通話、メール(文章)主体から、写真や動画を中心としたコミュニケーションにシフトしています。本製品は、昨年に台数限定発売したDMC-CM1(※3)から通話機能を省き、データ通信専用SIM対応にしたものです。
ということで、コミュニケーションが通話やメールより、写真や動画にシフトしてるユーザに向けた製品であるようです。
この辺りに誤解があるユーザが購入してしまうと、残念な端末という評価をされてしまいそうな気がします。いずれにせよ音声通話機能が無いため、ガラケーやスマートフォンから乗り換える端末ではなく、併用することを想定しているのでしょう。
スマートフォンとカメラの2台持ち状態になるなら、CM10ではなくても普通のデジタルカメラ+WiFi機能のあるメモリカードの組み合わせや、WiFi機能のあるデジタルカメラをスマートフォンと共に持ち歩けばいいではないかという話にもなりそうです。撮影後の画像をアプリで加工する目的であれば、CM10である絶対的な必要性はありません。ですが、Androidアプリから大口径単焦点レンズを搭載した1インチセンサのカメラを直接扱える事は、CM10のメリットと言えるのではないでしょうか。特殊なAPI無しに、このカメラをどこまで制御できるのかは良く解りませんが。
vs Nikon Coolpix S800c,S810c / Samsung Galaxy Camera GC100,GC110,GC200
Android搭載カメラであるということから、同様にAndoroidを搭載したカメラと比べてみます。なお、日本市場に投入されたのはNikon S800cのみでNikon S810c、Samsung GC100,110,200は海外市場向けの製品であるため割愛(それらを、一言で表現するなら「よくあるズームレンズ搭載の所謂コンパクトデジタルカメラにAndroidが載ったモデル」といった感じで、新しいモデルほどAndroidのVersionも当然新しい)。
項目 | S800c | CM10 |
---|---|---|
OS | Android 2.3.3 | Android 5.0 |
イメージセンサ | 1/2.3型CMOS | 1.0型高感度MOS |
総画素 | 1679万 | 2090万 |
有効画素 | 1602万 | 2010万 |
ISO | 125~1600(オート撮影モード時および連写モード時にISO3200設定可能) | 125~12800(拡張ISO100,25600) |
レンズ銘 | NIKKOR | LEICA DC ELMARIT |
光学ズーム | 10倍 | 無し |
開放F値 | F3.2-5.8 | F2.8 |
35mm判換算焦点距離 | 25~250mm | 28mm |
RAW記録 | 不可 | 可 |
動画最大解像度(フレームレート) | 1920x1080(30fps) | 3840x2160(15fps) |
動画最大フレームレート(解像度) | 120fps(640x480) | 30fps(1920x1080) |
Samsungはそもそも国内デジタルカメラ市場に参入していないので新モデルがリリースされないのは当然なのですが、Nikonが投入を見送ったことから察するに期待したほど売れなかったのではないでしょうか。撮影後、速やかにネットにアップロードしたいと思いつつも、絶対的なカメラ性能を重視するならば好みのデジタルカメラにWiFi搭載メモリカードを挿入するとか、WiFi搭載デジタルカメラを使うでしょうし、あまり詳しくない人は普通にiPhoneやXperia買うでしょうし。
vs Sony RX100シリーズ、Nikon1 Jシリーズ、Samsung NX mini
1インチイメージセンサ搭載小型カメラということで、同様に1インチセンサの小型カメラと比べてみようと思う。なお、RX100シリーズはレンズ一体型カメラであるが、Nikon1 Jシリーズ及びNX miniはレンズ交換式のミラーレスカメラであるため、レンズについての比較は割愛。
項目 | RX100M4 | Nikon1 J5 | NX mini | CM10 |
---|---|---|---|---|
イメージセンサ | 1.0型 Exmor RS CMOS | 13.2×8.8mmサイズCMOS | 13.2x8.8mm BSI CMOS | 1.0型高感度MOS |
総画素 | 約2100万 | - | 約20.9M | 2090万 |
有効画素 | 約2010万 | 2081万 | 約20.5M | 2010万 |
ISO | 125~12800(拡張ISO80,100) | 160~12800 | 160~12800(拡張ISO100,25600) | 125~12800(拡張ISO100,25600) |
サイズ(mm) | 101.6x58.1x41.0 | 約98.3×59.7×31.5 | 110.4x61.9x22.5 | 約135.4x68.0x21.1(ボディ部約15.2mm) |
本体質量 | 約271g | 約231g | 158g | 約203g |
※RX100M4、CM10はレンズ込みのサイズ・質量であることを考慮されたい。
国内で販売されていないNX miniを突っ込んでみたのは単純に私が使ってるから。2014年春にリリースされて以来、新モデルが発表されず事実上終わった製品なんじゃないかという説もありますが、素晴らしく小型軽量。それよりもCM10は薄いので、まさにスマートフォンに近い感じなのでしょう。NX miniには24mm相当の単焦点レンズがありますが、レンズキャップが取り付けできず、フィルターネジも切られておらずフードも取り付けできないという小型化に尖り過ぎて取り回しに難のある仕様。残念なことにCM10もレンズキャップもカバーも無いらしく、レンズを保護可能なケースに入れて携帯するしかないようです。ただ、NX miniとは異なり37mmのネジが切られており、フードは取り付け可能らしいです。そこら辺考えると、定番のRX100シリーズは持ち運びに面倒が無くて良いですね、ちょっと高いですけど。Nikon1 Jシリーズはサイズ・重量だけ考えるとこの中では最も巨大なカメラになってしまうし、同じくミラーレスでもより大きなイメージセンサを搭載したマイクロフォーサーズのLumix GMの方が小型であり、小型を最優先するなら選ぶ理由はあまりないかと。でも、比較的お手頃価格なので手が出しやすいとも思います。私はNikon1 J3も使ってますが、高感度や長時間露光はいまいち。そこら辺は、SONY製センサ搭載機の方が優れているでしょう。Panasonic CM10のイメージセンサの製造元は公開されていませんが、同社のFZ1000は同じく有効2010万画素1インチセンサ搭載機ですが、SONY製センサと推測されているようです。
終わりに
Android搭載カメラが欲しいのか、WiFiで写真転送できればいいだけなのか、1インチセンサ搭載小型カメラが欲しいのか、何を期待しているのかによっては、他のベターな選択肢も候補に挙がるでしょう。逆に、大口径広角単焦点レンズに1インチセンサの組み合わせのAndroid搭載機が欲しい場合には(CM1を除き)唯一無二の存在であり選択の余地はありません。
が、その需要がどれだけあるのかは疑問です。メーカー側もその辺を懸念して月産500台としているのではないでしょうか。Panasonicほどの大企業が僅か月産500台規模で製品化する狙いは何なのか。なぜCM1で打ち切らず、瓜二つの製品を型番変更して投入してきたのか。その裏を想像するのも面白いかもしれません。店頭価格は10万円弱と想定されているようであり、狙い通りその価格で500台売れるなら月5000万円近い売上になる計算です。単価の低いコンパクトデジタルカメラを大量に売り捌くよりは効率良く稼げるかもしれない。CM1用に起こした生産ラインや金型等の投資回収ラインを超えるまで細々と売りたい。他社から購入するキーデバイスは他製品と共通だから少量でも問題ない。国内携帯電話事業撤退に伴う余剰リソースを活用するためにAndroidを使いたいし、あわよくば他社と差別化できる。といったような思惑かもしれません。さらにPanasonic系のMVNO回線の拡販に繋げたい、などなど。いずれも単なる憶測にすぎませんが。
一般層への訴求力を考えると、単焦点レンズを搭載するよりズームレンズを搭載した方が、一般的なスマートフォンとの差別化は図れるのではないでしょうか。もちろん、それだけなら過去の他社製Android搭載カメラと同様であり、台数が稼げるとも思えません。安価なコンパクトデジタルカメラに搭載されるようなズームレンズではなく、RX100シリーズのような小型で優秀なズームレンズを搭載することで、カメラに詳しいユーザ層にまで幅広く訴求でき、ターゲットユーザが格段に広がると思うのですが。それがRX100シリーズ+α程度の売価で実現できればヒット製品になると思いますけど、次回作はあるのでしょうかね。
以上。