1インチセンサ&AF搭載アクションカムRX0が発表された

 SONYよりDSC-RX0が海外発表されました。
 報じているメディアにより、「アクションカム」「防水・耐衝撃カメラ」「超小型カメラ」といった具合に多様な枕詞がRX0に付与されていますが、本投稿ではアクションカムと表記します。
 なお、SONY自体は以下のように表現しています。

RX0 1.0-type sensor ultra-compact camera with waterproof and shockproof design

RX0 1.0-type sensor super compact camera with waterproof and shockproof design | DSC-RX0 | Sony US

 普通に日本語訳すれば「防水耐衝撃性を備えた1インチセンサ搭載超小型カメラ」といった内容ですので、コンパクトにまとめるなら1インチセンサ搭載アクションカムと表現してもあまり問題なさそうです。
 ですが、敢えてSONYはアクションカムやスポーツカムと言ったワーディングは避けているようにも感じられます。

 アクションカムはGoProが開拓したジャンルですが、安価な中華系メーカー製品に押されるなど、GoPro自身が販売不振に喘いでいることが報じられています。
 SONYHDR-ASシリーズ(FullHD対応モデル)及びFDR-Xシリーズ(4K対応モデル)のアクションカムを投入していますが、今回のRX0はDSC-RX0という型番からも明らかなように、アクションカムの製品体系とは異なっています。
 SONYの一眼カメラαシリーズは"ILCE-"で始まる型番ですが、レンズ一体型のコンパクトカメラは"DSC-"で始まる型番となっています。中でもRXシリーズはプレミアムなラインアップとなっており、ベストセラーとなっているRX100シリーズなどは有名でしょう。そこに新たにRX0が加わった形となります。

 これらのことから、メーカー的には既存のアクションカムとは異次元の高品質なカメラとして訴求したいのであろうことが伺えます。
 以下に、個人的な注目点を記載します。
 

1インチセンサ搭載

 1インチのイメージセンサ搭載ということで、従来のアクションカムはもちろん、一般的な家庭用ビデオカメラ、スマートフォンと比して、センサ面積が大きくなることにより高画質化が期待できます。
 単に1インチセンサということであればNikon1の旧シリーズに搭載されていた旧Aptina(現ON Semiconductor)製センサなどもありましたが、SONY製センサの方が画質に定評があることは有名でしょう。
 ここで言う画質とは、ダイナミックレンジだったり、低ノイズだったりと、センサ面積の大きさに由来する特徴でもありますが、SONYが他社より秀でたイメージセンサ製造技術を多く有しているため、最終製品での差が出てくるのでしょう。
 
 ただ、静止画のカメラであれば、センササイズが大きくなることは手放しで歓迎できますが、動画の場合は一長一短があるように思います。
 センササイズの拡大により被写界深度が浅くなるため、フォーカスが合う範囲が狭くなるためです。すなわち、映像中で被写体がカメラから大きく離れたり、カメラに大きく接近するような映像ではピントを外す可能性があります。
 この点については、従来のアクションカムや、家庭用ビデオカメラ、スマートフォン等の極小さなイメージセンサでは目立ちにくいわけですので、ステップアップとしてRX0を購入したような初心者層などからRX0はピントが合わない・使えないなどといった悪評が立ちそうな気もします。
 
 搭載されるセンサはアスペクト比3:2のExmor RSブランドで、総画素数約21MP、有効画素数15.3MPとされています。Exmor RSなので、裏面照射型かつ積層型です。何を積層しているかと言えば、

Stacked DRAM memory chip [1] structure allows for unconventionally fast readout that enables superb performance in many respects including super slow motion.

 とあるように、DRAM(メモリ)をイメージセンサに積層しており、これにより高速読み出しを実現しています。1/32000秒の超高速電子シャッターや、最高1000fpsのハイスピード撮影といった特徴はこのセンサに由来するもので、普及型の安価なイメージセンサでは実現できません。この辺がRX0をRXシリーズたらしめている一因と言えるでしょう。
 

AF搭載

 アクションカムの本家GoPro製品を含め、各社のアクションカム系のカメラにはAF機構は無く、(どこにでもピントが合っているように見える)パンフォーカスのみでした。
 RX0は(私の知る限り)初めての、AF機構搭載アクションカムとなり、仕様には以下の通り記載されています。

FOCUS MODE
Single-shot AF;Preset Focus;Manual Focus
FOCUS AREA
Wide (25 points(contrast-detection AF));Center;Flexible Spot (S/M/L);Expanded Flexible Spot
FOCUS TYPE
Contrast-detection AF

DSC-RX0 Specifications | Cameras | Sony US

 記載の通りAFはシングルショットのみのようですので、カメラと被写体間の距離が変動しても追従しません。
 故に、ある程度遠距離で被写体が動く分には問題ないと思いますが、カメラの至近距離で被写体が奥行方向(前後方向)に動くようなシーンを撮ろうと思っているのならば、購入前に店頭などで確認した方が良さそうです。
 

レンズ

 前述の事情も考慮してか、多くのアクションカムのレンズはF2.8辺りの口径比が多いなか、RX0はだいぶ口径が小さなF4.0固定となっています。
 1インチセンサに対応した高品質のレンズをアクションカムに載せられるサイズに小型化するにはF4程度の口径比とせざるを得なかったという事情と、被写界深度を稼ぐために絞るという利害関係(?)が一致したのかもしれません。
 
 レンズはRX100シリーズなどと同様にZeissブランドで、Tessar T* 24mm*1 F4.0となっており、周辺部の歪みが少なく、コントラストとシャープネスが良好だと訴求されています。
 24mmという画角は28mm前後が多いアクションカムとしては広めですが特別珍しいものではないと思います。
 
 せっかくの高品質な1インチセンサと超広角レンズを活かして風景写真を撮りたいと思うユーザもいるかもしれませんが、絞りはF4.0で固定のため絞ることはできません。
 開放絞りがF4.0というのは小型化のため物理的に致し方ないと思いますが、絞りが固定で全く制御ができないという点はRXシリーズらしからぬ点でしょう。
 
 なお、レンズの画角は24mm相当とされていますが、アスペクト比に応じてイメージサークルに内接する四角形をクロップする都合上、撮影画像のアスペクト比に応じて実質的に変化します。静止画撮影時の各アスペクト比の有効画角は以下の通りとされています。

Aspect Ratio effective focal length
3:2 f=24mm
4:3 f=26mm
16:9 f=25.2mm
1:1 f=30.7mm

 映像撮影時の画角は明示されていないのですが、静止画の16:9の25.2mm相当或いは、もっと狭くなるでしょう。
 16:9撮影時の静止画解像度は4800x2704とされており、0.8倍すると4K解像度の3840x2160、0.4倍するとFullHD解像度の1920x1080になります。静止画と同等の25.2mmを維持するためには画質劣化を伴う非整数倍のリサンプリングが伴うことになります。
 非整数倍のリサンプリングを避けるためにはクロップ範囲を広めることになりますので、有効画角は狭くなります。
 

記録フォーマット

 静止画はJPEGだけではなく、RAWにも対応しています。
 一方、映像はXAVC S、AVCHD、MP4と家庭用ビデオカメラと同等に留まっています。
 プロユースの映像素材撮影などXAVC Sでもビットレートが低いという場合には、HDMIから非圧縮4K映像を出力できるようですので、外部レコーダを接続すれば内蔵エンコーダ起因の制約は受けずに済みます(その場合は事実上アクションカム的な運用はできませんが…)。
 いずれにせよ映像のホワイトバランスは撮影時の設定で固定されてしまいます。最近の機材では一般的なシーンではあまり変な色にはなることはほとんど無いと思いますが、光源が変化するようなシーンなどではカメラ任せでどこまで信頼できるかは試してみないと何とも言えないでしょう。
 

その他

 RX0の個別の製品ページ以外にも、以下のページが公開されています。個人的に注目したのはURLとページタイトルにRX0-seriesとある点です。RX100シリーズが無印からM5までの5世代も続いているように、RX0もシリーズ化するのではないかと予想されます。
RX0 series | Sony US

 既存のアクションカムFDR-X3000にはHandycam由来の「空間光学手振れ補正」を基にしたSONYならではの「空間光学ブレ補正」が搭載されていますが、RX0にはありません。他社製品でも見られるような電子式手ぶれ補正についてもRX0には何の記載も無いため、手振れ補正機能は何も無いようです。手振れ補正機能が必要なら外部ジンバルを使ってくれということなのでしょうけれど、RX0がシリーズ化されるのなら「空間光学ブレ補正」の搭載を後継モデルには期待したいところです。

 その他にもC-AF搭載や、絞り機構搭載など、ソフトウェア的にもメカ的にもチャレンジングな進化の余地が残されているため、今後の動向にも目が離せそうにありません。

 



以上。

*1:35mm判換算。