「2015年の歴史的カメラ」に見るセンサ供給元についての考察

 昨年末、Impress Watchに以下の記事が掲載された。

dc.watch.impress.co.jp
※タイトルでは8機種となっているが、対象のうちRX1R IIが2015年内に発売されないことが判明したため除外され、後に7機種となった。




それによると、対象は以下の7モデル。

Nikon (Coolpix P900)
Nikon デジタルカメラ COOLPIX P900 光学83倍 1605万画素 ブラック P900BK
Olympus (Air A01)
Olympus Air A01 Black (Body Only) by Olympus [並行輸入品]
Pentax (K-3II)
PENTAX デジタル一眼レフ K-3II ボディ GPS内蔵 ローパスセレクタ 最高約8.3コマ/秒 16162
Canon (EOS 5Ds)
Canon デジタル一眼レフカメラ EOS 5Ds ボディ 5060万画素 EOS5DS
Sony (Cybershot RX100IV)
SONY デジタルカメラ Cyber-shot RX100 IV 光学2.9倍 DSC-RX100M4
Sony (α7RII)
SONY ミラーレス一眼 α7R II ボディ ILCE-7RM2
Panasonic (Lumix GX8)
Panasonic ミラーレス一眼カメラ ルミックス GX8 ボディ 2030万画素 シルバー DMC-GX8-S


 RX1R IIが2015年内に発売されていればSONYが3モデルで最多となったが、RX1R IIが除外されても2モデルで最多である。選定理由については先述の記事を参照していただくと載っているのだが、個人的にはあまりピンと来ない理由が多い*1。いずれも特徴的で優れたカメラであることには異論はないが、「歴史的」は大袈裟だろうと思う製品も入ってるような感じ。


 例によってセンサ供給元を調べてみると、

メーカー モデル名 センサ供給元
Nikon P900 不明
Olympus A01 明確な情報は無いが、1600万画素Olympus機から察するにSONY製?
Pentax K-3II K-3を踏襲→SONY製(ソースは後述)
Canon EOS 5Ds 自社製(ソースは後述)
Sony RX100IV SONY
Sony α7RII SONY
Panasonic GX8 SONY製らしい(ソースは後述)

といった感じで、以前にもましてSONY無双が際立っている。

カメラメーカには搭載センサを明示してほしい

 大きな一眼から小さなスマホやアクションカムまで、SONY製イメージセンサが優れていることはもはや周知の事実なのだから、採用製品はもっとアピールすればいいのにと個人的には思うのだけれど(海外のスマホメーカーなどは、ハイエンドモデルなどでソニー製センサ採用を明示し、カメラ性能の高さをアピールしていたりする)。「新開発」とカタログに謳っても「誰が」とはもちろん書いてないし「自社開発」とも書いてない、そんな微妙なコピーより明確にSONY IMX***採用って明示してもらった方が、不毛な議論や詮索がなくていいと思うのですけどね。
 かつてPCメーカーがintel insideの表示で差別化を図っていたように、exmor inside的な表示の方がエンドユーザにも説明しやすく商品力もありそうな気もするのだけど、販売現場ではそんなことも無いのだろうか。
 カメラメーカーとしてはセンササプライヤをSONYだけに絞ってしまうと、SONYで何かあった場合に致命的なダメージを受けるリスクがあるのは解るのだけど、採用製品を明らかにするのはノーリスクでできそうなもんじゃないですかね。

SONY以外も伸びてほしい

 長期的にはSONY製イメージセンサに対抗できる性能と価格を持ち合わせたセンサメーカーが必要だとも思うけれど、国内勢では東芝SONYに設備も人員も引き渡した(東芝:プレスリリース (2015-10-28):ソニー及び東芝による半導体製造設備等の一部譲渡に関する意向確認書の締結について)ため、イメージセンサ事業を続けている大手はCanon/Panasonic/Sharp位しか残っていない(※浜松ホトニクスは特定産業向けや科学計測向けで特殊過ぎるので割愛)。海外勢ではAptina/OmniVision/Samsung辺りがイメージセンサ事業を行っている(FujifilmSIGMAのFOVEONを忘れているわけではないが、如何せんイメージセンサ単体では規模が小さすぎるし外販してなさそう)。となると、現時点ではソニーのイメージセンサに性能と価格の両面から対抗できるメーカーは無さそうなのも事実。かつてシステムLSIや液晶で超絶に進んだ事業統廃合のように、イメージセンサでも同様の動きが起きない限りは、SONY無双が続くのかしら。

進化は起きている

 ちなみにイメージセンサと言っても、写真用カメラで使うようなものだけではない。例えば自動運転やブレーキ補助、車間距離検出などのために自動車に搭載するモデルでは高解像度なんかより、ダイナミックレンジの広さが要求される。例えばトンネル出入口を想定してみると解りやすいけれど、普通の写真用カメラのセンサではトンネル内外を同時に写すことは出来ない(白飛びまたは黒潰れが発生する)。「実はトンネル外では渋滞してたのだけど、トンネル内から見ると外は白飛びしていて渋滞車両が認識できなかったので追突した」というのでは話にならないので。実車両では画像認識だけではなく、レーダーを組み合わせるとかいろいろな工夫がなされているけれど、使っているイメージセンサのダイナミックレンジは写真用のそれより広い。といった感じで、写真用に使われるイメージセンサとは異なる進化が同じ時間軸で並行して起きている。こういった特徴が写真用にフィードバックされると、また面白い変化が起きるのではないかという気もするけれど、例示した車載用イメージセンサはSONYPanasonicSharpも手掛けていると見かけた記憶があるので、SONY無双を切り崩すのはやはり容易ではなさそうだ。

振り返り

 恐らく2008年のことだけど、「カメラはソニー」というCMを打ってきたときは、正直に言って「は?何言ってんだこいつ」と思った記憶がある。いくら薄くてデザイン性に優れていてもCybershotがカメラの代名詞だとは思えなかった。それから7~8年で今のような状態になっているのだから、率直に言ってSONYは凄い。今後7~8年であの頃のSONYから今のSONYに成長したようなメーカーが現れるのか、或いはSONYの快進撃が続くのか、解らないけど楽しみであることは間違いない。
 まずは今年2016年に出てくるであろう、各社の凄い新製品に期待したい。



ソース集
  • K-3のセンサがSONY製であるソース

ローパス効果を選べる一眼レフ「PENTAX K-3」 - デジカメ Watch

撮像素子はソニー製で、APS-Cサイズ相当の有効2,435万画素CMOSセンサー。

  • K-3IIのセンサがK-3を踏襲しているソース

センサーシフトで超解像「PENTAX K-3 II」 - デジカメ Watch

撮像素子や画像処理エンジンはK-3を踏襲。

  • EOS 5DsのセンサーがCanon製であるソース

驚異の5000万画素オーバー!フルサイズ一眼『5Ds』キヤノンが発表:CP+2015 - 週刊アスキー

センサーは自社設計&生産で、大判プリント前提の商業用途にも使えるのほどのハイスペックさ。

※メーカーサイトに自社製とは明示されておらず、設計のみCanonSONYに製造委託という説もある(FujiのハニカムCCDなんかもそうだったし、意外とそうかもしれない)。
とは言え、設計はAppleで製造はFOXCONNiPhoneApple製と表現するなら、Canon製センサという表記で問題無さそう。

  • GX8のセンサがSONY製と想定されるソース

(FT5) Panasonic GX8 uses a new 20 MP sensor (from Sony?) | 43 Rumors

(FT5) Panasonic GX8 uses a new 20 MP sensor (from Sony?)

※FT5は81-99%の確率で正しいと分類されるが、あくまでも噂である。

*1:大人の事情でSONY以外は各社から平等に1モデルずつ選定し、理由は後付けしてるんじゃないかと勘ぐってしまう。