SamyangレンズがAdobe Camera Raw 9.4でサポートされた

 2016年1月末にリリースされたAdobe Camera Raw 9.4(Lightroom 2015.4、Photoshop 2015.1.2)でSamyangレンズ群のレンズプロファイルが追加されていた。通常のUpdateではメジャーメーカーの新製品のレンズプロファイルが追加されるのだが、Samyangのレンズ群に関してはレンズプロファイルが一切提供されていなかった。このため、特に新製品ではないレンズ群のレンズプロファイルが新規に追加されている。

 対応レンズの一覧は以下のAdobeの公式発表を参照。
新しいデジカメのRAWデータ対応。Camera Raw 9.4 アップデート | Adobe Creative Station

 と言っても、国内ではSamyangを知らない人の方が多いと思われるし、使っている人を実際に目撃したこともない。以下に、簡単なSamyangの紹介と、レンズプロファイルを試してみた結果を記載する。
 

Samyang?

 カタカナ表記ではサムヤン、漢字表記では三洋。韓国企業で名前も少し似ているけど、Samsungとは関係ないらしい。Panasonicに買収された日本の旧三洋電機とも関係ない。
 公式サイトによると、1972年にKorea WAKOとして創業し、1979年にSamyang Optical Co., Ltdに社名変更したことになっている。日本ではかなりマイナーだが、40年以上の歴史ある光学機器メーカーと言えそう。
Samyang Optics, Lenses for Camera – Cine – CCTV – Photo, Prime Lenses & Third party Lenses
 

Rokinon / Bower?

 冒頭にリンクを掲載したAdobeの公式発表には、SamyangだけではなくRokinonやBowerといったレンズも掲載されている。これらは別ブランドとして展開されているが、同一製品である。市場ごとに異なるブランドで製品を投入しているようで、日本ではSamyangのみだが、アメリカや欧州ではRokinonやBowerブランドも流通している。
 なお、英語版Wikipediaより引用すると、

Samyang SLR lenses are also branded as Vivitar, Falcon, Rokinon, Walimex, Bower, Opteka, Bell and Howell, Polar, and Pro-Optic.

ということで、他にもVivitar, Falcon, Walimex, Opteka, Bell and Howell, Polar, Pro-Opticなどのブランドでも展開しているらしい。
Samyang Optics - Wikipedia, the free encyclopedia
 

何が優れているのか?

 レンズにもよるけれど、多くのマウントで製品をリリースしている。一つのレンズをNikon F, Canon EF, Canon EF-M, Pentax K, Sony A, Sony E, Fujifilm X, Micro Four-Thirds, Four-Thirds, Samsung NXといったマウント別にリリースしている感じ。日本のSigmaTamronの展開しているマウント以上に幅広いのには驚かされるのだが、SamyangはAFに対応していない。電子接点は一切なく、物理的に各マウントに装着できるだけであり、マウントアダプタ経由で使うオールドレンズと同様に、絞りやフォーカスはマニュアルで設定することになる。
 製品ラインアップは比較的大口径の単焦点レンズばかりであるが、一つの光学系を多くのマウントで流用していることと、電子制御に対応しないことから、数値上似たようなスペックの他社レンズより安価に購入できることがSamyangレンズに共通する強みと言えるだろう。
 なお、個別のレンズごとのメリット・デメリットを調べる場合には、国内より海外サイトの方が多く情報を得られる。前述の通り、SamyangだけではなくRokinonやBowerも併せて検索するとより多くの情報が収集できる。
 個人的にマイクロフォーサーズ用の7.5mm F3.5 Fish-eyeと、Eマウント用の12mm F2.0 NCS CSを使用しているので、参考までに以下に主観で紹介する。
 

12mm F2.0 NCS CS

 各マウントでリリースされているが、私が購入したのはEマウント。Sony純正では超広角単焦点レンズが16mmまでしかない。SEL16F28にウルトラワイドコンバーターVCL-ECU1を取り付けた場合よりも優れた画質。魚眼ではなく、純粋に超広角レンズであるが、残念ながら被写体によっては歪みが感じられるが、そんなに嫌な感じでは目立たないと思う。等倍で見れば周辺部の画質低下が視認できるのだけれど、超広角であることを加味すれば個人的には許容範囲。周辺光量がかなり落ちるが、レンズプロファイルが無くても手動で補正できる自然な落ち方。Canon EF-M 11-22mmの広角側と似たような画質と感じる。数少ない超広角単焦点レンズの中では、格安かつ実用上不満の無い画質が得られることがメリットであろう。
 今回Adobe Camera Rawに追加されたレンズプロファイル適用前後の画像の一例を示す。周辺光量と広角歪みが、いい感じに補正されている。
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7.5mm F3.5 Fish-eye

 マイクロフォーサーズに対応した魚眼レンズ。OlympusがフィッシュアイボディーキャップレンズBCL-0980をリリースするまでは、マイクロフォーサーズで最も安価な魚眼レンズだった。もちろん、その画質はBCL-0980とは比べ物にならないほど良い。PanasonicLUMIX G 14mm(H-H014)やLUMIX G X VARIO PZ 14-42mm(H-PS14042)にフィッシュアイコンバージョンレンズDMW-GFC1を取り付けた画像よりも優れていると感じる。マウントは異なるが、PENTAX Qの03 FISH EYEよりも優れているし、PENTAX Kのsmc PENTAX-DA FISH-EYE 10-17mmに近い画質だと感じる。それと比べて圧倒的に小型軽量であるのがメリットであろう。
 多マウント展開のSamyangにしては珍しく、Samyang 7.5mm F3.5はマイクロフォーサーズ用にしか存在せず、各社APS-C向けの魚眼としてはSamyang 8mm F2.8がラインアップされている。そんな背景もあってか、今回のAdobeによるレンズプロファイル追加対象から7.5mmは漏れているが、8mmは追加されている。ということで、8mmのプロファイルを7.5mmで撮影した画像に適用してみた例を示す。異なるレンズ用のプロファイルを適用していることもあってか、そのままでは魚眼特有の歪みが除去しきれていないので、直線が出るように手動で補正量を100⇒164に変更した。魚眼画像をフラットに補正すると、周辺部の解像感が顕著に失われるし、絵としても面白味が無くなることが多いため、プロファイル補正を使う機会はほとんどないと思う。
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以上。