上皇の英語名の読み方など

 Yahoo!ニュースにも掲載されていましたが、上皇の英語名が決まったと時事通信が報じています。
上皇の英語名決まる=「名誉」付けた称号-宮内庁:時事ドットコム

現在の両陛下の称号に、職務を退いた後の「名誉」を意味する単語を加え、上皇は「His Majesty the Emperor Emeritus」、上皇后は「Her Majesty the Empress Emerita」とした。

 このソースは宮内庁が公表した以下のPDFのようです。
ご称号とお代替わりの基本用語(日本語・英語)(PDF)

 上記時事通信の報道によれば、"Emeritus"、"Emerita"が職務を退いた後の名誉を意味するとありますが、普段目にしたことのない単語なので調べてみました。
 

Emeritus

 オックスフォード英語辞典で調べてみると、イギリス英語/アメリカ英語ともに同じ説明で、「大学教授などが職務を退いた後に、名誉として付記することができる肩書き」といった趣旨の説明になっています。
emeritus | Definition of emeritus in English by Oxford Dictionaries
emeritus | Definition of emeritus in US English by Oxford Dictionaries

例文

 "emeritus professor of microbiology"が載っています。
 そのまま訳すと「微生物学の元教授」、意訳気味には「微生物学の名誉教授」といった感じになるでしょうか。

同義語・類義語(synonym)
  • former
  • ex-
  • past
  • in retirement
  • pensioned
  • pensioned off

 それぞれ違いをつけて訳すと、"former"は「前の」、"ex-"は「元の」、"past"は「過去の」、"in retirement"は「退職した」、"pensioned","pensioned off"は「年金暮らしの」といった感じになるでしょうか。
 "former"は一般に使われており威厳が無い、"ex-"は"ex-boyfriend"や"ex-wife"のように「元カレ」「元妻」のように使われており軽い、"past"は過去の人みたいで失礼、"retire"はカタカナ日本語的に威厳が無い、"pensioned"はそもそも上皇は年金もらえるの?といった感じで避けたのでしょうかね???

読み

 Google翻訳ではiˈmerətəsと表示されていますが、思いっきり「アメリタス」と聞こえます。

 オックスフォード英語辞典によれば、イギリス英語とアメリカ英語で異なります(上記のサイトで発音も聴けます)。

イギリス英語
iːˈmɛrɪtəs
カタカナ表記すると「イメリタス」が近いでしょうか。
アメリカ英語
əˈmɛrədəs
eの逆さまことəなので、カタカナ表記すると「イメリタス」「アメリタス」の中間ぐらいでしょうか。

 念のためケンブリッジ英語辞典も確認してみました。
EMERITUS | meaning in the Cambridge English Dictionary

イギリス英語
ɪˈmer.ɪ.təs
カタカナ表記すると「イメリタス」が近いでしょうか。
アメリカ英語
ɪˈmer.ə.t̬əs
オックスフォードと異なり、əではなくɪで始まっていますので、カタカナ表記では「イメリタス」が近いでしょう。


 というわけで、上皇を表す"His Majesty the Emperor Emeritus"をカタカナ発音するなら「ヒズ マジェスティ ジ エンペラー イメリタス」といった感じで良いのではないかと思います。
 

Emerita

 こちらもオックスフォード英語辞典で調べてみたところ、アメリカ英語しか見つかりません。意味はEmeritusと同様ですが、女性に限定して使う語のため「女性大学教授などが職務を退いた後に、名誉として付記することができる肩書き」といった趣旨の説明になっています。
emerita | Definition of emerita in US English by Oxford Dictionaries

例文

 "a professor emerita"、"the librarian emerita of Wellesley College"の2つが載っています。前者は「元女性教授」、後者は「ウェルズリー大学の元女性司書」といった感じになるでしょうか。

同義語・類義語

 Emeritusの同義語・類義語と同じだと思いますが、オックスフォード英語辞典には載ってません。

読み

 Google翻訳ではiˈmeritəと表示されていますが、こちらも「アメリタ」に聞こえます。

 オックスフォード英語辞典によれば、発音記号はəˈmerədəで、末尾が濁音になっています。カタカナ表記するなら「アメリダ」が近いでしょうか。

 taがdə読みなの本当かしらと思って、ケンブリッジ英語辞典でも調べてみたところ、ケンブリッジ英語辞典にはイギリス英語、アメリカ英語双方の発音が載っていました。
EMERITA | meaning in the Cambridge English Dictionary

イギリス英語
ɪˈmer.ɪ.tə
カタカナ表記すると「イメリタ」が近いでしょうか。
アメリカ英語
ɪˈmer.ə.t̬ə
こちらもカタカナ表記では「イメリタ」が近いでしょうか。

 というわけで、上皇后を表す"Her Majesty the Empress Emerita"はカタカナ発音するなら「ハー マジェスティ ジ エンプレス イメリタ」といった感じで良いのではないかと思います。
 

 Google翻訳はEmerita, Emeritusともに、何故か頭の発音記号のiをアに近い音で発音していますが、恐らく間違いです。これまで見てきたように、オックスフォード、ケンブリッジそれぞれの読みも微妙に違いますが、今回のGoogle翻訳の音だけ明らかに違っていますので過信しないように注意しましょう。
 



以上。