2014年からRicohがモバイル機器搭載カメラ向け画質認証プログラムのGR certifiedを実施しています。
リコー「GR」シリーズ開発メンバーによるモバイル機器搭載カメラ向け画質認証プログラム 「GR certified」の開始および認証第一号決定のお知らせ|RICOH IMAGING
上記ニュースリリースでは認証第一号として、AQUOS ZETA SH-01G、Disney Mobile on docomo SH-02Gの2モデルが掲載されていますが、それ以降の認証機器はリコーのサイトには一切掲載されていないようです。対象機器の一覧が解らないので地道に調べてみたのですが、どうやら一部のSHARP製スマートフォンしか該当機器は無いようです。そして、SHARPのサイトにも認証取得済み製品は一覧形式では掲載されていませんので、以下に整理してみます*1。
GR certified認証取得機器一覧
製品名をクリックすると、認証取得が明記されたページに飛びます。
発売年 | キャリア | 製品名 | 備考 |
---|---|---|---|
2014 | docomo | AQUOS ZETA SH-01G | - |
2014 | docomo | Disney Mobile on docomo SH-02G | 製品ページには言及無し |
2015 | docomo | AQUOS ZETA SH-03G | - |
2015 | docomo | AQUOS ZETA SH-01H | - |
2015 | docomo | AQUOS Compact SH-02H | - |
2015 | Softbank | AQUOS Xx | 2014年のAQUOS Xx 304SHではない |
2015 | Softbank | AQUOS Xx2 | - |
2015 | Softbank | AQUOS Xx2 mini | - |
2015 | au | AQUOS SERIE SHV32 | - |
2016 | docomo | AQUOS ZETA SH-04H | - |
2016 | docomo | Disney Mobile on docomo DM-01H | 認証対象外の可能性有 製品ページには言及無し 但しベースモデルは認証済のSH-02H |
2016 | Softbank | AQUOS Xx3 | - |
2016 | au | AQUOS SERIE mini SHV33 | - |
2016 | au | AQUOS SERIE SHV34 | - |
2016 | Y!mobile | AQUOS Xx-Y 404SH | - |
2017 | Softbank | AQUOS Xx3 mini | - |
2017 | au | AQUOS SERIE mini SHV38 | - |
上記リストを眺めると、SHARPのスマートフォンの上位モデルが認証を取得しており、ミッドレンジらしきものも稀に取得している傾向にあることが解ります。
AQUOS R
2017年10月時点で最新となるSHARPのフラグシップのスマートフォンはキャリアを問わずAQUOS Rにブランドが統合されました。が、カメラ機能の説明ページにはGR certifiedを取得したとは明示されていません。
代わりに共通して以下の文言が記載されています。
画質認証プログラム「GR certified」で培った経験をもとに、新開発の22mm*相当の超広角レンズと新画像処理エンジンを搭載。
docomo | AQUOS R SH-03J |
Softbank | AQUOS R |
au | AQUOS R SHV39 |
GR certifiedはリコーイメージング株式会社の商標(商標登録第5819034号)であり、認証取得モデル以外での製品PRに使用すれば商標権侵害による訴訟リスクがあるはずです。冒頭のリコーのニュースリリースには以下の記載があり、認証機器のみGR certifiedを使ったPRが行えると解釈するのが普通でしょう。
設定基準が満たされている場合は「GR certified」として認証し、製品プロモーション等においてご使用いただける「GR certified」ロゴを提供いたします。
AQUOS RにGR certifiedが無いのは何故か調べてみると、ITmediaの記事で言及がありました。
―― カメラでリコーの画質認証プログラム「GR certified」を採用していませんが、これがないからといって画質が劣るわけではない?
藤澤氏 劣るわけではありません。もともと、レンズ設計自体はGR certifiedにもとづいていて、そこで蓄積されたノウハウを活用しています。
小林氏 GR certifiedの認証制度が見直されることになった関係で、今回は認証を取得していません。じゃあ手を抜いているかというと、藤澤が申し上げた通り、今までの蓄積もありますし、リコーさんと一緒にやる前から、レンズの設計はいろいろと工夫してきました。前モデルから悪くなったところは一切ないです。むしろ広角になっているので進歩しています。
【訂正:2017年7月14日11時30分 GR certifiedの認証制度について事実と異なる記載があったので修正しました】
ベールビューがない理由は? SIMフリー版は出る? 「AQUOS R」の素朴な疑問 - ITmedia Mobile
訂正が入っていますが、どうやら訂正前には「GR certifiedの制度自体がなくなりました。」という記載があったと思われます。
はてなブックマーク - 開発陣に聞く「AQUOS R」(番外編):ベールビューがない理由は? SIMフリー版は出る? 「AQUOS R」の素朴な疑問 - ITmedia Mobile
今後の動向を考える
上記のような経緯もあってか、現時点でGR certifiedをGoogle検索すると、終了が最上位にサジェストされるようになっています。
ですが、前述のITmediaの記事を見る限りでは終了ではなく、認証制度の見直しが行われている(行われた?)というのが実態のようです。憶測にすぎませんが、そんな事情も加味してAQUOS Rの製品ページには「「GR certified」で培った経験」というふわっとした記述にすることが両社間で合意されたのかもしれません。
とは言えGR certified認証取得スマートフォンは現時点では事実上途絶えた状態となっています。
本家リコーのコンパクトカメラGRも(モデルチェンジはもともと少ない機種ですが)2015年夏にリリースのGR II以降、リリースされていません。それどころかGRに限らずカメラ事業そのものの撤退検討報道や、赤字報道まで2017年に出ています。
リコー、カメラ事業縮小 個人向け撤退含め検討 :日本経済新聞
リコー、個人向けカメラ事業が営業赤字に 「THETA」好調も - ITmedia ビジネスオンライン
そもそもリコーという会社の事業規模を考えると、コピー機(複合機や印刷機含む)で食ってるような会社で、カメラも少し作っていると表現した方が適切かもしれません。そして意外かもしれませんがSHARPもまたコピー機でガッツリ稼いでいる会社です*2。カメラブランドを持たないSHARPと、カメラ事業が落ち込んでいるRICOHが協力してWin-Winを狙ったけれど、裏ではコピー機市場で殴り合っていると見ることもできるわけです。
せめてSHARP以外のメーカーもGR certifiedプログラムに参加していれば、認証体制を維持する(コストをかける)だけのメリットがリコー側にもあるかもしれませんが、SHARPだけ(しかも他の事業領域では競合)となると…。かと言ってSHARP以外の国内スマートフォンメーカーを見ても、SONYは自社でカメラを手掛けているし、京セラはかつてCONTAXブランドでカメラ事業をしていたしSHARP同様に複合機で競合するし、富士通は撤退報道が出ているし…というわけで潜在顧客となりそうなメーカーは少なくとも国内には居なさそうです。
これらの事情を考えると、事実上SHARPのためだけにGR certifiedの認証体制を維持するにはライセンスフィーを上げないと継続は厳しい一方で、高額なライセンス費用になるならもういらないと蹴られた結果がAQUOS Rなのかもしれないと想像することもできそうです。
このままGR certifiedが終息してしまうのか、息を吹き返すのかは予想できそうにありません。個人的にはSHARPファンですし、RICOHのカメラユーザーなので応援したいのですが。
蛇足ながらSHARPに写真用カメラのブランドはありませんが、かつては「液晶ビューカム」で家庭用ビデオカメラ市場を大きく切り開いたメーカーでもあります。「SHカメラ」というカメラアプリがSHARP機にはインストールされていますが、動画に特化した液晶ビューカムアプリとか作って差別化を図るとか、自社ブランドの再利用というか有効活用はしないんでしょうかね。
以上。