SHARP AQUOS R2、AQUOS senseがAndroid Enterprise Recommendedに対応という発表がありました。
スマートフォン「AQUOS R2」シリーズおよび「AQUOS sense」シリーズが「Android Enterprise Recommended」に対応|ニュースリリース:シャープ
個人的にAQUOS sense(docomo版のSH-01K)を使用しているのですが、そもそも"Android Enterprise Recommended"がどのようなものか知りません。企業ユーザだけではなく、個人ユーザにとっても何らかのメリットはあるのでしょうか?
SHARPの説明
上記リリースによれば、以下のように説明されています。
「Android Enterprise Recommended」は、Googleが推進する法人利用に適した端末/サービスの推奨プログラムです。Googleがセキュリティアップデートを配信後、90日以内に適用される端末であることや、管理端末から組織の運用方針に沿った端末設定や業務アプリを自動インストールできる「ゼロタッチ登録」に対応することなど、Google指定の「ハードウェア」「ソフトウェア」「サービス」の条件を満たし、端末検証テストに合格することで、プログラムの対応機種としてGoogleに登録されます。
"Android Enterprise Recommended"という名称から、法人・企業ユーザをターゲットにしたプログラムであることは察していましたが、一般個人でも「セキュリティアップデートが90日以内に適用される」という大きなメリットがあるようです。
端末メーカーやキャリアの意向*1で、Googleがセキュリティアップデートをリリースしても、自分の端末はUpdateされないということが多々ありますが、"Android Enterprise Recommended"に対応した端末であれば90日以内にUpdateが入手できるということになります。
SHARPの当該ページでは法人向けの訴求内容がもう少し掲載されていますが、概要レベルの文言ばかりで、"Android Enterprise Recommended"の具体的な要件・仕様などの細かい情報は見当たりません。
というわけで、"Android Enterprise Recommended"プログラムを展開している大本のGoogleの説明を確認してみます。
Googleの説明
以下のページに"Android Enterprise Recommended"の要件として、端末の最小仕様(最低要件)が掲載されています。
Android – Android Enterprise Recommended の要件
SHARPのページでは触れられていませんでしたが、"Android Enterprise Recommended"には「高性能な端末」と「頑丈な端末」の2種類の認定基準があるようです。
それぞれのハードウェア及びソフトウェアアップデートについての最小要件を抜粋して整理すると以下のようになります。
項目 | 高性能な端末 | 頑丈な端末 |
---|---|---|
OS | Android 7.0 | Android 7.0 |
RAM | 2GB | 2GB |
Storage | 32GB | 16GB |
Speed | 1.4GHz | 1.1GHz |
Architecture | 64bit | 32bit |
Camera | Front:2MP/Rear:10MP | 規定無し |
Battery life | 8 hour | 規定無し |
Ingress protection | 規定無し | IP64 |
Drop test integrity | 規定無し | MIL-STD-810G or IEC 62-2-32 |
Security update support | 90日以内のセキュリティアップデート | 90日以内のセキュリティアップデート (端末の発売日から5年間) |
Major update release support | 現在出荷中のリリース + ワンレターアップグレードのサポート | 現在出荷中のリリース + ワンレターアップグレードのサポート キャリア認証を含む今後のAndroidアップグレードは、ボードサポートパッケージ(BSP)のリリースから18か月以内のすべてのEnterprise Recommended端末に提供される必要があります。 |
個人的にはなかなか適当というかゆるい基準に思えます。
例えば、Speedとして示されているのは当然ながらCPU(SoC)の動作クロック周波数を指していると思いますが、CPUコア数についての規定はありません。
いくら最小要件とは言え、「高性能な端末」の区分が言うほど高性能か?とも思いますし。
そこで表示言語を英語に切り替えてみると、「高性能な端末」は"Knowledge Workers Devices"、「頑丈な端末」は"Rugged Devices"と表示されました。同様に、台湾(繁体字)では「適合知識工作者使用的裝置」と「抗震裝置」と表示され、英語の意味と同じです。
全ての言語を確認したわけではありませんが、日本だけ意味が違う言葉に訳されているようです。
すなわち、本来は「高性能な端末」ではなく、「知的労働者向け端末」となるはずです*2。
話が逸れましたが、「高性能な端末」と言っている割に、高性能なスペックに見えないのは翻訳が不適切なだけで、(GPUを酷使する3Dゲームなどをプレイする訳でもない)知的労働者が業務で使うのに最低限の要件と言う意味では妥当ではないでしょうか。
なお、AQUOS R2, AQUOS senseは"Knowledge Workers Devices"として掲載されています。
Android Enterprise - Solutions Directory
上記のリストには日本国内で展開していないメーカーの製品も掲載されていますが、日本メーカーとしては今回のSHARP製品以外にも、SONYのXPERIAシリーズ(XA2, XA2 Ultra, XZ Premium, XZ1, XZ1 Compact, XZ2, XZ2 Compact)が"Android Enterprise Recommended"の"Knowledge Workers Devices"として掲載されています。
一方で、意外*3なことに「頑丈な端末(Rugged Devices)」の方には日本メーカーの製品は一つもありません。と言っても、こちらの区分は倉庫作業や店舗作業で使うスキャナ搭載端末や、宅配便のドライバーが使うような端末を念頭に置いていると思われ、そのような業界向けにはPDA時代からのソリューションプロバイダ経由で端末も納品されるでしょうから、Googleのお墨付きはさほど重要ではないのかもしれません。
まとめ
"Android Enterprise Recommended"というネーミングではあるものの、一般個人でも以下のメリットがあることが判りました。
すなわち、所謂ハイスペック端末であるかに拘りは無く、普通に使える性能で、ある程度長く安全に使える道具としてのスマートフォンを探しているというユーザにとっては、"Android Enterprise Recommended"認定端末は個人使用であっても魅力的だと言えるでしょう。
シャープ AQUOS sense lite SH-M05 (ホワイト)5.0インチ SIMフリースマートフォン SH-M05-W
- 出版社/メーカー: シャープ
- メディア: エレクトロニクス
- この商品を含むブログを見る
(補足)AQUOS sense SH-01Kの現状
SH-01Kを使用し始めてから、こまめにアップデートがあるとは感じていましたが、この"Android Enterprise Recommended"認定のためだったのでしょう。
AQUOS sense SH-01Kの製品アップデート情報 | お客様サポート | NTTドコモ
本投稿記載時点で最新の2018年9月のセキュリティアップデートも既に配信されており、端末情報から確認してもご覧の通りです。
ドコモのアップデート内容には明示されていませんが、しれっとカーネルも2018年9月5日にビルドされたものに更新されているのが確認できます。
以上。
*1:というか、ユーザ目線では単なる怠慢に見える
*2:"Rugged Devices"が「頑丈な端末」と訳されているのは妥当。
*3:CASIOが撤退していることを考えると、京セラのTORQUEくらいしかタフネス性能を強烈に訴求していないので意外ではないかも知れない。
*4:「頑丈な端末(Rugged Devices)」は発売日から5年間が最低要件だが、「高性能な端末(Knowledge Workers Devices)」では規定されていない。
*5:ワンレターアップグレードの定義がどこにも示されていないのだが、One letterの意味する1文字変わるアップデートとは、Android L⇒M⇒N⇒O⇒Pすなわち、メジャーバージョン番号がAndroid 5.0⇒6.0⇒7.0⇒8.0⇒9.0と変わるアップデートのことを指していると思われる。