JNHブランドのmicroSDカードを買ってみた

 通販で安いSDカードを探しているとJNHというショップをよく見かけます。
 単なる並行輸入業者のように見えますが、模造品を売っているという書き込みも一部*1で見当たります。模造品云々の真偽は判りませんが、JNHブランドのmicroSDカードがスペックの割に安価に思えたので買ってみました。
 

買ったもの

 MD-32S32G/JP01という型番でAmazonで売られている以下の製品を購入しました。

 商品ページで紹介されている主要なスペックを抜粋すると以下の通り。
f:id:kachine:20181003224623p:plain

  • UHS-I対応
  • 東芝製64層 3D NAND FLASH BiCS3を搭載
  • 容量:32GB(ユーザ領域約28.8GB)
  • 最大読取速度100MB/s
  • 最大書込速度35MB/s
  • UHSスピードクラス1対応
  • SDスピードクラス CLASS10対応
  • Video Speed Class V10対応
  • App performance Class 1(A1)対応
  • 国内5年保証

 個人的にはA1対応のmicroSDSandisk製品ばかりの印象が強いのですが、この製品も対応しているようです。また、最近策定されたビデオスピードクラスに対応しているのも現時点では珍しいと思います。

 なお、SDスピードクラスはCLASS10までしか規格が存在しませんが、ビデオスピードクラスは90MB/sのV90まで規格として存在します。最大書き込み速度35MB/sであるならば、30MB/sのV30に対応しても良さそうなものの本製品では10MB/sのV10対応に留まっています。これはビデオスピードクラスが「最低保証速度」を規定しているため、「最大書き込み速度」が35MB/sだとしても常に安定して30MB/s以上で記録することはできないため、一つ下のクラスであるV10止まりなのだと考えられます*2

 Sandisk, Toshiba, PanasonicといったSDカードのメジャーブランドではなくショップ独自ブランドであるため、そもそも模造品のリスクは無いと考えられます。
 ショップ独自ブランドでありながら、メモリチップが東芝製ということが明らかにされている点に安心感を感じたため購入してみました*3
 

届いたもの

パッケージ表面

 当然ながらAmazonの商品ページの画像と同じものが届きました。
JNH microSD(MD-32S32G/JP01) Package (front)
 商品ページの説明と同様にClass10、UHS-1、V10、A1、最大Read 100MB/sの表記があります。
 加えて、商品ページでは一切言及されていない、「耐X線」「耐磁」「防水」「耐衝撃」といったタフネス性能が訴求されています。
 

パッケージ裏面

 パッケージ自体にバーコードが印字されているにもかかわらず、その上に何故か異なるバーコードラベルが貼られています。比較的どうでもいいことですが、開封時にハサミで切る位置を示す破線が印刷されていますが、この位置にはmicroSDを収納しているプラスチック板が伸びており、うまく切れません。破線より5mm程度上(JNHのロゴがある側)なら切りやすいはずです。
JNH microSD(MD-32S32G/JP01) Package (back)
 裏側にも表面と同じUHS-1、最大Read 100MB/sの表記があります。また、商品ページの説明と同様の5年保証もしっかり明示されています。
 また、商品ページでは一切言及されていないJIS防水保護等級7(IPX7)の表示があります。このことから、パッケージ表面の「防水」表示の具体的な仕様はIPX7だということが判りますが、「耐X線」「耐磁」「耐衝撃」についての詳細は判りません。
 
 というわけで、Amazonの商品ページに記載された訴求ポイントであるはずの「東芝製64層 3D NAND FLASH BiCS3を搭載」「最大書込速度35MB/s」の2点については何故かパッケージからは確認することができません。
 逆に、IPX7の防水性があり、何らかの「耐X線」「耐磁」「耐衝撃」性能があるということがパッケージから判りました。
 

製造元

 SD Insightで製造元を調べてみると意外すぎる結果が表示されました。


SD Insight report of JNH microSD(MD-32S32G/JP01)
SD Insight report of JNH microSD(MD-32S32G/JP01)
SD Insight report of JNH microSD(MD-32S32G/JP01)
 なんと、Panasonic製と表示されました。

 そもそもの製造元が判る仕組みについて軽く*4触れておくと、全てのSDカードはCID(Card IDentification)というレジスタに情報を持っています。その中には製造元を示すコードも含まれています。そこにPanasonicを示すコード値が書き込まれているということです(SD Insightはそれを判りやすく表示しているだけ)。
 すなわち、本当にPanasonic製であるか、Panasonic製を偽った模造品でなければこの表示にはなりません。

 部材として東芝製メモリチップを使っていながら、SDカードという最終製品に組み上げたのがパナソニックなんてことがあり得るのでしょうか?
 合理的に考えて「東芝製64層 3D NAND FLASH BiCS3を搭載」或いは「Panasonic製を示すCID」のいずれか(或いは両方)が誤りだと個人的には思うのですが(個人ではこれ以上調べる術はありません)。
 

フォーマット

 SD Formatterで「消去設定:上書きフォーマット」「論理サイズ調整:ON」でフォーマットを行ったところ、当然ながら正常にフォーマット出来ました。
SD Formatter completed format to JNH microSD(MD-32S32G/JP01)
 上書きフォーマットが成功してますので、全領域に正常に書き込みが可能であるということになりますし、論理サイズ調整を行っても約32GBとして認識されていますので(記録容量を詐称するタイプの)模造品ではないことも確認できました。
 

ベンチマーク

 フラッシュメモリの劣化を進めるだけなので、普段はSDカードのベンチマークはしない主義なのですが、5年保証も付いてますし今回はいろいろアレなので実行してみました。
Crystal Disk Mark result of JNH microSD(MD-32S32G/JP01)

-----------------------------------------------------------------------
CrystalDiskMark 6.0.1 x64 (UWP) (C) 2007-2018 hiyohiyo
                          Crystal Dew World : https://crystalmark.info/
-----------------------------------------------------------------------
* MB/s = 1,000,000 bytes/s [SATA/600 = 600,000,000 bytes/s]
* KB = 1000 bytes, KiB = 1024 bytes

   Sequential Read (Q= 32,T= 1) :    92.003 MB/s
  Sequential Write (Q= 32,T= 1) :    30.222 MB/s
  Random Read 4KiB (Q=  8,T= 8) :     4.904 MB/s [   1197.3 IOPS]
 Random Write 4KiB (Q=  8,T= 8) :     3.774 MB/s [    921.4 IOPS]
  Random Read 4KiB (Q= 32,T= 1) :     4.839 MB/s [   1181.4 IOPS]
 Random Write 4KiB (Q= 32,T= 1) :     3.780 MB/s [    922.9 IOPS]
  Random Read 4KiB (Q=  1,T= 1) :     4.738 MB/s [   1156.7 IOPS]
 Random Write 4KiB (Q=  1,T= 1) :     3.605 MB/s [    880.1 IOPS]

  Test : 1024 MiB [D: 0.0% (0.0/29.0 GiB)] (x5)  [Interval=5 sec]
    OS : Windows 10  [10.0 Build 17134] (x64)

 シーケンシャルアクセスでRead 92MB/s、Write 30.22MB/sということで、商品ページに記載のスペックと比較して読み込みは92%、書き込みは86%程度のパフォーマンスしか出ていません。
 なお、測定はWindows10 x64環境で、USB3.0接続のUHS-1対応カードリーダ(Transcend TS-RDF5K)のmicroSDスロット(microSD-SDアダプタは未使用)を直接使用しています。

 Readはともかく、Writeは少しがっかりする結果となりました。
 とはいえ、一般的な(或いはちょっと良い)4K録画機材ではビットレート100Mbps程度ですので、常時12.5MB/sが担保できれば単純計算では問題無いことになります。
 記録・削除を大量に繰り返しているのにフォーマットしていない状態でもなければ、映像記録時は基本的にはSequential Writeとなるので、V10ながらシーケンシャルライト約30MB/sのこのカードでも十分実用になると思います(もちろん、保証はできませんが)。

 逆にハイエンド寄りの4K録画機材のビットレートを調べてみると、EOS 5D Mark IVの4K記録時で500Mbps*5Panasonic GH5Sの4K All-Intra記録時で400Mbpsなので、単純計算でそれぞれ62.5MB/s、50MB/sの記録速度が要求されます。こういった機材での使用目的であれば全く使い物になりませんので、V90やV60対応のハイエンド相応の高価なSDカードが必要です。
https://cweb.canon.jp/v-edition-eos/lineup/digitalcamera/5dmk4/feature-mobility.html
https://panasonic.jp/dc/g_series/products/gh5s/4k_movie.html
 

まとめ

 A1やV10対応のカードとなると前述の通りまだ出回っている製品が多くはありませんが、Class10、UHS-1なら多くのカードが対応しており、この製品より安価な製品もあります。V10はほぼClass10と同義なので、A1対応が外せないという条件でなければ、積極的にこの製品を選択する理由は無いと思います。
 タイムセールなどで安ければ試してみるのもいいかも知れませんが、積極的にお勧めする理由は特にありません。

 まだ開封して間もないため耐久性は不明確ですが、5年保証が謳われているため壊れたら交換ないしは返金は受けられるはずですので、壊れても影響の少ない用途にはフィットしそうです。
 例えば、「スマートフォンのアプリだけ」を記録するような場合には特に不安なく使えるでしょう。壊れてもアプリを再インストールするだけで済みます(サーバー側ではなく端末側にしか記録されない設定情報などは失われる可能性が有りますが)。逆に、「スマートフォンに挿しっ放しで、動画や写真を記録する」ような用途だと、壊れると取り返しがつかない事態になります*6
 このSDカードに限った話ではありませんが、デジタルカメラで画像・映像の記録に使う場合は、「撮影後なるべく早くPCにデータを移動して、カメラで再フォーマット」する運用を徹底すれば、万一SDカードが壊れた場合にも被害は小さくできます。それが論理障害であれば復元できる可能性も高い*7ですので、このSDカードを使用する場合も同様に運用するのが望ましいと思います。
 



以上。

*1:例えば、【注意】通販業者「嘉年華(jhn)」、数年前から偽microSD販売の常連&マジコン販売で任天堂に敗訴していた | BUZZAP!(バザップ!)など。

*2:V10とV30の間のビデオスピードクラスは無い。

*3:それが虚偽表示だとしたら元も子もないですが、それを一般個人が確認する術はありませんし。

*4:もう少し詳しい話は ⇒ SDカードの製造元等を調べてみた - 記憶は人なり の「原理」の項を参照。

*5:MotionJPEGだから無駄にデカいような気もします。

*6:クラウドにバックアップしていなければ本当に取り返しがつかない最悪の事態ですし、クラウドにバックアップを取得していても、無料のGoogleフォトのように非可逆圧縮されている場合は、オリジナルの画質は失われてしまいます。

*7:経験上、論理障害時の画像はほぼ復旧可能ですが、映像記録中に障害が起きた場合はその映像は失われます。