東京の市区町村と各国の人口当たりのCOVID-19感染率の比較

 東京都は日次で新型コロナウイルス陽性患者のデータを公表して、比較的わかりやすく可視化したサイトも公表しています。
都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト
東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細 - データセット - 東京都オープンデータカタログサイト

 ですが、患者の詳細な個人情報を明らかにする必要はありませんが、どこの市区町村で発生した患者なのか、といったレベルの情報は公開すべきであると思っていました。他県の場合、患者の住所が○○市といったレベルで公開されていることが比較的多いように見受けられます(私の認識違いかもしれませんが、政令指定都市で保健所を自前で運営している自治体だと、自ずとその自治体からの発表となるんでしょうかね?)。

 と、思っていたところ本日、都内市区町村別の患者数が発表されたようです。
東京)都が自治体ごとの感染者数を初公表 世田谷区最多 [新型肺炎・コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
 東京都のホームページ上ではこの情報を見つけることはできなかったのですが、*1上記朝日新聞の記事より引用すると、

3月31日時点で世田谷区が44人と最も多く、次いで港区の39人、杉並区の28人だった。

 だそうですが、絶対数だけを出されても何とも言えないと思います。
 他のデータも合わせて比較してみたいと思います。

※本投稿では特定の国や地域や市区町村の何某かの数字が高いとか低いとかいった言及を含みますが、その地域そのものや居住する方に対しての評価を貶めたり、誹謗・中傷を目的とするものではありません。
※データの取り扱い・数値計算にはミスが無い様注意していますが、完全性を保証するものではありません。各データソースは明示しておりますので、確実性を求める方はご自身で再計算してください。

 

人口・面積データを合わせる

 各市区町村の人口が判れば、人口当たりの感染者数(すなわち感染率と言い換えることもできるでしょうか。本投稿ではこの値を「人口比」と表記します)が算出できます。また、面積が判れば人口密度が算出できます。感染者数との相関がみられるかもしれません。

 探してみると、東京都の以下のページに、区市町村別人口・面積のデータ(平成30年3月1日現在 *2 )が公開されていますので、このデータと併せて整理してみます。
都内区市町村マップ|東京都

 市区町村別の感染者数と人口比をプロットすると以下のようになります。
都内市区町村別感染者数と人口比
 最も患者数が多い世田谷区ですが、感染者の人口比は約0.005%に留まります。一方で、世田谷区に次いで患者数の多い港区の人口比は約0.015%となり、人口当たりで評価すると世田谷区の3倍も感染者が多いことになります。
 また、感染者数は3名に抑えられている者の、人口の絶対数も多くないし、人口密度も高くない羽村市がワースト10位内に入っているのが浮かび上がってきます。その羽村市千代田区とでは人口も5千人程度しか違わないし、人口密度も大きく違わない?って、あれ???昼間人口ではない数字だけでデータを眺めてもあまり意味が無さそうなことも見えてきますね…。
 

海外との比較

 都内の自治体では、人口比約0.015%が最悪値となっていますが、この値がどういった水準を意味しているのかは判りません。
 EUが以下で公開しているオープンデータ*3を使って比較してみます*4
COVID-19 Coronavirus data - COVID-19 cases worldwide | European Union Open Data Portal

 国(地域)別に感染者数と人口比をプロットすると以下のようになります。
国・地域別感染者数と人口比
 都内で最悪の感染者人口比だった0.015%は、トルコの0.014%とオーストラリアの0.018%の間に位置することが解ります。
 ただし、各国によって検査体制が異なるため、実際には単純な比較はできません(日本のように数字に表れていない未検査の軽症患者が潜在的に多い国と、そうでない国の数字を比較してもあまり意味が無い)。

 一方で、日本全体の数字と比較するのなら、都内と検査体制・基準が同じですから問題なく比較できるはずです。
 日本全体では人口比0.002%ですので、東京都港区, 中央区, 渋谷区, 目黒区, 台東区, 新宿区, 品川区, 羽村市, 千代田区, 杉並区, 世田谷区, 中野区, 西東京市, 三鷹市, 豊島区, 練馬区はいずれも日本全体の平均より多くの方が感染されていることになります。
 

 これ以上の感染拡大を防ぐためにも、行政機関の発表に従って感染予防に努めましょう。
idsc.tokyo-eiken.go.jp
 



以上。

*1:東京都福祉保健局のサイトで公表されていました⇒ 新型コロナウイルスに関連した患者の発生について(第144報) 東京都福祉保健局

*2:フッタ部には「平成30年3月1日現在(総務局統計部)」、ヘッダ部には「平成30年(2018年)4月17日更新」と書かれています。

*3:EU域外のデータも含まれています。

*4:更新タイミングが判りませんが2020/04/01 20:30(JST)頃に取得した断面を使用し、2020/03/31までの事例数を国・地域ごとに集計した値を使用しています。少なくとも日次以上の頻度で更新されているようで、データの鮮度が古すぎるということは無いはずです。なお、人口は同ファイルに含まれるpopData2018列が2018年時点の人口と思われるため、その値を利用しています。

*5:元データが"cases"という表現になっているため、「感染者数」ではなく「事例数」としています。同じ人が複数回感染するのか否かによって意味合いが変わるかもしれませんが、基本的には患者数とほぼ同じ値と考えられます。