関東上空を飛行する航空機数が低迷中(2020/7)

 COVID-19の影響が直撃し、飛行している航空機が激減していることを毎月観測してきました。8月になりましたので、7月の観測実績値を集計したところ相変わらず厳しい状況が見えてきました。6月には回復に転じたかのようにも見えたのですが、この感染拡大状況ではやはり厳しいですよね。
関東上空を飛行する航空機が激減中 - 記憶は人なり
関東上空を飛行する航空機が激減中(2020/4) - 記憶は人なり
関東上空を飛行する航空機が減少中(2020/5) - 記憶は人なり
関東上空を飛行する航空機数が底打ち?(2020/6) - 記憶は人なり
 

元データの取得方法

 前月までの投稿と同じで、個人宅に設置したADS-Bレシーバで受信した日毎にユニークなICAO 24bit codeの数をカウントしたものです。如何なる場合もデータの正確性・完全性を保証するものではありません。
 

日別観測航空機数推移

 日別に観測したユニークな航空機の数をプロットすると以下のグラフになります。
 COVID-19が初めて確認された2019年12月以降の期間をプロットしています(貨客運輸の季節性変動も想定し、前年同日も合わせてプロットしています)。
Daily # of observed aircraft
 7月中は回復傾向にあるようにも見えるのですが、7月末は激減しています。7/22からGoToトラベルキャンペーンが開始されましたが、7月末は東京や大阪などで過去最大の感染者数が連日報じられている状況下でしたので、移動を控える方が増えるのは当然でしょう。
 

月別平均観測航空機数

 日別では曜日による差異などでグラフがガタついてよく見えないので、月別に平均を採ってみます。

2019(or Dec’18)平均 2020(or Dec'19)平均 前年比
12 562.2 606.3 107.84%
1 582.0 618.0 106.19%
2 579.1 576.4 99.54%
3 597.8 475.3 79.50%
4 620.9 300.0 48.31%
5 638.5 257.4 40.31%
6 635.9 285.5 44.90%
7 656.5 285.5 43.49%

 月別平均にすると、7月は1日辺り約285機で6月と同じ結果になりました。ですが、前年比では悪化しています(例年であれば夏の旅客需要で飛行する航空機数が増えるためではないかと考えられます)。
 月別平均をプロットしてみると以下のようになります。
Monthly average # of observed aircraft
 

GoToトラベルキャンペーン前後の比較

 GoToトラベルキャンペーン開始(2020/07/22)の前後9日間の実績値(観測された航空機数)、前年実績値、前年比、(2020年の)前週比を集計すると下表のようになりました。

2020 2019 前年比 前週比
07/12 338 674 50.15% 96.30%
07/13 330 663 49.77% 95.38%
07/14 317 640 49.53% 91.62%
07/15 341 620 55.00% 97.15%
07/16 325 639 50.86% 86.67%
07/17 340 664 51.20% 85.00%
07/18 344 674 51.04% 103.61%
07/19 372 662 56.19% 110.06%
07/20 331 610 54.26% 100.30%
07/21 361 664 54.37% 113.88%
07/22 428 640 66.88% 125.51%
07/23 368 636 57.86% 113.23%
07/24 358 694 51.59% 105.29%
07/25 383 703 54.48% 111.34%
07/26 379 767 49.41% 101.88%
07/27 377 665 56.69% 113.90%
07/28 364 655 55.57% 100.83%
07/29 361 644 56.06% 84.35%
07/30 386 717 53.84% 104.89%
07/31 354 712 49.72% 98.88%

 左軸に航空機数、右軸に比率をプロットすると以下のグラフになります。
f:id:kachine:20200803000918p:plain
 開始初日に前週比約125%となりましたが、それ以降は前週比で1割程度多い日もありつつも、8割台に落ち込む日もあります。ですが、前年比でみると開始初日の66%以外はGoToトラベルキャンペーンの開始に関わらず概ね50%前後で推移しており、飛行する航空機数が明確に多くなったと言えるような効果は確認できません。
 前述の通り、このデータは必ずしも受信環境に恵まれてるとは言えない個人宅で受信できたデータに限定され、便数ではなく航空機の機体の数を示したものですので、同一の機体が1日の間に便名を変え往復している回数が増えていたりする可能性は否定できません。航空機ではなく、新幹線などの電車や自動車で移動する旅行者もいるでしょうから、GoToトラベルキャンペーンに経済的効果が無いと言えるだけの説得力はありません*1
 



以上。

*1:今行うべき施策であるかは個人的には大きな疑問を抱かざるを得ません。航空業界だけではなく陸路の鉄道などの旅客数や宿泊業の予約状況等、感染拡大リスクを取ってでも施策を継続するに値する経済効果があるとデータに表れていないのなら、直ちに停止すべき施策でしょう。