関東上空を飛行する航空機が激減中
COVID-19の蔓延により多くの業界がダメージを負っていますが、航空業界についても国内外での需要の激減が報じられています。
という情報はニュースで見聞きして知っているのですが、自分の観測データからも確認できるのか、保有しているデータを整理してみました。
元データの取得方法
以下の投稿で紹介したこともありますが、航空機が無線経由で送出するADS-B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast)という情報を受信することができます。
wave.hatenablog.com
アマチュア無線などの経験者では相手を識別するというと、コールサインを思い浮かべる方もいるかも知れません。ADS-Bにもコールサイン情報を送出するメッセージがありますが、旅客機では便名が設定されていることが多いのですが、何も設定されていない機体も多くあります。また、空港に到着後に貨客を乗せ換えて離陸するときには別の便になりますから、ユニークなコールサインをカウントすると同じ機体を重複カウントすることになってしまいます。
一意に機体をカウントするには、PCやスマホなどでいうMACアドレスのようなものをカウントする方法が有効です。航空機の場合、ICAO 24bit codeとかICAO 24bit addressと呼ばれる24bitの識別子がそれに該当します*1。
なお、日本国内においてはADS-B情報を送受信するADS-Bトランスポンダの航空機への搭載は全機に義務付けられているわけではないようです*2。例えば、政府専用機を除く自衛隊機は基本的にADS-B情報を送信していませんし、米軍機はADS-B情報を送信する輸送機もありますが、そうではない機体も多いです。遊覧飛行するヘリや、一部の報道ヘリはADS-B情報を送出していないと思われる機体があります。行政機関のヘリもADS-Bを送出していなかったり、出ているけど位置情報を出さなかったりとまちまちです。
これまでに受信した膨大なADS-B情報を集計し、日別にユニークなICAO 24bit codeの数をカウントしてみます。受信機は個人宅内に適当に設置しているため、宅内の人の移動や、高層ビル等が建設されたりすると受信状況は変化する可能性があります。これらの特性を踏まえると、以下に掲載するデータに厳密な正確性は無いことにご留意ください*3。如何なる場合もデータの正確性・完全性を保証するものではありません、念のため。
日別観測航空機数推移
日別に観測したユニークな航空機の数(受信できたユニークなICAO 24bit codeの日別合計)をプロットすると以下のグラフになります。
COVID-19が初めて確認された2019年12月以降の影響を見るために、12月から本投稿記載日前日(4/3)までの期間をプロットしていますが、貨客運輸には季節性変動要因があるでしょうから、前年同日も合わせてプロットしています。
今年は2月頃から明らかに下がってます。昨年はざっくりと毎日600機前後が飛んでいたのに、今年4月に入るころには400機程度に減っています。4割も減ってる!?
なお、先述の通り、これは機体数を数えているので便数ではありません。一つの機体が便名を変え、国内便では多ければ一日に10便程度も運航していることもありますから、減便数にするとより大きな数になると想定されます。
ただし、観測できる航空機の中には関東上空を通過するだけで離着陸しない航空機(中国・台湾・韓国などと世界各国を結ぶ航空便など)も含まれますので、日本の航空事情だけを表したものではありません。
月別平均加速航空機数
日別では曜日による差異などでグラフがガタついてよく見えないので、月別に平均を採ってみました。
月 | 2019(or Dec’18)平均 | 2020(or Dec'19)平均 | 前年比 |
---|---|---|---|
12 | 562.2 | 606.3 | 107.84% |
1 | 582.0 | 618.0 | 106.19% |
2 | 579.1 | 576.4 | 99.54% |
3 | 598.4 | 475.3 | 79.42% |
4 | 629.7 | 385.3 | 61.20% |
今年の4月については4/3までの3日間の平均でしかありませんが、400機を大きく割り込んでます…。改めて、プロットしてみると以下のようになります。
昨年の状況や今年1月までの推移を見ると、世界の工場としての中韓台の物流需要が伸びていたり、オリンピックを前にした日本の観光需要が伸びていたのかなと想像することができそうです。
が、COVID-19の世界中での感染拡大が明らかになってきた2月以降の急激な落ち込みは酷いとしか。
飛行している航空機が大幅に減っているということは、貨客輸送が大幅に減っているわけで、航空輸送業界だけではなくその顧客企業も大ダメージを受けていることが容易に想像できます。
より早くCOVID-19の蔓延が終息するよう、各自できる対策を怠らないようにしましょう。
以上。