この数日BehringerがFacebookで新製品発表を続けていますが、新たにUB-1が発表されました。
UB-1はJP-4000、ProVS、Saturnと同じフォームファクタの製品に見えますが、ProVSやSaturnの想定価格99USDとは異なり、JP-4000同様に想定価格49USDと激安な代わりにDIN5PinMIDI端子は搭載していません。
UB-1
Facebookの投稿によれば、2アナログオシレータとVCFとアルペジェーターを備えたポータブルアナログシンセだそうです。JP-4000の投稿にも書いてありましたが、子供を含む全ての人をターゲットにしているということで、この価格設定のようです。小さいからといって騙されないように、これはモンスターシンセだ、とも書いてあります。なお、既に開発完了しており、半導体が入荷次第出荷予定と一連の新製品と同様の出荷予定が記載されています。
もう少し詳細な説明もありますので適当に意訳して記載します。
- 2DCOと4poleフィルタを備えたプログラマブルシンセサイザー
- Oberheim Matrix6やMatrix1000にみられる伝説的な3396/3397アナログチップデザイン(注:CEM3396, CEM3397の事と思われる。オリジナルのCEMチップはとっくの昔にディスコンですが、BehringerのMusicTribeグループ傘下企業であるCool Audio Semiconductor社がCEM3397コンパチのV3397を製品化しています*1。)
- 演奏性に優れた16鍵タッチキーボード
- SynthTribeアプリで拡張可能な32プリセットメモリ
- ホールド機能を備えた3パターンのアルペジェーター
- クリエイティブな音作りのためのVCFとVCAで独立したエンベロープ
- フィルタとオシレータピッチを制御する2つの強力なLFO
- 6ボタンとOLEDディスプレイで簡単に素早くパラメータ編集可能
- マイクロUSB端子でスマートフォンやモバイルバッテリーやPCから給電可能
- 包括的なUSB/MIDI実装(全パラメータのNRPN/CCコントロールとバルクロード/セーブを含む)
3396/3397
CEM3396(と後継の3397)はWikipediaによればWaveShaperを2機とVCA及びVCFをを集積したアナログ半導体です。データシートを検索してみると非公式なものが見当たりますが、それを読む限りではWaveShaperと言っているモノは外部マイコンから制御してオシレータとして機能できますので、これ1つで2DCOもVCFもVCAも実現しているのだと思われます。もちろんこのチップに内蔵されているフィルタは4poleですのでUB-1のスペックとの齟齬はありません。
なお、CoolAudioのV3397はデータシートが公開されていないので詳細不明ですが、同社のWebサイトによればVCOとだけ説明されています。CEM3397相当の機能を持っているはずですが。
Coolaudio Semiconductors - COOLAUDIO International Ltd
ちなみにV3397は1000個以上の発注なら1個当たり4.2USDとなっていますが、同グループ内のBehringerならさらに安価に調達可能と思われ、UB-1の49USDという価格設定も無理なく実現可能と思われます。
先に発表されたJP-4000のSuperSawは本家JP-8000同様に一定のロジックに従ってマイコンで生成しているように見えます。その後は本家と異なりDACを経てアナログフィルタやアンプに流れるシグナルフローと考えられますが、OB-1はDCOと言ってもアナログオシレータでフィルタもアンプもアナログですのでアナログシンセそのものであるように思えます。とは言え、アナログだからこそ温度変化に対するピッチの安定性はどうなんだとか、S/Nはどうなんだとかいった疑問もありますが49USDなら文句ないのではと思います。monotronとかSX-150に近い価格帯でUSB-MIDIに対応し、作った音色をメモリ出来るわけですから。
ところで、UB-1はモノフォニックとかポリフォニックと言った情報は出ていないようですが、構成上は恐らくモノシンセで、もし出来ても2音ポリですので、出音が良ければ複数並べて同時発音数増やすような使い方をしたい人も出てくるかもしれませんね。