BehringerがJupiterを模したSaturnを発表

 つい数日前にRolnad JP-8000を模したJP-4000が発表されたのを下記投稿で紹介したばかりですが、今度はRoland Jupiterを模したと思われるSaturnがBehringerFacebookで発表されました。
wave.hatenablog.com


 JP-4000と同時にベクターシンセのSCI Prophet VSを模したProVSが想定価格99USDで発表されていますが、Saturnも99USD予定のようです。(JP-4000にはDIN5pinのMIDI端子が無さそうですが、)ProVSもSaturnもほぼ同じフォームファクタの筐体のように見えますので、KORG Volcaシリーズのような展開を他社製品のクローン的な機材でBehringerは始めるつもりのようです。既に開発は完了しており、必要な半導体が入荷次第出荷予定とされています。
 恐らく商標上の問題から、太陽系第5惑星Jupiter(木星)に対して第6惑星Saturn(土星)の名称を充てているのだと思いますが、本家RolandにはSaturn SA-09というモデルが存在したため、このネーミングセンスは個人的にはいまいち感があります(後述)。
 なお、RolandのJupiterシリーズにはJupiter-8、Jupiter-6、Jupiter-4など複数モデルありますが、現時点では特にどのモデルを模したという情報は明示されていないようです。
 

Behringer Saturn

 Facebookの投稿にはもう少し詳しい情報が出ているので、適当に意訳してみます。
3VCOアナログポリフォニックシンセサイザー、マルチモードVCF、アルペジェーターと16ステップモーションシーケンサ

  • ポータブルでプログラマブルなアナログポリフォニックシンセサイザー
  • 80年代のJupiterシンセサイザーにインスパイアされた
  • 演奏性に優れる27タッチ鍵盤
  • 本物のVCO、VCF、VCAによる純粋にアナログな信号経路
  • VCOはSaw/Triangle/Square/Pulseの4種類の波形から選択可能(PWMも可能)
  • クラシックサウンドに望まれるレゾナンス付きビンテージマルチモードフィルタ
  • フィルタは2pole/4pole切り替え可能
  • ポリ、ユニゾンに加えアルペジェーターを搭載した幅広いプレイモード
  • 8つのメモリスロットでツマミの動きを記録できる16ステップモーションシーケンサ
  • LFOはSaw/Triangle/Square/Random波形が使用可能で、ビブラート、トレモロ、ワウワウエフェクトに使用可能(注: LFOが3機あるわけではなく、ルーティング先をVCO,VCA,VCFから選択可能という意味だと思われる)
  • 専用のADSRエンヴェロープ付きVCA(注: パネルデザインを見る限りEGは1機でVCFにEG適用する場合はVCAと同じ信号になりそうな?)
  • スマートフォンやモバイルバッテリやPCから電源供給可能なマイクロUSB端子
  • 他のシンセサイザーやドラムマシンと同期するためのシンク(Sync)入出力端子
  • 包括的なMIDI実装(全パラメータのNRPC/CC制御とバルクロード/セーブを含む)

 といった感じのことが書かれています。

 オリジナルのRoland Jupiterシリーズには最上位のJupiter-8でも2VCOで、3VCOモデルは無かったと思うので固有のクローン元の機種というのは無いのかもしれません。というかJupiter-8は2osc/voiceですが、Saturnは3VCOといっても1voice辺りの話ではなくポリモードなら1osc/voiceで3音同時発音、ユニゾンモードなら3osc/voiceでモノフォニックという意味なのかと想像されます。明記されていないので憶測ですが、価格や筐体サイズから察するに。
 というわけで、とてもJupiterクローンとは呼べない構成のため、具体的なモデル名を匂わす数字が付かないJupiterというモデル名を企てたものの、昭和から現在まで商標権を更新し続け有効に存続しているRoland登録商標のため、一つずらしてSaturnというモデル名にしたのかもしれません、完全に想像ですが。
 

発売できるのか???

 と思ったのですが、Saturnも商標登録第4673417号で楽器ジャンルで現在も有効*1Roland登録商標のようです。つまりこのまま製品化すれば商標法違反に該当すると思われ、Behringerが合法的に発売できるとは思えません…
 過去にRoland SH-101クローンをBehringerがMS-101として発売しようとして*2RolandのクレームでMS-1に改名された説を見たことがありますが、今回は型番が似てるとかいったレベルではなく、明確に商標権侵害の違法行為に該当すると思われるため、*3Rolandが訴訟を起こせば普通に勝てそうな事案のように思えます(私は弁護士等の法律の専門家ではないので実際どうなるかは解りませんが)。
 



 というわけで、面白そうな製品ではあるのですがSaturnはこのままでは市場に出せないと思います、別な製品名に変えないと。Facebookには半導体が調達できれば出荷みたいなことが書かれていますが、既に塗装・印刷が終わっている筐体パーツが大量に存在するのならそれらは廃棄(または重ね塗り)しないと商品化できないと思われます。このSaturnに関してはJupiterのクローンではなくJupiterにインスパイヤされただけのようですからSaturnみたいな安直なネーミングをせずに、全く違うネーミングで世に出すべきだったでしょう。
 Rolandは他にもJunoとかPro MarsとかPlanet Pとか惑星絡みの名前で機材をリリースしていましたから、他社はこの辺の商標権の残存状況も調べないと危ないでしょうね。(蛇足ながらJVシリーズって型番の由来が意味不明だと思ってたんですけど、JはJupiterまたはJunoに由来しVはVenusに由来していたりするんでしょうかね?)
 



以上。

*1:現時点で確認できる存続期間満了日は2023/5/16。Rolandが更新を怠らない限りさらに延長可能なはず。

*2:した?

*3:これまでに何度も自社製品のクローンを安価に製造され快く思っていないであろう