Roland UA-4FXをWindows11で動作させる

 Roland (Edirol)のAudio/MIDIインタフェースUA-4FXは2005年発売の古いデバイスですが、壊れてさえいなければ現在でも普通に使用することができる品質の機器です。ただし、公式にはWindows10までのサポートとなっており、Windows11は非対応となっています*1
 公式の情報によればWindows10に対応しながらもWindows11には非対応とされているオーディオインタフェースはUA-4FX以外にUA-1G、UA-11、UA-11-MK2、UA-25EXUA-101等があります。
 Roland - Support - 製品に関する大切なお知らせ - Windows 11 対応情報

 そもそも、Windows11は恒例のWindows10の機能アップデート版をマーケティング的な都合でリブランドしただけのような性格が強いものだと思っています。つまり、Windows10に対応した機器はWindows11でも同じドライバで動作するのではないか?と思ったので試してみました。
<<警告>>
本投稿に記載の内容はメーカーサポート外の行為です。
本投稿に記載の内容を実施して如何なる損失・損害が発生しても著者は一切の責任を負いかねます。
実施する場合は自己責任にてお試しください。

 

結論

 先に結論を明示しておきます。

  • UA-4FXはWindows11で動作させることが可能(制約あり)
    • Windows11のセキュリティ機能を一部無効化する必要がある

 以下に詳しく書いておきます。
 

前提環境

 

ドライバインストール手順

  1. UA-4FXをPCにUSB接続する
  2. (Windows10と同様に)自動でドライバインストールがバックグラウンドで始まる
  3. 「プログラム互換性アシスタント」ダイアログが表示される
    「プログラム互換性アシスタント」「このデバイスにドライバーを読み込めません」ダイアログ

    このダイアログから特に対策できることはありませんので、[閉じる]を押下。
  4. [デバイスセキュリティ]を開く*3
  5. バイスセキュリティ画面で[コア分離の詳細]をクリック
    Windowsセキュリティ-デバイスセキュリティ画面
  6. コア分離画面で[メモリ整合性]をOFFにする
    Windowsセキュリティ-コア分離画面

    ※Windows11をクリーンインストールした環境ではデフォルトではONになっています。既にOFFの場合はこの手順を踏む必要は無く、「プログラム互換性アシスタント」ダイアログは表示されずに既に自動でドライバインストールが完了しているはずです。
  7. ユーザアカウント制御ダイアログが開くので、セキュリティリスクを認識したうえで[はい]を押下
    「ユーザアカウント制御」ダイアログ
  8. コア分離画面の[メモリ整合性]がOFF表示に変わり「この変更を適用するには再起動してください。」の表示があるのでPCを再起動する
    Windowsセキュリティ-コア分離画面(再起動前)

 (UA-4FXを接続したまま)再起動後には再び自動でドライバインストールがバックグラウンドで開始され、少し待つとドライバインストールが完了します。
 

ドライバインストール完了後

インストール確認
  • (Windows10の場合と同様に)スタートメニューに[UA-4FX Driverの設定]へのリンクが追加されています。
    UA-4FX Driverの設定
  • バイスマネージャでもUA-4FXが正常に認識されていることが確認できます。
    バイスマネージャのUA-4FX表示
  • ドライバのプロパティからも正規の署名されたドライバがインストールされていることが確認できます。
    Windows11環境にインストールされたUA-4FXドライバのプロパティ

    ※この日付はWindows10用のUA-4FXドライバと同じものです。

 

コア分離-メモリ整合性を元に戻…せない

 UA-4FXドライバをインストールした状態では、以下のようにコア分離-メモリ整合性のスイッチをONに戻すことはできません!

Windowsセキュリティ-コア分離-メモリ整合性がOFF状態の表示
Windowsセキュリティ-コア分離-メモリ整合性をOFFからONに変更を試行
Windowsセキュリティ-コア分離-メモリ整合性の互換性のないドライバを表示

 RDWM1061.SYSはUA-4FXのドライバの実体の一部ですが、Windows11のセキュリティ機能の一つである「メモリ整合性」と互換性がないため、「メモリ整合性」を再度ONに戻すことができないのです(かつてWindows10非対応機器をWindows8Windows8.1のドライバで動作させる場合に、INFファイルを編集して「ドライバー署名の強制を無効にする」にしてインストールした後に、ドライバ署名の強制を再有効化できましたが、それとは全く別の話です)。

 つまり、Windows11でUA-4FXを使用する場合には「メモリ整合性」がOFF状態でしか使用できないという制約があります。
 それでは困るという場合には以下のようにUA-4FXドライバをアンインストールすれば「メモリ整合性」をONに戻せます。
 

ドライバアンインストール

 デバイスマネージャから表示したUA-4FXのドライバのプロパティ画面に、[デバイスのアンインストール]ボタンがありますが、これでは完全にはドライバが消えません

UA-4FXのプロパティ
 「アプリと機能」*4からUA-4FX Driverを選択しアンインストールすると綺麗に消えます。
UA-4FXドライバのアンインストール
 ドライバアンインストール後にはWindowsセキュリティ-コア分離-メモリ整合性のスイッチをONにすることが出来るようになっています。
 

「メモリ整合性」機能とは

 コア分離(Core isolation)やメモリ整合性(Memory integrity / Hypervisor-protected Code Integrity (HVCI) )についてのMicrosoft公式の説明は以下の少ない情報しかありません(日本語版だともっと情報が少ないので英語版へリンクを貼っています)。
Core isolation
 ざっくりと、「HVCIとしても知られるメモリ整合性はWindowsのセキュリティ機能の一つで、悪意のあるプログラムがコンピュータを乗っ取るために低レベルなドライバを利用するのを難しくする」「ハードウェア仮想化を利用して分離環境を作ることでメモリ整合性は機能する」といった説明があります。つまり、仮想化環境から利用できるようなドライバの作りになってないと、「メモリ整合性」と非互換になるのであろうと思われます。オーディオインタフェースと仮想化なんて無関係っぽい感じがしますが、Windows11に正式対応しているドライバは何らかの対応が為されているようです。例えばWindows11対応のQUAD-CAPTURE(UA-55)の場合には「メモリ整合性」がONのままで正常にドライバインストールが自動で行われました。

 この機能、実は現行のWindows10にもあります*5が、デフォルトではOFFになっているはずです。故に、Windows11でOFFにした場合には多くのWindows10環境相当(以上)のセキュリティレベルは維持できるであろうと予想されます。そのリスク評価は各個人・組織によって異なるでしょうから、設定変更は自己責任にて行ってください。
 なお、Windows10でコア分離-メモリ整合性をONにしようとすると、Windows11の場合と同様にUA-4FXのドライバ(だけではなく、私の環境ではその他のドライバも大量に)に互換性が無いと表示されメモリ整合性をONにすることはできませんでした。
 つまり、Windows10対応ながらWindows11非対応とされているRoland (Edirol)のオーディオインタフェースは、正確にはWindows11と互換性が無いのではなく、Windows10の初回リリース以降に追加された「メモリ整合性」機能と非互換であるという意味だと解釈すればよさそうです。
 

 理屈としてはUA-4FX同様にWindows10までは正式対応しているUA-1G、UA-11、UA-11-MK2、UA-25EXUA-101等も「メモリ整合性」がOFFならWindows11で動作させることができると思われますが、試したわけではありませんので悪しからず。
 



以上。

*1:※AdvancedDriverスイッチのあるRoland (Edirol)のオーディオインターフェースはAdvancedDriver=OFFにすればクラスコンプライアントなオーディオインタフェース(16bit/44.1kHz固定、ASIO非対応、MIDI I/F使用不可)としてOS標準ドライバで使えるはずですが、本投稿はAdvancedDriver=ON状態で使用する話です。

*2:Windows10からのアップグレードではない

*3:スタートメニューを開いて、Device Securityと入力すると素早く辿り着けます

*4:スタートメニューを表示し、Uninstallと入力すると素早く辿り着けます。

*5:Windows10リリース当初は無かった。