KORG tinyPianoのMIDI改造

 KORG microPianoのMIDI改造を去年行いましたが、今度はtinyPianoでも成功しました。
wave.hatenablog.com

<<警告>>
分解するとメーカー保証は失効し有償修理も断られる可能性があります。
本投稿を参考に改造を試みて、いかなる損害が発生しても著者は一切責任を負いません。自己責任の意味が解る方のみお試しください。

 

tinyPiano内部

KORG tinyPiano inside overview
KORG tinyPiano inside overview

↑天板を開けたtinyPiano内部はメイン基板(KLM-3317)とスピーカーがあります。他にはキーボードユニット、電源などのスイッチやボリューム等が付いたスイッチ基板(KLM-3318)があるだけです。
 

メイン基板

KORG tinyPiano mainboard (KLM-3317)
KORG tinyPiano mainboard (KLM-3317)

↑音源からアンプまで、ほぼ全ての主機能がKLM-3317に実装されています。
 観察してみると以下のようなことが解ります。

音源
音源チップ(IC10)にはKORG銘のTG-iが使用されている。(microPianoと同じ)
ROM(IC13)にはX12340のラベルが貼られている*1※ラベルの下にはMXIC(台湾マクロニクス*2 )の刻印が確認できる。
DAC
AKM4388AET(microPianoと同じ)
※ステレオ対応
ヘッドフォンアンプ
ROHM BH3548(microPianoと同じ)
※ステレオアンプ
ヘッドフォン出力
TIP=L=BH3548 Pin#7=OUT2
RING=R=1=BH3548 Pin#1=OUT1
SLEEVE=GND
※仕様ではステレオミニプラグながらモノラル出力とされているが、TG-i⇒DAC⇒AMP⇒ヘッドフォン出力まで一貫してステレオに対応した回路構成に見える。
内蔵スピーカーアンプ
AKS
TI 818
A545
の表記が見える20Pinのチップが使用されているが詳細不明(microPianoはTIのTPA2012D2なので異なる)

 かつてmicroPianoを購入する際、ミニ鍵盤とは言え61鍵は使わない時には邪魔なのでtinyPianoと迷ったのです。もし鍵盤数が違うのと内蔵スピーカーがステレオかモノラルかの違いだけで同じ音が出力されるならtinyPianoでいいやと。結局は、仕様を眺めていたらtinyPianoはモノラル出力であることが判ったのでmicroPianoを購入したのでした。
 ですが、メイン基板を眺めてみるとtinyPianoってほぼmicroPianoなのでは?と思える構成であることが判りました(microPianoのメイン基板はKLM-3048Cなので、基板自体は別物です)。実際のところどう違うのかは後述。
 

MIDI改造

KORG tinyPiano KLM-3317 CN4A pinout (MIDI IN/OUT)
KORG tinyPiano KLM-3317 CN4A pinout (MIDI IN/OUT)

↑未実装のCN4Aのシルク印刷があるパターンでMIDI入出力できます。2mmピッチですので、PHコネクタが適合します。
 画像左から1,2,3,4ピンと数えて、以下のピンアサインとなっています*3

Pin# Purpose Memo
1 GND -
2 MIDI IN (3.3V) Pulled up, connected to TG-i Pin#52
3 MIDI OUT (3.3V) Pulled up, connected to TG-i Pin#53
4 Vcc (+5V) -

 というわけで、今回も手抜きをしてESP32でBLE-MIDIに対応させました。

 なお、画像をよく見ると判るのですが、CN4Aのスルーホールには出荷時状態で既に半田が流し込まれています。この半田をどうにかしないとPHコネクタを取り付けることができません。しかも基板にはLead Freeの表示があることから無鉛半田が使われているようで、融点が高く私の使用している半田ごてではなかなか溶けてくれませんでした。特に2Pinと3Pinは比較的短距離でTG-iに繋がってますので、長時間加熱し続けると熱破壊のリスクがあり注意が必要です。
 PHコネクタを取り付けることに拘らず、スルーホール上にはんだを盛り増しして、ポリウレタン線などを直接はんだ付けする方が低リスクで作業できるかもしれません。
 

MIDI改造後に判明したtinyPianoの仕様

コントローラ部
  • NoteOn velocity: 対応
  • NoteOff velocity: 固定(64)
  • NoteNumber@左端Key: 60
  • NoteNumber@右端key: 84
  • MIDICH#: 固定(1)
  • 音色切替の都度、
    CC#0=121
    CC#32=0 or 1 or 2
    PC#=n
    CC#7=127
    の順で2回繰り返し送信される。(microPianoと同様)

 

電源回り
  • CN4Aの+5V端子⇒microPianoと異なり本体の電源S/Wと連動する
  • 仕様に明記されているが、オートパワーオフ機能有り(microPianoと異なる)
    • 何も演奏しないと30分で電源OFFになる(説明書によると無効化不可)
    • 内蔵KeyboardまたはSONGボタンで演奏するとカウントダウンがリセットされる
    • CN4AのMIDI経由で演奏した場合はカウントダウンが継続される(local offでも解除不可)
      • メイン基板を取り出して音源モジュール化すると、30分で電源が切れてしまう

 

音源部

 本体から選択可能な全25音色のProgramChange#、BankSelectMSB/LSBは以下の通り。

Sound PC# CC#0 CC#32
Toy Piano 3 121 1
Honky Tonk 3 121 0
Music Box 1 10 121 0
Music Box 2 10 121 1
Club E.Piano 4 121 1
Tine.E.Piano 4 121 0
Harpsichord 6 121 0
Vibraphone 11 121 0
Marimba 12 121 0
Celesta 8 121 0
Karimba 108 121 0
Steel Drum 114 121 0
Grand Piano 0 121 0
Jazz Piano 1 121 0
Pipe Organ 19 121 0
Electric Organ 16 121 0
Street Organ 20 121 1
Flute 73 121 0
Accordion 21 121 0
Strings 48 121 0
Harp 46 121 0
Tublar Bell 14 121 0
WeddingOrch.Bell 19 121 1
Church Bell 14 121 1
Snow Crystal 10 121 2

 ⇒これらの音色名、ProgramChange#、BankSelectMSB/LSBの組み合わせは全てmicroPianoと同じ(実際の出音は異なる)。

 逆に、microPianoにしか存在しない音色*4は以下の通り。tinyPianoにこれらのProgramChange#、BankSelectMSB/LSBを送信しても、microPianoの音色は鳴らない(つまり波形ROMが異なる)。

PC# CC#0 CC#32 Sound
0 121 1 OctDown Piano
0 121 2 OctUp Piano
0 121 4 Morning OrchPiano
0 121 3 Piano&Strings
4 121 2 Trem.E.Piano
7 121 0 Clav.
6 121 1 Harpsi&Strings
20 121 0 Reed Organ
20 121 2 Theatre Organ
48 121 1 Silky Strings
48 121 2 Cinema Strings
14 121 2 Merry Xmas

 BankSelectMSB/LSB=0/0に固定して、ProgramChangeを0~127で総当たりして音色を探してみたところ、音色が存在するPC#はmicroPianoと同一だが、同じ番号でも出音が異なる(波形レベルで異なる)。例えばPC#7はmicroPianoではClavi音色だが、tinyPianoではWoodwind系のような音がする*5

 コントローラの対応という意味では、microPianoと同様にVolume, Pan, Reverb, Chorus, Cutoff FrequencyといったControl Changeにも反応しますし、PitchBendにも反応します。
 

tinyPianoは結局モノラルなのか?

  • 以下の例外を除く全音色が左右同一波形を出力(つまりモノラル)
    • PC#004, BankSelectMSB=121, BankSelectLSB=001のClub E.Pianoはステレオ音色(トレモロの位相が左右で異なる)
    • 本体から選択不能な隠し音色のPC#007 or 020, BankSelectMSB=LSB=0の音色もステレオ音色(KeyTrackで低音域から高音域にかけてパンが変わる)
  • 但し、MIDI改造後にMIDI CC#10(Panpot), CC#91(Reverb send level), CC#93(Chorus send level)を操作すればステレオ感を得ることができないわけではない

 

microPianoとtinyPianoの互換性

  • tinyPianoではmicroPianoと同じ音は出ない(同じ名前の音色でも、microPianoは左右異なるステレオ波形が多用されているがtinyPianoはモノラル)
  • 逆にmicroPianoがtinyPianoの全音色を含んだ完全上位互換という訳でもない
    • 普通の楽器音に関してはmicroPianoがあるならtinyPianoは不要でしょう
  • 同じ音源チップ(TG-i)を使用しているので各種コントローラへの反応は同様で、組み合わせているROMが異なるために出力音が異なると考えられる

 



以上。

*1:恐らくKORG Part No.を意味する。

*2:ROMの大手受託製造業者。

*3:つまりPHコネクタを取り付ければ、microPianoのCN2と同じです。

*4:ショートフレーズ音色を除く。

*5:tinyPianoにClavi系音色は存在しない