AMD Ryzenの(コスト)パフォーマンスが凄そう
2017/2/22にAMDの新CPU Ryzenが発表されました。失礼ながら、近年のAMDのCPUは残念な印象でしたが、今回は期待できそうです。
プレス発表の様子
www.youtube.com
↑既に国内各種ニュースサイトでもRyzenは紹介されていますが、この動画内で言及されていることが殆どです。AMD CEOのLisa Su氏がプレゼンしていますが、日本人にも聞き取りやすい英語ですので英語学習にもお勧めです。
以下、この動画の内容も踏まえRyzenについて記載します。
基本情報
表記
公式動画のスクリーン表示を見る限り、"Ryzen"だったり"RYZEN"だったりとバラバラのようにも見えます。
intelのi7に相当するラインアップが"Ryzen 7"シリーズになるようですが、このようにシリーズを表す場合は"Ryzen"表記、そうではなくブランド全体を表す場合は"RYZEN"と使い分けるのかもしれませんが定かではありません。
なお、動画中ではRadeonには商標登録を意味する™表記が付いていますが、Ryzenには付いていませんでしたので、まだ商標登録手続き中なのかもしれません。
実際にJ-PlatPatで検索してみたところ、商標出願2016-118435で「標準文字商標:RYZEN、称呼(参考情報):ライゼン,リゼン」としてAMDより出願されていますが審査中ステータスとされています。
読み方
公式動画のLisa Su氏の音声から判断する限り、"Ryzen"の読みは「ライゼン」に相当するようです。「リゼン」的な発音では全くありません。
上昇を意味する"risen"と同じ発音のネーミングになっていますが、その通りのパフォーマンスになっているようです。
もちろん、Ryzenのアーキテクチャが"Zen"であることもこのネーミングの由来かも知れません。
「Zen」のコア・アーキテクチャー
製品
2/22に発表されたのはRYZEN DESKTOPラインの"Ryzen 7"シリーズの3SKUだけです。1800X, 1700X, 1700の3製品の簡単なスペックは以下の通り。
SKU | Core; Thread | Clock / Boost |
---|---|---|
Ryzen 7 1800X | 8 Core; 16 Thread | 3.6GHz / 4.0GHz |
Ryzen 7 1700X | 8 Core; 16 Thread | 3.4GHz / 3.8GHz |
Ryzen 7 1700 | 8 Core; 16 Thread | 3.0GHz / 3.7GHz |
プレゼン中ではそれぞれが以下のようにintel製品の価格と性能を強く意識した比較がされていました。基本的に「より高性能なCPUをより安く」というメッセージが感じられます。
Ryzen 7 1800X
"THE NEW 8-CORE DESKTOP PROCESSOR PERFORMANCE CHAMP FOR HALF THE PRICE"と題しています。「新しい8コアCPUの性能の王者が半額で」的な感じ。
CPU | Price (in USD) |
---|---|
Core i7 6900K | $1050 |
Ryzen 7 1800X | $499 |
比較的どうでもいいことですが、6900Kは"sixty nine hundred K"、1800Xは"eighteen hundred X"(Kはケイ、Xはエクス的発音)で読まれて*1いました。
なお、AMDのHP中では"WORLD'S FASTEST 8-CORE DESKTOP PROCESSOR"と、比較的トーンを押さえた表現になっています。なお、TDPは95Wだそうです。
http://www.amd.com/en-us/innovations/new-horizon
Ryzen 7 1700X
"MORE CORES, THREADS, AND PERFORMANCE FOR LESS"と題しています。「より多くのコア数、スレッド数、そしてより優れた性能がお安く」みたいな感じ。
CPU | Price (in USD) |
---|---|
Core i7 6800K | $425 |
Ryzen 7 1700X | $399 |
こちらはAMDのHP中では"MERGING THE WORLDS OF ENTHUSIAST, GAMER, AND CREATOR"ということで、「熱狂的なゲーマーやクリエータの世界を統合する」的な感じでしょうか。1800Xと同じくTDP95Wだそうです。
Ryzen 7 1700
"SIGNIFICANT MULTI-THREADED ADVANTAGE FOR LESS"と題され、「膨大なマルチスレッドの利点をお安く」みたいな感じ。
CPU | Price (in USD) |
---|---|
Core i7 7700K | $350 |
RYZEN 7 1700 | $329 |
こちらはAMDのHP中では"WORLD'S LOWEST POWER 8-CORE DESKTOP PROCESSOR"と低消費電力をアピールしています。実際1800Xや1700Xより30%以上も低い、TDP65Wとなっています。
一見、TDP65Wのどこが低消費電力やねん、という感じもしますが8コアであることを考えれば凄いことです。TDPが低いノートPC向けのプロセッサと比較出来る程度に凄いです。例えばインテル最新のモバイル向けi7-7660U(2 Core; 4 Thread, 2.5 GHz / 4 GHz)がTDP15Wです。単純計算でコア数が4倍でTDPは4.3倍となりますが、ベースクロックが1.2倍速く、そもそもノート向けではなくデスクトップ向けCPUでこの数値ですからね。高負荷を与えることが殆どない用途で使うなら無駄な電力消費も気になるでしょうが、高負荷状態での稼働率が高いサーバやワークステーションとして使うマシンにはかなり魅力的ではないでしょうか。
インテルの対抗
2/22のPCWorldの記事によれば、以下の通り一月初頭からインテルの公式な価格表は変化していないとされています。
Intel, however, has several opportunities to respond, including simply lowering its prices. Intel’s latest official processor price list remains unchanged since early January.
AMD Ryzen price and release date revealed
一方で2/25のWCCFTECHの記事によれば、アメリカのPCパーツ販売店MicrocenterでのIntelプロセッサの価格が正気ではない(insane)ほど下がったと伝えられています。
この値下げがintelの価格改定によるものか、ショップがリベートを見込んで先走ったかなどは不明ですが、一定の目安にはなるかもしれません。
Over at Microcenter, we can see a large array of Intel processors that have undergone insane price cuts.
Intel Begins Price War With AMD Ryzen - Massive Price Cuts on Intel Chips By Retailers
前述のAMDのプレゼン中でRyzen 7と具体的に比較されたCPUの新価格と値下げ額を引用すると以下の通り。
SKU | NewPrice | Note |
6900K | $999 | $200 Price Cut |
6800K | $359 | $140 Price Cut |
7700K | $299 | $80 Price Cut |
単純に値下げ後のintel CPUの価格とRyzen 7の価格「だけ」で比較するならば、最上位のRyzen 7 1800Xは断然安いままですが、1700Xと1700は少し高くなります。
AMDの主張通りであるならば比較対象CPUより高性能であるため、価格差の分だけ単純に割高という判断もできません。むしろこの程度の差額で性能向上メリットを享受できるのなら割安と捉えることもできるでしょうし。
まとめ
安価で高性能なプロセッサがAMDから発売されることで、かつてAMDとintelがまともに競争していた頃のように今年は自作PC界隈が盛り上がってくるかもしれませんね。自作に限らず、ハイパフォーマンスなPCの価格低下というメリットも出てくるかもしれません。
また、ノートPC向けのRYZEN MOBILE*2も今年発表される予定のようですので、個人的にはそちらも期待したいところです。
以上。
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