YI M1についてダラダラと書いていますが、今回はYI M1の4K映像撮影機能について記載します。
YI M1の4K映像の仕様
- Container: MP4
- Codec: H264 High profile
- Colorspace: YUVJ420P (16~235で色を扱うYUV420Pとは異なり、0~255のレンジで扱う)
- GOP:30
- GOP Structure: 1x I frame and following 29x P frame
- Framerate: 29.97 fps
- Average bitrate: 76 mbps
スペックシートには詳しく書いていませんが、記録されたファイルを解析すると上記の通りでした。
PCで正常に再生できなかったため当初はSDカードまたはカメラ本体の記録不具合の可能性を疑ったのですが、全くの見当違いでした。
当該PCはCore i5 3337U搭載機でディスクリートGPUは搭載しておらず、動画再生時はIntel HD Graphics 4000のハードウェアデコーダ又はCPUでソフトウェアデコードのうえ再生することになります。YI M1の記録映像の再生時はCPU負荷100%で張り付いた状態となっていました。このため、デコード含め再生処理が間に合わずに音飛びやフレーム落ちが発生したと考えられます。事前にFull HDにリスケールしたファイルであれば、コマ落ち音飛び共に発生せずに再生できる(もちろんCPU負荷が100%で張り付くことも無い)ため、映像ファイルが損傷していたわけではなく、単にPCの能力が不足しているだけだと判断できます。
(参考)ASUS Zenfone3の4K映像の仕様
- Container: MP4
- Codec: H264 Baseline profile
- Colorspace: YUV420P
- GOP:30
- GOP Structure: 1x I frame and following 29x P frame
- Framerate: 29.97 fps
- Average bitrate: 42 mbps
マイクロフォーサーズのミラーレス機とスマートフォンを比較するのは酷ですが、画質を比較するために挙げたのではありません。
このZenfone 3で記録された4K映像なら前述のPCでも正常に再生することができました。ビットレートが約1.8倍も違うのと、システムリソースが潤沢ではない端末でも再生可能なBaselineプロファイルであることが主因だと思われます。
4K映像撮影時コントロール
- AF-Sが使えません。AF-S状態から録画開始してもAF-Cに切り替わります。
- ダブルレンズキットのYI 42.5mm F1.8ではMF状態でも録画開始するとAF-Cに切り替わってしまいます。
- このレンズだけフォーカスリング(エンコーダ)が無いため特殊なのかもしれません。
- OlympusやPanasonicのレンズを取り付けてMF状態で録画開始すると、MFが維持されます。
- フォーカスを固定して撮影したければ、AF-Sでピントを合わせた後MFに切り替えてから録画開始、或いはMFでピント合わせの必要があります。
- 録画中にタッチフォーカス的な機能はありません。
- 録画中に露出補正や絞り・シャッタースピード変更はできません(録画開始直前の設定値が反映されているのかも不明)。
- 電子式手ぶれ補正は効きません(4K解像度設定時は当該メニューが非活性化)。
- 録画ボタンを押してから録画開始までに1~2秒程度のタイムラグがあります。
少なくとも現状のファームウェアでは、総じて使いやすくありません(主観)。
画角変化
YI M1で4K映像を撮影すると、静止画撮影時より有意に画角が狭くなります。この際の画角変化についての公式な説明は見当たらないのはどうしたものかと思いますが、事象自体は他メーカの製品でも見られる現象です。
センサーの解像度と映像出力時の解像度に差異がある場合、非整数倍の画素混合による画質低下を嫌って出力映像と同じ解像度の領域のみをクロップして使用するためです。
YI M1はマイクロフォーサーズフォーマットのSONY IMX269をイメージセンサに採用しており、5200x3902pixelがセンサーRAWとして得られます。故に中心部から4K(3840x2160 pixel)解像度に相当する領域だけを利用しているために画角変化が発生していると考えられます。画素混合していない前提で水平画角について計算してみると、以下のような画角変化となります。
focal Length [mm] | IMX269 4K horizontal angle [deg] | M4/3 horizontal angle [deg] |
---|---|---|
7.5 | 80.8 | 98.1 |
14 | 49.1 | 63.4 |
20 | 35.4 | 46.8 |
25 | 28.7 | 38.2 |
30 | 24.0 | 32.2 |
45 | 16.2 | 21.8 |
50 | 14.6 | 19.6 |
表の値を覚えられる自信が無いのでクロップファクター*1を計算してみると、約2.8になりました。マイクロフォーサーズなので静止画なら約2ですが、4K映像記録時には約2.8と大きく変化することが解ります。Nikon CXフォーマットなど1inchセンサのクロップファクターが約2.7ですからそれよりも大きな値です…あ、1inchセンサより微妙に小さい面積しか4K映像撮影時には使われていないということになりますね(仮にGX8やPenFも同じイメージセンサであるならば、同様の画角変化・クロップファクターになると思いますが、数値を明示した仕様詳細は見当たりません)。
4K記録映像の加工
※本体内加工機能はありません。以下、PCを使った作業です。
フレーム切り出し
↑ffmpegで切り出したフレームを掲載用に縮小。
4K(約800万画素)だけあって解像感は縮小するWeb掲載用には十分。76mbpsもあるのでIフレームでなくても安心して切り出して使える(Zenfone 3は42mbpsなうえ、そもそも1/2.8型センサのため切り出して一枚絵として使うのはビミョー)。
ピクセル等倍切り出し
↑ffmpegで切り出したフレームから640x640でクロップ。
例示した画像は被写界深度が浅くあまり良いサンプルではないのですが、ピントが合ってる領域はそれなりにディティールが残っているため、等倍でも用途によっては使えるかも。
そもそもこのような用途ならPanasonicが4K PHOTOとして静止画切り出し機能を訴求しており、ビットレートも100Mbpsと高いため大人しくPanasonic機を使うことを推奨しますけど。
任意領域を切り出して映像化
↑ffmpegで切り出したフレームから右上の1920x1920領域を切り出してGIF化。
元の解像度が3840x2160なので、任意の領域を切り出して小さなGIFアニメを作るなんて用途にも適しています。
同様に、クロップ範囲を徐々に変えながらFullHD解像度(1920x1080)まで連続的にクロップすれば、FullHD解像度でズームイン/アウトする映像を作ることもできるし、撮影時カメラのセッティングが傾いてしまったような場合でも傾きを補正して16:9でクロップ後FullHDにリスケールすれば傾きのないFullHD映像を作るようなこともできます。と言った活用を考えると、少し広角側で撮影しておけば素材利用時には便利かもしれません。
4Kで再生する環境が無くても、それ以下の解像度向けの映像を製造するソースとして自在に活用できますね!
雑感
以下、主観の塊です。
4K映像記録可能なマイクロフォーサーズカメラとして評価すると、少なくとも現状のファームウェアでは全く使いやすくはありません。
まともに撮ろうとするとタッチパネルでフォーカスモードを頻繁に切り替える必要があって面倒です。また、モニタには静止画の画角でプレビュー表示されており、録画ボタンを押して録画開始された後に画角が狭くなったスルー画が表示されるため、意図した構図と違うために撮影止めて撮り直しといったフラストレーションが溜まります。また、撮影中の露出補正や絞りのコントロールが効かないためカメラ任せにするしかなく、意図した映像を収めるのは難しいです。
カメラ任せでテキトーに撮ってテキトーな映像が撮れれば十分というライトユーザーならスマートフォンの方がよっぽど便利ですし、このカメラを4K映像記録可能なカメラとして薦められるユーザ層がちょっと思いつきません。本格的にマイクロフォーサーズで4K動画を取りたい人には今ならPanasonic GH5一択でしょうけれど、そこまで本格的じゃなくてよい(或いは予算が厳しい)けどキチンと撮りたいという条件でもPanasonic機がお勧めできるのではないでしょうか。型落ちとなったDMC-G7辺りなら安価になってますしね。
Panasonic ミラーレス一眼カメラ ルミックス GH5 ボディ ブラック DC-GH5-K
- 出版社/メーカー: パナソニック
- 発売日: 2017/03/23
- メディア: Camera
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Panasonic ミラーレス一眼カメラ ルミックス G7 ボディ 1600万画素 ブラック DMC-G7-K
- 出版社/メーカー: パナソニック
- 発売日: 2015/06/25
- メディア: エレクトロニクス
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普通の写真(静止画)については別途記載する予定ですが、これまでにボロクソ気味に書いてしまったので予めフォローしておくと、三脚を常用し風景など動体の少ない被写体を撮るフォトグラファーで、できるだけ安価に20MPの高解像度なマイクロフォーサーズ機が欲しいという要求にはマッチすると思います(ただし使いやすくはありません)。
以上。