Let's note AX3のmSATA SSDを換装した
Let's note AXシリーズは全モデルSSDを搭載しています。AXは既に終わったシリーズですが、登場した当時はLet's noteシリーズとしては薄型タイプの筐体でした。その薄さを実現するために、ストレージにはmSATAタイプのSSDが利用されていたり*1、メモリがオンボードで実装されており増設・交換不能だったりします。
ユーザーとしては有り難いことにSSDの価格は下落する一方ですが、一般の2.5inch HDD相当の形状のSATA接続のSSDやM.2の製品と異なり、mSATA接続のSSDはほとんど新製品も登場せず流通量も少ないようで、かなり割高であるかそもそも取り扱いが無いことも多くなっているように感じます。
そんな中、中古抜き取り品*2ながらもmSATA SSDを比較的安価に入手できたので、AX3のSSDを換装しました。
CF-AX3の底板は、やたらと数が多いネジを外すと普通に外れます。ただし、天板側と底板にまたがるようにバッテリ取り付け部に張られている銀色のテープが存在し、剥がすとVOIDマークが現れます。今更メーカー保証が有効なAXシリーズを使用している方はいないと思いますが、メーカー保証は無効になります。
元のSSD
Windows上からも確認できますが、AX3にはTOSHIBA THNSNJ128GMCTが搭載されていました。
画像でも判るように、SSD基板上のラベルの上にテープが貼られていますので、ラベルを破らないように注意しつつテープを剥がします。そして、画像右側の2本のネジを外すとSSDが浮き上がってくるので、外して交換します。
換装したSSD
容量256GBのSAMSUNGのMZMPD256HAGM-000H1が入手できたので、これに換装しました。取り付けはTHNSNJ128GMCTを取り外した時とは逆に、コネクタに差し込んでねじ止めしてテープを貼るだけです。
裏面の画像から判るように、搭載されているフラッシュメモリはSAMSUNGのK9PHGY8U7A-CCK0で、裏面の2つと表面のラベル下の2つで合計4チップ、すなわち64GB×4=256GBとなる計算です。
なお、表面のラベル上にはSamsungロゴは見当たりません。P/N: MZMPD256HAGM-000H1と印字されていたり、重ねて貼られているラベルでよく見えませんが、下の方にHP P/Nという文字が見えています。どうやらこれはHPのパーツで、HP製品からの抜き取り品のようです。
一方、Model: MZ-MPD2560/0H1という表記も確認できます。MZ始まりなのでこちらがSamsungのSSD型番のようですが、該当する公式な製品情報を見つけることはできませんでした。恐らくはPCベンダー向けの組み込み用として出荷されたモデルのようです(前述のHP以外にも枝番違いでDELL向けなども存在するようです)。
公式な製品情報が見つけられないので搭載チップからスペックを探ってみると、K9PHGY8U7A-CCK0はMLC NANDで、Samsung自社ブランドSSDの840 Pro(2012年の製品)に搭載されているものと同じようです。だいぶ古いですが、Let'snote AX3も2013年から登場したシリーズなので、古さ自体は特に気にする必要はないかと思います。
ベンチマーク
換装前後でのCrystalDiskMarkによるベンチマーク結果を掲載します。
Sequential Read (Q= 32,T= 1) : 551.726 MB/s Sequential Write (Q= 32,T= 1) : 504.563 MB/s Random Read 4KiB (Q= 8,T= 8) : 374.837 MB/s [ 91512.9 IOPS] Random Write 4KiB (Q= 8,T= 8) : 190.553 MB/s [ 46521.7 IOPS] Random Read 4KiB (Q= 32,T= 1) : 152.272 MB/s [ 37175.8 IOPS] Random Write 4KiB (Q= 32,T= 1) : 111.467 MB/s [ 27213.6 IOPS] Random Read 4KiB (Q= 1,T= 1) : 16.380 MB/s [ 3999.0 IOPS] Random Write 4KiB (Q= 1,T= 1) : 55.340 MB/s [ 13510.7 IOPS]
Sequential Read (Q= 32,T= 1) : 560.140 MB/s Sequential Write (Q= 32,T= 1) : 436.294 MB/s Random Read 4KiB (Q= 8,T= 8) : 381.745 MB/s [ 93199.5 IOPS] Random Write 4KiB (Q= 8,T= 8) : 272.265 MB/s [ 66470.9 IOPS] Random Read 4KiB (Q= 32,T= 1) : 145.014 MB/s [ 35403.8 IOPS] Random Write 4KiB (Q= 32,T= 1) : 134.329 MB/s [ 32795.2 IOPS] Random Read 4KiB (Q= 1,T= 1) : 25.119 MB/s [ 6132.6 IOPS] Random Write 4KiB (Q= 1,T= 1) : 61.395 MB/s [ 14989.0 IOPS]
整理すると下表の通り。
Condition | Before [MB/s] | Before [IOPS] | After [MB/s] | After [IOPS] | Ratio |
---|---|---|---|---|---|
Sequential Read (Single thread, 32 queues) |
551.726 | - | 560.14 | - | 101.53% |
Sequential Write (Single thread, 32 queues) |
504.563 | - | 436.294 | - | 86.47% |
Random Read 4KiB (8 threads, 8 queues) |
374.837 | 91512.9 | 381.745 | 93199.5 | 101.84% |
Random Write 4KiB (8 threads, 8 queues) |
190.553 | 46521.7 | 272.265 | 66470.9 | 142.88% |
Random Read 4KiB (Single thread, 32 queues) |
152.272 | 37175.8 | 145.014 | 35403.8 | 95.23% |
Random Write 4KiB (Single thread, 32 queues) |
111.467 | 27213.6 | 134.329 | 32795.2 | 120.51% |
Random Read 4KiB (Single thread, Single queue) |
16.38 | 3999 | 25.119 | 6132.6 | 153.35% |
Random Write 4KiB (Single thread, Single queue) |
55.34 | 13510.7 | 61.395 | 14989 | 110.94% |
シーケンシャルライトが大きく速度を落としているのと、シングルスレッド32キューのランダムリードの2条件のみ速度低下が見られますが、他は微増または大幅に速度向上しています。
正直なところ単にストレージ容量の増加だけが目的で換装しており、パフォーマンス向上は期待していなかったのですが、ランダムアクセス性能が軒並み向上しているので使用感はよくなるのかもしれません。
SSDの状態
換装したSSDは新品ではないため、SMART情報も確認しておきます。 使用時間6183時間と出ており、交換前のSSDより長期間使われていた個体に交換したことになります。が、未使用予備ブロック数は100(恐らく単位は%)と出ているので、今後使用を重ねてNAND素子の寿命を迎えるセルがでてきても、まだまだ新品同様に代替可能と判断してよさそうです。その他の項目も特に異常値らしきものは無さそうなので、特に問題なく使用できそうです。
おまけ
ここからはSSD関係ありません。AX3を開けたついでに目についた内部の各種パーツも記録しておきました。
内蔵リチウムイオンバッテリ
AXシリーズの特徴の一つでもあるデュアルバッテリーですが、内蔵されていて取り外せない方の型番等が確認できました。7.2V 2200mAh(typ)で15Whとなっています。