KORG N1RをACアダプタ欠品の状態で入手しました。ところが、N1Rの電源入力はあまり一般的とは言えない端子形状をしています。
この端子に適合するN1R用の純正ACアダプタを調べてみるとKA161と出ますが、既に販売終了・代替なしとなっています。
AC ADAPTER | KORG (Japan)
というわけで、KA161の代替品を探すことにしました。
<警告>
本投稿に記載の情報は全て無保証です。
記載内容を基に如何なる損害が生じても著者は一切責任を負いませんし、メーカー保証外の行為です。試みる場合は自己責任で実施してください。
大電流を扱うため、電気の知識・スキルが無い方はお控えください。
異常発熱・発煙・発火・機器の故障・電気設備の焼損・火災・家屋全焼等の重大なリスクがあります。
KA161の仕様
調べてみるとKA161の出力はAC9V 3A (27VA)のようです。一般的なACアダプタと異なり直流(DC; Direct Current)ではなく交流(AC; Alternate Current)出力です。
また、コネクタも一般的な円柱状のバレルプラグではなく、DIN 4ピン形状をしています。
他社類似品
電源容量が異なるものの、AC9V出力でDIN4ピンコネクタのACアダプタは、主に海外の楽器メーカーの一部製品で採用されているようで、以下のようなACアダプタが該当するようです。
- ALESIS AC09-22DB
- DIGITECH PS0920
- DIGITECH PS0940
- ROCKTRON 006-1211
KA161の代替として使うには3A以上の電流が供給できれば良さそうですが、KA161と同じ3Aの製品は無さそうです。また、これらのACアダプタを探してみると、取り寄せで購入可能っぽい製品もありますが、すごくお高いです。
まともなメーカー製ではなく、サードパーティ製のものを探してみると、海外AmazonではHQRPというメーカー(ブランド?)がKA161互換を謳うACアダプタを販売していますが、日本のAmazon.co.jpでは扱いがありません。製品画像から察するにPSEマークが無いため、日本国内で販売できないのだと察せられます。
自作
トランス
AC100VからAC9Vを取り出すトランスは複数見つかりますが、3A供給可能なものとなると激減します。
秋月電子で扱いのあるトランスに、AC110V入力にAC100Vを繋げば、10V端子から9Vを得ることが出来そうなものが見つかります。ただ、実用上はトランス剥き出しで使う訳にもいかず、ケースに収納したりと考えると加工が面倒です。
今回はトランスで自作する方式は採らないことにします。
市販ACアダプタと変換ケーブル
端子形状は別にして、AC9V 3A出力のACアダプタを探してみると、サウンドハウスのオリジナル商品が見つかります。
SH ( サウンドハウス ) >電源アダプター AC9V 3A 2.5mm | サウンドハウス
価格も前述のトランスの部品単体の価格とほとんど変わりませんので、これを使うことにします。
購入して届いたものはサイト上の商品画像とはラベル表示が異なり、サウンドハウスオリジナルブランドの"Classic Pro"の表記がありました。もちろんスペック表記はサイト上と同じでPSEマークも有るので何も問題ありません(なお、裏面にはINDOOR USE ONLYとMADE IN CHINAの刻印があります)。
出力端子はよく見かける内径2.5mm・外径5.5mmのバレルプラグですので、これをDIN4ピンに変換すればKA161の代替とすることができるはずです。
ですが、手っ取り早くACアダプタの出力端子の直前で切断して、コネクタだけ付け替えるような改造行為をすると、PSE認証が無効になるのでお勧めできません。このため、内径2.5mm・外径5.5mmの受け側のジャックとDIN4ピンコネクタを繋いだ変換ケーブルを用意することにします。
この要件にマッチする変換ケーブルを探してみると、ebayでロシアの業者が出品しているようですが、サードパーティ含め一般に流通している商品は無さそうです。
ので、変換ケーブルだけ自作しました。
ネット上に回路図が見当たらなかったので、今回調べたことを踏まえ図示すると下図のような結線となります。
要点は以下の通り。
- DIN4ピンコネクタの左側のピン(1,2pin)と右側のピン(3,4pin)にAC9Vを給電
- 交流なので極性は無い(オス側コネクタから見た図なのか、メス側コネクタから見た図なのかなど考える必要はない)
- 機器*1側で1番ピンと2番ピンはショートされており、同様に3番ピンと4番ピンもショートされている
- つまり、例えば1番と4番だけにAC9Vを結線し、2番と3番は未接続でも動作する
今回は耐圧220Vの22AWGを使用しました。ネットで調べると資料によって違う数字が書いてあったりしますが、許容電流は単芯で7A、複芯で5A程度。今回給電するKORG N1Rの場合、消費電力はAC9V 1.7Aのため、安全係数を2倍として考慮しても特に問題は無い想定です。実際に、半日以上連続してN1Rを通電・動作させて確認しましたが、コネクタもケーブルも特に発熱等の異常は確認できません。KA161の上限3Aに近い電流を流す機器の場合は、より太い配線材料を使用するべきでしょう。
なお、DIN4ピンコネクタは千石電商で購入できました。ちなみにMIDIケーブルのDIN5ピンコネクタなど、ピン数の異なるDINコネクタのピンを抜くとか折るとかしてDIN4ピンコネクタを作ることはできません(ピン間隔が違いますので刺さりません)。
その他のパーツは千石でも秋月でも揃うと思います。
その他
- 電源容量が不足しているとN1Rは正常起動しない
- DINコネクタのはんだ付けは少しコツがいる
(2021/8/25追記 ここから)
KA161と同様に、DIN4pin出力プラグのKA141というAC9V 2.22A出力のACアダプタも存在したようです。但し、このACアダプタの型番は冒頭にリンクを張ったKORG公式のリストには掲載されていません。恐らくKA141が先に終売し、(供給可能電力に余裕があり代替可能な)KA161に統合されたのではないかと想像されます。
N1Rの場合、消費電力はAC9V 1.7AですからKA141の供給電力で十分なはずです。といったことを考えると、発売当初はKA141とセットで流通していたのではないかと思います(取説にACアダプタの型番は明記されておらず断定はできませんが)。他にも、中古流通している機材を眺めていると、N1Rと同世代のAI Squared Synthesisの鍵盤モデルN5/N5EXや同時期のデジタルMTRのD8の電源としてKA141が付属していたような気配があります。
偶然KA141を入手することが出来たので、念のためピンアサインをテスタで探ってみたところ、自作した変換ケーブルと同じで左側のピン(1,2pin)がショートされ、右側のピン(3,4pin)もショートされています。実際にKA141をN1Rに接続してみたところ、普通に使用可能でした。
(2021/8/25追記 ここまで)
以上。